第24話Side北風真美

「そういや、今日見る映画ってどんなやつなんだ?」


「えーとね、少女漫画が原作の恋愛映画だよ!」


 ナンパよけとはいえ今日だけは荒木くんの彼女でいれるんだ!やった!とても嬉しい!デートを楽しみつつもちょっとずつアピールでも出来たらいいなぁって考えてたけど今は荒木くんとのデートを楽しみたいことでいっぱいだ!


 無意識かは知らないけど荒木くんは手を繋ぎ出したら、いつもよりちょっとゆっくり歩いてくれた。私といる時は歩幅を合わせようとしてたのは知ってるんだけどね。今日はそれより少しゆっくりだった。荒木くんって本当に優しい。人への配慮がしっかりしてる感じがする。


「あ〜アレか。よくCMとかでもやってるやつ?」


「そう、それ〜!」


 私も原作は見てないから知らないけど確か内容としては1人の女子高校生が居て王子様みたいな人と、不良な人のどちらを選ぶのか…みたいな映画だ。


「北風は映画観る時ポップコーンとか買う?」


「私は買うね。荒木くんは?」


「俺も。というかほとんどの人は買ってる気がする。」


 まぁ、確かに…。お金に余裕があったり、ダイエットしてる時期だったら買ってないかも。私は部活とか参加してないから毎日ランニングやちょっとした運動はしてる。女の子は体重や体型の維持が何よりも大切だからね。


「それじゃあ、買おっか。」


 手を繋いだまま私達は列に並ぶ。最近のポップコーンは味が結構増えてるんだ。サイズもどうしよう?


 隣の荒木くんも悩んでいる様子だった。多分味に悩んでいるんだと思う。


 あっ!これならいいかも。そう考えた私はすぐに荒木くんに相談する。


「ねぇ、荒木くん。あれにしようよ。あれひとつ買って一緒に食べない?」


私が指さしたのは一番大きなサイズで味も2つ選べるポップコーン。


「あぁ〜。それいいな。それじゃあ味はどうする?」


「私と荒木くんの好きな味をひとつずつって言うのはどう?」


「OK。それにしよう。」


 やった!味の食べ比べを出来るし、どんなのが好みなのか知れるかも!


 私が選んだのは塩バター味。荒木くんが選んだのはキャラメル味になった。やっぱり荒木くんは甘い方が好きなんだ。


 次が私達の番だって思って私がバッグから財布を取ろうとすると…


「北風、今回は俺が奢る。」


「えっ?別に大丈夫だよ?これぐらい。」


 ジュースも買ったけど値段はそんなに高くない。私でも充分払える額だ。


「北風には俺の映画分を払ってもらってるからな。これでチャラにしたい。」


 くすっ。荒木くんらしいというか。映画は雪乃からもらったチケットだって説明しておいたんだけどなぁ。でも、それじゃあ荒木くんの気がすまないんだろう。


「分かったよ。それじゃあよろしくね?」


「あぁ。」


 けど私は少し後悔してしまった。荒木くんが手を離して財布を取ってしまったからだ。


 私が取ろうとしても離す事になったんだろうけど、やっぱりちょっと寂しい。さっきまであった荒木くんと繋いでた左手が冷えて行く気がした。


「ありがとうございましたー!」


 荒木くんは会計を終わらせてポップコーンを受け取ったようだ。多分荒木くんはもう一度手を繋いでくれないだろうなぁ。座席は隣だけど映画が始まったら手は離すだろうし。スクリーンまではすぐ近くだし。


 ……まぁ、終わったらまた繋いだらいっか!そんなに頻繁に繋ごうって言ってたらウザイって思われるかもしれないし…。それは絶対に嫌だから。


「ほら、北風行くぞ。」


「えっ?」


 意外なことに荒木くんは私に手を差し出して来た。これって手を繋いでいいってこと?


「あ〜、その、手、繋がない?スクリーンについたら離すかもしれないけど。一応ここでも結構人の目があるし。」


 なんかちょっと焦って顔を赤くさせる彼が可愛い。普段はもっと冷静で男らしい感じがするのに。いざって時の行動力とかすごいのに今はそんな感じが全くしない。それがちょっと面白くて可愛い。


「いや、嫌なら全然いいんだけど…。」


 ギュッ!ともう一度私は荒木くんの手を握り直した。


「仕方ないなぁ。彼氏のお願いだからね。ほら、映画始まっちゃう。行こっ!」


 荒木くんは私がナンパに会いそうで不安だってずっと言ってたけど私からしたら荒木くんこそ逆ナンに会わないか心配だ。


 こんなにカッコイイ人を他の人に横取りされたくない!今日だけは私が荒木くんの彼女なんだ。ちょっとくらい独占欲がでたって大丈夫…だよね?


「ねぇ、映画が始まっても手、繋いでたらダメ?」


「グッ!い、いや、始まったらナンパされないだろうし…。それにポップコーン食べるのに片腕塞がってたら食べにくくないか?」


「私はあんまり…気にしないけど?ポップコーンもジュースも片手で何とかなると思うけど?」


「う、う〜ん。でもなぁ。」


「ほら、映画終わったら荒木くん、手を繋ぐこと忘れてるかも知れないし…。」


「いや、さすがにそれはないと思うぞ?今回、俺は命がかかってるからな。」


 い、命?なんかよく分からないけどそんなに大変な事態になってるの?それとも雪乃から何か言われたとか?


「ほ、ほら、私達付き合ってるんだし、それぐらいならするんじゃない?」


「そう…なのか?そういうことは北風の方が詳しいか。確かに設定とはいえ形から入るのは大事だしな。まぁ、それに俺は負けたんだし。いいぜ。けど手汗とか気にしない?」


「わ、私は全然気にしないよ!荒木くんこそ気にしない?」


「俺はそんなに気にならないな。」


 やった!やっぱり本当に勉強を頑張って良かった!


私達は映画が始まってもずっと手を繋いだままだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 あ、映画もあとちょっとかな…。不良系の男子が選ばれたのか…。


 今は結ばれたカップルで学校に登校しているシーンだ。


ん?あ、2人が恋人繋ぎした!いいなぁ。私も荒木くんと…。いやいや何を考えてるの!?


あ、最後はキスシーンでおわった。面白かったな〜。


 でも、あれだね。一応今カップルっていう設定って言うこともあって荒木くんと2人でこういうシーンを見るのは恥ずかしい!というかちょっと意識しちゃう!さっきの恋人繋ぎもやっぱりちょっと意識しちゃうよ〜!チラッと荒木くんを盗み見すると…、荒木くんも赤くなってた。やっぱりちょっと意識しちゃってたか。…このあとどうしよう…?


「と、とりあえず出ない?」


「そ、そうだな…。」


 私達は食べ終わったポップコーンとジュースを持って捨ててから映画館を出た。


「き、北風ちょっとそこの自販機寄ってもいいか?」


「い、いいよ。」


 荒木くんの提案で自動販売機に寄ることになった。手は繋いだままなので私も一緒について行くことになった。


「さっきの映画よかったなー。」


「そうだね〜。俳優や女優も人気な人ばっかりだったし。」


「あ〜、確かによくテレビで見る人ではあるかも。」


 荒木くんってあんまりテレビとか見ないのかな?多分携帯とかもあんまり見ていないと思う。


「そうだ!北風ならどっち選んだ?」


「えっ?何が?」


「北風があの主人公の立場ならあの2人のうちどっちを選んだ?」


「ッ!?」


 それは!!ど、どうしよう…。多分荒木くんは何も考えずただ映画の意見の交換として言ったんだろうけど……。


 今の私にとってそれは究極の質問だ。どっちがいいんだろう…?そもそも荒木くんを不良系、王子様系みたいに当てはめたらどっちになるんだろう……?中学の時は実際に不良だったって言うし…。でも何となく今は違うような…。王子様系って言われるとちょっと違うような……。


 う〜ん。ここは難しく考えず私が好きな方を言ったらいいかな……?


「私は………あの不良っぽい方かな……。」


「あぁ〜。なるほどな。確かにあっちはツンデレっぽいけどカッコイイもんな〜。イケメンだけが許される感じはするけど。」


 私からしたら一番カッコイイのはかーくんなんだけどね。


はっ!これはチャンスかも!


 荒木くんが手を離してガタンっと缶のブラックコーヒーを買っていた。


「あ、荒木くんはどんなタイプの女の子が好き?」

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