第28話
プリクラを撮った後はゲームセンターを出て昼食をとることにした。ポップコーンを食べたとはいえ既に時刻は2時を超えていた。北風は出てきた写真を見直して顔が真っ赤になっていた。自分の暴走に気づいたな。
「失くしたらダメだよ?」
「分かってる。さすがのおれもそんな事しねぇよ。」
俺は撮ったばかりのプリクラを財布に入れた。
「その財布…オシャレだね。」
「…そうだな。この財布…姉ちゃんに買ってもらったやつだからな。」
俺が高校に合格した時にそのお祝いとしてもらった。
「へぇ〜。荒木くんは知らないだろうけどそれ、結構いいやつだよ。」
「…そうなのか…!」
あの時期って結構金なかった気がしたんだけど。きっと裏で何かしてくれたんだろうな。こういうところは俺の姉だなって感じがする。
俺は財布をポケットにしまって、歩きだそうとすると、今朝と同じく服を掴まれてしまった。
「…約束…覚えてる?」
これはカミラを取った時の約束のことを言ってるんだろう。まさか暴走状態だったというのに覚えているとは!
「わかった。ほら。」
俺は北風に手を差し出し、北風がそれを掴む。それを確認した俺は手を握り返し、歩き出した。
北風が何度か指を絡めようとしたが何とか阻止した。
「ムゥ。約束違くない?」
「あれは怖かったからだろ?いまは元気なんだし、普通だ。それよりカミラをしっかり抱いとかないと落ちるぞ?」
多分北風と普通に手を繋いでいること自体が普通じゃないんだけどな。
あれ?北風から返事がない。どうしたんだろ?って思って北風の方を見ると耳まで赤くしていた。
あれ?何に反応したんだろうか。………まさか!
「カミラ。」
俺がもう一度クマのぬいぐるみをの名前を言うと北風は
「あぅ」
なんか可愛らしい声が出た。…なるほど…。
「カミラ。」
「うぅ。」
「カミラ。」
「むにゅう……。」
とうとう北風はカミラに顔を埋めてしまった。
なるほどな。暴走北風だったからいいものの今となってはカミラの由来が恥ずかしい……と。面白いな。
「カ、カミラは荒木くんが持ってて。落ちたら危ないから……。」
「リョーかい。」
というわけでカミラは俺が預かった。帰る時には返すつもりだが。さっきより人の目が増えた気がした。それはそうか。俺がクマのぬいぐるみを持って歩いてたらそんなことにもなるんだろう。
「おっ!昼ご飯、ここはどうだ?」
俺がカミラの手で指したのはパスタ屋さんだった。
「うん!いいねっ!私パスタ好きなんだ!」
「知ってる。だから選んだんだ。」
「えっ?言ったっけ?」
「前に北風の家にお邪魔した時にな。」
正確にはその行き道でだけど。
「覚えてたんだ♪ありがとう。」
北風に俺の好きなオムライス作って貰ったんだしこれでおあいこだろう。
時間帯もあり、待ち時間なしに入ることが出来た。
「ん〜、どうしようかな〜?」
どうやら北風はふたつのパスタで迷っているようだった。
「なら、俺が1個頼むから北風は余ったやつ頼んだら?俺が頼んだやつは半分あげるから。」
「えっ?いいの?それじゃあ荒木くんが好きなパスタは…。」
「俺は大丈夫だ。俺が頼みたいやつと北風が悩んでるやつは一緒だし、俺はデザートも頼むし。」
「…それじゃあ、お願いしてもいい?」
「俺が食べたいんだから気にするな。ほら、注文するぞ。」
ボタンを押すとすぐに定員が来てメニューを注文した。それが終わるとジュースを2人分入れに行った。
「荒木くん、クレーンゲーム得意だったんだね。ちょっと意外。」
「まぁな。中学時代の時に結構やりこんだからな。」
俺がグレていた時にゲームセンターはよく行ったものだ。特に目的があった訳じゃないが何となくやりこんでいたからな。何回もやればコツは簡単に掴める。
「そういえば荒木くんにはお姉さんがいるんだよね?」
「いるぞ。」
「どんな人なの?」
「あぁ〜。一言で言うと…超人。」
「えっ?」
北風は俺の事をすごいと言うが姉ちゃんはもっとすごい。そもそも俺は自分をすごいと思ったことは無いけどな。
姉ちゃんは俺の上位互換と考えてもいい。身体能力だって俺より上だし。今なら頭脳は勝てるかも知れないが姉ちゃんが高二の頃はもっと頭が良かった気がする。仮に姉ちゃんと喧嘩しようものなら100%俺が負ける。そして俺より負けず嫌い。手加減って言葉を知ってるかどうか怪しいぐらいに。
だから姉ちゃんが泣いたことは驚いたのだ。昔からなんでも出来た姉が涙を流したんだから。いや、泣くことはあったが、何かを決心したら最後までやり通す人だ。強くなるって決めたら強くなるってな。そんな姉がそう決めたのに泣いたことには心底驚いた。
「あっ!そうだ。その姉ちゃんが北風と初詣行きたいんだって。陽や雨宮さんも誘うつもりなんだけどな。もし、暇だったら雪乃ちゃんも連れて一緒に行かない?俺の姉ちゃんモデルで有名らしいから知ってるかもしれないし。」
「えっ!?いいの!?」
「あぁ。姉ちゃんが行きたいんだって。むしろこちらからお願いしたいわ。」
「い、行きたい!」
「OK。ならそう言っとくわ。」
余談だが姉ちゃんになぜそんなに張り切っているのかを聞くとどうやら最近車を買ったらしい。それに乗せたくて仕方ないんだと。
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