第31話

そうして北風について行くと到着したのは喫茶店だった。


俺はレモンティー、北風はミルクティーを注文すると2人だけの打ち上げが始まった。


「まず、助けてくれてありがとう。本当に助かった。」


「礼はいい。それより次はないぞ?」


前もこんな会話したな。あの時と全く変わらないな。もう俺は緊張していなかった。


「うん、わかってる。もう男遊びなんかはしない。それより聞きたいことが沢山あるんだけど全部聞いていい?」


「俺が答えられる範囲なら。」


「ありがとう。なんであんなに喧嘩が強かったの?」


まぁ、当然の質問だよな。進学校の陰キャが、不良校のトップ倒したんだから。


「かなり長いぞ?俺の過去になるからな。」


「教えて。」


そうして俺は一呼吸おいて喋り始めた。


「中学2年生の時に、俺の両親は死んだ。2人で海外に旅行に行ったら飛行機事故にあったんだ。そこからは俺と姉の二人暮しになった。姉は当時高校生だったんだが、学校をやめてモデルになったんだ。それで姉も家を空けることが多くなった。その時の俺は両親がいない現実を受け止められなかった。さらに姉も家にいない。そのせいで俺は夜に出かけることが多くなった。罪を犯したわけではないが、喧嘩はしたよ。絡んでくる不良とか暴走族とかな。まぁ、グレたんたんだよ。現実逃避してたんだよ。


そんなある日、俺の事情を知った姉が泣きながら俺に謝った。そこでようやく理解したよ。もう家族は姉しかいないんだって。姉は毎日仕事してるのに、俺は何してるんだろう?と思ってな。ようやく現実逃避をやめて勉強に励んだ。俺は高校なんて行くつもり無かったけど、姉が高校だけは卒業しろって言ってきたから、できるだけレベルが高くて金がかからない佐倉高校に入ったんだ。」


俺の話を黙って聞いてるなって思って北風の方をむくとまた泣いていた。


「…うっ…うっ…大変だったんだね…うっ…」


「泣くなよ。」


「うぅ…ぐすっ…むりぃーっ……」


北風は泣き虫だな。間違いないわ。泣き終えたらまだ聞きたいことがあるようだったので、黙って待っていた。


「あ、そういえばどうして川野くんとだけ仲良いの?」


「あぁ〜、陽か。最初は関わるつもりなんてなかったよ。でも、あいつがしつこく絡んで来てよく遊ぶようになったな。」


「その割にとても仲が良さそうだけど。」


「…陽は俺の憧れなんだよ。あいつはいつも明るくてみんなにも分け隔てすることがなくて心が綺麗で…。だから、友達って言うよりは憧れの人って感じだな。」


言っててめっちゃ恥ずかしい。これ陽に聞かれたら自殺の理由に成りうるぞ。


「いいね。そういう友達。」


「といっても俺には陽しか友達がいないけどな。」


ブラックジョークにしか聞こえないな。事実だけど。


そこからは雑談になった。北風はあの後文化祭を存分に楽しめたみたい。楽しそうに過ごせたいみたいで良かった。


話が終わったら解散かと思ったらまたも北風を家の近くまで送ることになった。


会話も途中で途切れてしまった。そこで俺は


「なぁ、北風?この前言ってたよな?橋の下で泣いてたお前を助けた理由がわかったら教えてって」


「分かったの?」


「あぁ、俺は多分あの時の北風を両親が死んですぐの泣いてた俺と俺の姉に重ねたんだ。だから、助けなきゃって思ったんだ。」


「…そうなんだ。そういえば高橋くんの時はなんで助けてくれたの?」


「高橋?………あぁ金髪ゴリラの事か。木村さん達に話聞いたら橋の下で泣いてたお前思い出したからだな。お前が泣いてんのは…なんか…嫌だ…。」


何言ってんだろうな俺。何も考えてなかったらそういってた。


「そっか♪ねぇ」


なんで楽しそうなんだよ…。北風は。


「なんだよ?」


「もし、また私が泣いてたら助けてくれる?」


「………めんどくさい。」


助けるとも言うつもりは無いし、助けないとも言うつもりは無い。だから、この言葉しか出てこなかった。こういう時、ラブコメの王子様とかなら「もちろん!」って言うんだろうな。俺はそんなこと言わないけどな。絶対に。


「ふふっ。そっかぁー♪」


すげぇ楽しそうだな。めっちゃニヤついてる。何となく俺が言いたいことを理解しているんだろうな。


「あ!そういえばさ!後夜祭なんで参加してなかったの?」


あれ?陽にもし、北風が聞いてくることがあれば言っといてって指示したんだけどな。


「陽から聞いてないの?」


「ちょっと聞いた。反省文書いてたんでしょ。」


なんだ知ってるじゃないか?なら何が言いたんだ?


「そうじゃなくて私が言いたいのはなんで反省文書いてたの?って話」


「ゴリラと喧嘩したからだろ?」


「違う。荒木くんって結構悪知恵とか働きそうだし。あの場だって上手く言い逃れ出来たでしょ?それに先生が来る前に逃げればよかったんだし。」


そこに気づいたか。これは言いたくないけど、この追及をかわせそうにないな。


それにしても北風の中の俺は魔王かなんかなのかな??そんなに悪知恵働かないよ、俺。


「はぁ。1回しか言わない。ゴリラ放っとくか、俺が上手く言い逃れしようとしたら必ず北風のことがバレる。それじゃあ、北風を助けた意味が無いし、それに…ああ!心配したんだよ!北風の評価悪くならないようにとか!この後何も問題なく過ごせるようにとか!だから適当な理由で喧嘩したってことすれば、俺だけが罰食らって終わるからな。以上!」


俺は北風の前を歩き、早口で全て言った。


こんな恥ずかしいこと北風に言いたくなかったんだけど!!なんで、気づくんだよ。陽でさえ疑問に思わなかったのに。もしかすると、陽もわかってたのかもな。


あ〜恥ずかしい!今日何回恥ずかしい思いしたらいいんだよ。絶対ちょっと顔赤いわ。こんなの見られたくねぇ〜。


「ふ〜ん♪ありがとう♪」


今日見た中で最高潮に楽しそうだな。何がそんなに楽しいのか訳分からん。


上を見上げると今日は満月で星もたくさんあった。綺麗だな。









後書き

次回で文化祭編?は終わりになります。その後閑話を2話挟む予定です。


明日は頑張って2話投稿の予定です。


少しでも面白い、続きが読みたいと思った方は★とレビューをよろしくお願いします!


「クラス転移で裏切られた「無」職の俺は世界を変える」もよろしくお願いします!

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