第3話

さてさて、初詣に向かった訳だがある事件が発生した。


前提として俺たちは7人で来ている。さらにかなりの人混みである。


この状況下に陥るとある問題が発生するのだ。では現状を見ていこう。


まず先頭に姉ちゃん、そして雪乃ちゃんが楽しそうにお話している。


次に北風と陽菜ちゃんが楽しそうに?話している。何故か目は笑っていないが。だが、時々お互いにため息をついたり、「分かる!」とどうやら盛り上がっているっぽい。あの二人にはあまり共通点があるように感じられないんだがな。時々俺のことも話していることはわかった。言われてみれば共通点って俺と陽と、雨宮さんぐらいか。


3列目に陽と雨宮さんのラブラブカップルが居る。お互い恋人繋ぎで会話に花が咲いている。砂糖が飛び交っているようだ。


さて、では俺はどうなっているのか?答えは簡単。陽たちから少し離れたところでただ1人ぼっちで歩いている。


マジでどうしてこうなった??


なんでこんな所でも俺のぼっち力が発揮されてるんだよ。どんどん友達が離れていくんだけど。物理的にも精神的にも。


俺の交友関係が増えたと思ったら一瞬で消えるな。なんにもしなかったのが悪かったのか?油断しちまったのが悪かったのか?


だが今更会話に入ろうなんて思わない。というか出来ない。いや、恥ずかしいとか緊張とかじゃないぞ。


姉ちゃんと雪乃ちゃんとの会話はなんか交じりずらい。なんかお互いの趣味?について語っているっぽいからな。それに姉ちゃんも雪乃ちゃんも楽しそうなので純粋に邪魔したくない。


では北風と陽菜ちゃんの会話はどうだろうか?俺の見解としては触るな危険、である。これは本能としか言いようがない。ただどうしようもなく俺の本能が言っているのだ。「そこには行くな」…と。


陽と雨宮さんは論外。あの甘々カップル共に関しては関わる気が起きない。まだ俺が物理的にも精神的にもみんなの近くにいた時の会話の一部がある。


「……陽…、これ…」

「え?プレゼント?」

「…うん。正月のお年玉…」

「これ…マフラー?」

「…うん。作った…」

「ありがとな…。これ、大事にするよ」

「…なら、嬉しい…」

「「今年もよろしくお願いします」」


そしてそのマフラーは今2人首に繋がれているわけである。


あの時から物理的に距離が離れたんだよなぁ。そこから徐々に精神的にも離れていったんだよ。はぁ〜。なんでこうなっちまったかな…。


友達を作る時は時間がかかるというのに離れる時は一瞬だな…。


ただここでひとつ証明されたことがある。この世に神様なんてものは存在しない。何故って?俺のお願い叶えてくれないもの。現状維持という願いも叶えてくれない神様なんていないだろ。


もはや1人でそこら辺に売っているベビーカステラをただ無心で食べる始末である。


あれか?やっぱり道端の適当な神様にお願いしたのがダメだったのか?八百万の神がすぎたのか?


まぁ、アイツらだけで完結してる感はあるけどな。


前から美人の4人組とイケメン美女のカップル。な?むしろそこに俺がいても周りは「あぁ、こいつ一人で初詣来てるんだ…」としか思わないだろうよ。アイツらも俺がいなくなっても気づかないんじゃね?


というわけで一人神社を散策中。決して不貞腐れてるとかじゃないぞ!!断じて!はぐれただけだ!


「あ!おっちゃーん!そのりんご飴ひとつ頂戴!」「あいよぉ!」


なんか気分は祭りだな。そういえば去年も1人で回ったっけ?結局俺の青春なんてこんなもんだな。


「あれ?みんなどこ行った?」


出店を回っていると本当に迷子になったことに気づいた。周りを見渡しても陽たちは見当たらない。アイツら結構目立つからわかりやすいんだけどな。


さて、どうするかな…。


俺はこんなところで慌てたりはしない。別に俺が居なくても姉ちゃんが居ればだいたいなんとかなるって思っているし。


俺に関しては若干「もう帰りたい…」と思ってるし。だって出店満喫したし、神さまはいないとわかったし、そもそも初詣に乗り気じゃなかったし。このまま車の方に戻ろっかな。


そう思って姉ちゃんに連絡しようと思ったんだけど─


「やべ。携帯忘れた」


携帯を家に置いて来てしまった。必要ない、出る時はそう思ってんだもの。


「うんうん!これは仕方ないな!じゃあ、これ以上被害を広めないために車に戻るか!」


「待って!」


くるっと踵を返した俺の足を止めたのは、俺を掴む腕と耳障りのいい声だった。

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