第4話Side北風真美
Side北風真美
「おねぇちゃーん!もう時間だよー!」
「待って〜!」
今日は新年!とうとう荒木くんと約束してた日が来た!冬休みなのに荒木くんに会えるなんてラッキーだな〜。それに荒木くんからのお誘いだし!
…まぁ、2人っきりじゃないのが残念だけど…。それを今の荒木くんに求めるのは酷だよね。
荒木くんからは「ラフな格好でいい」って言う指示があったので、いつも通りに服を選んでみる。荒木くんが選んだ服を着てもいいんだけど荒木くんからは「外で着るなよ?」と言われてたからやめておこう…。
荒木くんの服は簡単に予想出来る。ひとつはクリスマスに来てた服。もうひとつは私が選んだ服のどっちかだろうね。出来ればそれに合わせてみたいなぁ。ちょっと気持ちが通じあったみたいだし!……荒木くんに限ってそれはないか…。きっとコイントスかなんかで決めてるんだろし。
何となくで服の配色を決めてあとは揃えるだけ。うん!これがいい!荒木くんは多分私がいっぱい悩んで服決めて…、なんて知らないだろうね。
でも、もし褒めてくれたら…、「可愛い」って言ってくれなくても思ってくれたら…そう考えながら服を選ぶのは楽しい。それも最近思い始めたんだけどね!
出来るだけシンプルに…。ちょっとメイクして…、アクセサリーして…。うん完璧!せっかく新年なんだし、最近買った新しい靴でも履いていこう。
「おねぇちゃーん!私、本当にもういくよー!」
「今行くー!」
トットット…、とゆっくり階段を降りていく。
外は寒い。去年なら家でこもってただろうなぁ。でも、今は外が楽しみで仕方ないや!
「「いってきまーす!」」
荒木くんの家は行ったことは無いけど、場所は教えてもらった。地図アプリを頼りにゆっくりと歩く。バッグの中にはクリスマスの時荒木くんから貸してもらったマフラーがある。ちゃんと洗ってあるから大丈夫…。
荒木くんと会ったらどうしよう…?クリスマスイブの最後…ちょっとあんなことしちゃったから会いにくいなぁ。
「ねぇ、雪乃はお願いごと決めた?」
「私は志望校合格出来ますように…かな?お姉ちゃんは?」
「私、まだ決めてないんだよねー」
叶えたいことは色々あるんだけどどれかひとつって難しい…。ふたつも言ったら欲張りみたいで嫌だし…。もし決めるなら…、
「無難に荒木先輩とのことでも願ったら?」
「ふぇ!?」
「ほら、もうすぐバレンタインとかあるんだし。恋人っぽいイベントもあるじゃん!」
「で、でも…他にもお願い事あるじゃん…」
「じゃあ、荒木先輩とられてもいいの?」
「それは嫌!」
「じゃあ、お願いしといた方がいいんじゃない?もしかしたら本当に叶えてくれるかもしれないじゃん。そうでもしないと本当にとられるよ?」
「う、うん…」
荒木くんはいい人だ。とても優しくて魅力的。だから他にも狙ってる人がいてもおかしくないよね。私もうかうかしてられない!高校三年生になったら受験があるし…。
「まぁ、妹としては私の受験を応援して欲しいかな…」
「あ、ご、ごめん!応援はしてるから!」
「わかってるよ。あ、あれじゃない!荒木先輩の家!」
雪乃が一軒家を指さす。荒木くんから貰っていた写真に似てる…。マップもその辺を示してるから多分あれだね。結構大きい…。
角を曲がるとそこには荒木くんと、みんながいた。
「お、来たか。おはよう、北風。それとあけましておめでとう」
いつもと…去年と変わらない挨拶。だけど、それだけで私の心は暖かくなる。不思議だよね。今年も一緒に荒木くんと…みんなと過ごせたらいいなぁ。そして今年こそは荒木くんと……
「うん!おはよう荒木くん!今年もよろしくね!」
「あぁ。今年もよろしく」
私の新年はサイッコーのスタートを切って始まった!
Side北風真実
「久しぶりだね、荒木くん!」
う、うん!普通に!普通に話せた…と思う!一瞬だけハグしたことが思い浮かんだけどそれ以外普通だ!
「いや、クリスマスであったからちょうど1週間ぐらいだろ?久しぶりって言うほどか?」
「そこは久しぶりでいいじゃん!1週間も会えなかったんだよ?
うん。やっぱり荒木くんは荒木くんだった。いつも通り。普通に会話してる。うん、それを望んでたんだけどね?なんかここまで動揺がないのも…悔しい!私はあの時勇気出したのに!ほとんど効果ない!
「それにしても服…着てくれたんだね」
今日の荒木くんの服は私と一緒に買った服…に加えてさらに上から寒さ対策のコートを羽織っている。それでも似合ってる。…多分荒木くんじゃないね、これを選んだのは。それによく見たら前はつけてなかったミサンガを右腕にしてる。
「あぁ、これ、ありがとな」
「うん!似合ってるね!」
よ、よし!上手く会話を誘導できた!これで私の服装に話が移る…はず!
「かーぐら先輩!」
……と思っていたら荒木くんの隣から乱入者が現れた!ムゥ!もうちょっとで褒めてくれたかもしれないのに!
「ん?陽菜ちゃんか。クリスマスぶりだな」
「お久しぶりです!」
ひなちゃん…。どこかで…。あ!確か雪乃の友達だ!
……え!?雪乃の友達と荒木くんに関係があるの!?どういうこと!?
「あ!ミサンガつけてくれくれてるんですね!」
「あぁ、さすがにこの短期間で外さないだろ」
み、ミサンガ…!プレゼントってこと??
そういえば私…プレゼントとかしたことない!
思い返せば荒木くんから私に貰うことはあっても、私から荒木くんに何かをあげたことは無い。……悪いことしちゃってるな…。貰うだけなんて。よし!今度、何かプレゼントしてみよう!
それはそうと、目の前の出来事はちょっとよくわかんないや〜。だから!
「初めまして。荒木くんの
とりあえず軽〜く確かめてみよう。ついでに荒木くんとの関係性を。多分…付き合ってるとかは……ないと……おもう。…そうであって欲しい。
「私はそこの川野陽の妹の川野陽菜です!
荒木くんが家庭教師…!?知らなかった!っていうか何それ!?羨ましい!私も教えてもらいたい!
でもこれだけで3つわかった。
陽菜ちゃんは荒木くんと付き合ってない。
陽菜ちゃんは荒木くんが好き。
陽菜ちゃんは荒木くんの後輩。
『本当にとられるよ?』
さっきの雪乃の言葉が蘇る。いつか…いつかこんな日が来ると思ってた。荒木くん、かっこいいもん!
私は改めて
服装も顔も可愛い。雪乃に劣らない…。それに後輩っていうポジションを活用した名前呼び。性格も可愛らしい!そして親友の妹!!
何これ!強敵じゃん!!こんな強敵は予想してなかったよ!?名前呼びしてるし、名前呼ばれるし!
だ、大丈夫!プロポーションは多分勝ってる!
陽菜ちゃんと私の間で火花が散る!目を…逸らしたら負ける!女の勘がそう言ってる!
そんな張り合いも荒木くんのお姉さんの登場で1度幕を閉じた。
それにしても本当に荒木くんにお姉さんなんていたんだ…。聞いてはいたけどやっぱりイメージがつかない…。荒木くんが『弟』って言うことが信じられないな…。
それにしても荒木くん…。もうちょっとお姉さんに興味を持って欲しい…。お姉さんの正体が分からないなんて……。
「あ、そうだ。俺、今家庭教師してるんだけど、陽の妹の陽菜ちゃんがファンらしくてさ。なんか……ファンサービス?してあげてくれないか?」
「ふぇ!?神楽先輩!?」
「あ!そうなんだ〜。別にそんなに畏まらなくていいよ!神楽の友達だしね!」
な!?私が先を越されたの!?くっ!やっぱり油断できなかった!
っていうか純粋に羨ましい!tukiさんと握手してサイン貰えるなんて!
そして何故か知らないけど陽菜ちゃんは顔を紅くしている。
どうしたんだろう?とは思ったけどそそくさっとみさきちゃんのところに行ってしまったので聞くことも出来ない。
「あ、そうだ。こっちが俺の友達。文化祭で友達になった」
「え?私、文化祭の時に友達になれたの?」
「え?違うのか?」
「私は…修学旅行当たりからは友達だと思ってたのに……」
荒木くんの中の私はどうなっているのだろうか?実はそんなに印象に残ってないのかな…?せめて文化祭からあとはしっかりと覚えていて欲しいなぁ……。
「あ!じゃあ、神楽が電話で言ってた子ね!」
「あ〜、そうそう」
え!?荒木くんが私の話を!?それもお姉さんとしてくれたなんて…!超嬉しい!
「は、初めまして!北風真美です。荒木……か、神楽…くんには…文化祭で色々と世話になりました……」
うっ…。なんか荒木くんの名前初めてフルネームで呼んだかも…。
「うん!初めまして!いつも神楽がお世話になってます」
tukiさんが笑顔を浮かべてくれる。すごい…!芸能人だからかな?オーラがあるように感じる。
「あ、そうだ。料理は北風から教わったんだ。雪乃ちゃんにも結構世話になってるんだ」
「い、いえそんなことないです!それに…料理は助けてもらったお礼ですから……」
本当に荒木くんには恩しかない。荒木くんはきっとそんなことないって言うんだろうけど私からしてみれば全く釣り合っていない。
「ふふ。良い人そうでよかった…。これからも神楽をよろしくね♪」
「は、はい!こちらこそよろしくお願いいたします!」
よろしくお願いしたいのは私の方だ。これからも荒木くんと一緒にいられたらいいと思う。
そう思っているとtukiさんが私の方に近づいてくる。
「真美ちゃん…神楽のこと好きでしょ?」
「!?!…な、なんで…?」
耳元で囁かれた言葉に私の体はボッと熱を帯びる。
「ふふ。勘よ。でもその様子だと当たったみたいね。応援してるわ」
鋭い!きっと陽菜ちゃんも同じことを言われたんだ!だからあんなに……。きっと今の私も陽菜ちゃんと同じ顔しているんだろう。
「北風、何言われたんだ?」
「な、なんでもないから!」
やっぱり荒木くんとお姉さんって結構似てないと思った。お姉さんはあんなに鋭いのに、荒木くんは基本的に鈍感だもの!
神社まではtukiさんの車で移動することになった。年齢の近い人が運転していることを考えると少し不思議に思う。数年後にはあんなふうになってるのかな?
「到着〜」
車の中でみんなとしりとりでもしていたらいつの間にか神社に到着してたみたい。久しぶりにしりとりなんてしたけど面白かった。結局最後まで勝負がつくことはなかったけどね。
車から降りるとたくさんの人が神社に向かっていることが分かる。荒木くんも言ってたけど本当に大きな場所なんだぁ。
新年って家族で過ごすことが多かったから友達とこうやってお参りに行くのは初めてだけどちょっとした旅行みたいでかなりワクワクする。
去年も色々あったなぁ。
思わず私は過去のことを振り返る。新年なのにらしく無いとは思うけどね。
不思議だよねぇ。ここにいるみんなは1年前では関わりがなかった人がほとんどだ。だと言うのに、今は初詣に行く仲2までなっているのだから出会いというのはすごいと思う。特に荒木くん。去年までの私なら彼のことなんて全く気にもとめなかったのに。きっと過去の私が見たら驚くだろうなぁ。
縁ってすごいなぁと思う。
あ、もちろん歩香達とも遊ぶ約束はしてるよ!?みんな帰省してるから今は会えないけど、4日には会う約束してるよ!
tukiさんを先頭にみんなが神社に向かって歩き始める。恐らく…いや確実に彼は一番後ろを歩くことになると思う。だから私は少しゆっくりと歩いて後ろの方へ向かう。
すると自然と彼の横に並べるから。
「荒木くん、荒木くん」
抜け目なく出来るだけ彼に近づいて話しかける。今日はいつもと違って2人っきりじゃないから多分彼と話す機会はそう多くないだろう。だから出来るだけ積極的に行動しようと思う。
「どした?北風」
荒木くんがこちらを振り返る。特に話題なんてなかったけど何となく話したい気分なのだ!
「髪…、整えなくていいの?」
とりあえずあたりざわりのないところ入っていく。純粋な疑問と興味。相手のことを聞くといいってどっかのサイトで書いてあったし。
「まぁ、大丈夫だ。心配することない。姉ちゃんは俺の倍ぐらいは強いからな」
「へ?荒木くんより強いの?tukiさんが?」
「あぁ。仮に俺と姉ちゃんが戦うなら俺は3撃でやられる自信がある」
あんなに強い荒木くんより強いなんて……荒木家にはなにか特殊な血が流れているのかなぁ……?
「だから万が一があるなら姉ちゃんを頼れ。何とかしてくれるから」
きっとなんぱのことを心配しているのだと思う。こんな時にまでそんな暇な人はいないだろうけど。
でも、自分のことを聞かれているのに他人の心配が思いつくのは彼の美点なんだと思う。
でもちょっとショック…。
「そ、そうなんだ…。私は……荒木くんを頼りにしたかったのに……。そしたら……あの時みたいに……」
あの時みたいにナンパを免罪符に色んなことが出来たのに!せっかくだからあの時はもっとその強みを活かせば良かった!
「まぁ、北風が困ってたら俺も助けるから。だからそこまで心配しなくてもいいと思うぞ」
こういうところは荒木くんらしい。私が困っていると思ったからこんなことを言ってくれたんだろう。
「うん!じゃあ、頼りにしてるね!」
少しテンションが上がる!まだ決まってなかったお願いがようやく定まった。
「ほら、行こ!」
「そう、慌てんなって。転ぶぞ」
今年もいいことがあるといいなぁ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます