第16話

1時にアオンに来たが、既に荒木くんは来ていた。




川野くんがあんなこと言うからもっと遅いのかと思ったのに。後で雨宮さん経由で教えておこう。




出ていくタイミングを見計らっていると、




「うえぇ〜ーん!!ママァー!!」




幼い男の子が泣いていた。周りは誰も助けに行かないのに、彼は男の子に話しかけていた。やっぱり彼は優しい…。そう再確認した。




どうやら迷子センターまで連れていくようだ。会話が聞こえる距離まで尾行するが、全く気づかれなかった。




そうして、迷子のつばさくんを送り届けたあと彼は待ち合わせ場所に戻って行った。




そこで、タイミングを見計らって彼の背中をつついた。






「なんだ、陽来てたのか。悪いな…遅れち……まっ………て………………」




彼はとても驚いていた。豆鉄砲をくらったような顔だ。とても面白い♪




「遅いよ♪荒木くん!結構待ったんだからね!」


実際は尾行してたんだどね。




改めて向き合って確認すると彼の服装は全身真っ黒だった。わらいそうになったが我慢した。






「…き…北風だよ…な?そ、その髪型…どうしたんだ?」


私の髪型が変わったことに気づいたようだ。




「…むっ!そうだよ!失礼な。北風真美です!髪型変えたぐらいで、見分けがつかないの?それともあんまり似合ってなかった?」




「あ…いや、悪い。めちゃくちゃ似合ってると思う…」




顔を逸らしながらそんなことを言う荒木くんが可愛い。でも、彼から似合ってるって言われて嬉しい。けどどうせなら"可愛い"って言ってほしい。




彼は川野くんから何も聞いていなかったようだ。だからあんな反応だったのかっと納得してしまった。




服装を見ても"可愛い"は出てこなかった。






「それじゃあ、私の今の髪型と前の髪型どっちがと思う?」




可愛いの部分を強調した!これなら!




「ん〜、今の髪型の方が"似合ってる"と思うぞ。」




これはわざとだ!間違いない!やっぱり彼は意地悪だ!




負け惜しみで神楽お兄ちゃんと呼ぶとすごく効果てきめんだった。何となく勝った!という気がして優越感に浸った。

そして彼が離れたらすぐにナンパに引っかかった。


しつこいナンパで不快な気分だったが




「違います。彼氏ではありません。"この可愛い子"と同じ学校の生徒です。」




彼が私のことを"可愛い"って言ってくれたことと、ナンパを撃退してくれたこと、そして手を繋いでくれた事でそんな不快な気分は消し飛んだ。


彼が前を走ってくれてよかった。今、私は顔が赤いだろうから。




彼と手を繋いだ時、ドキドキした。何故だろう…?今までそんなこと無かったのに…。でも嫌な気持ちではなかった。




そうこうしていると、喫茶店に着いた。




彼と同じくミルクティーを頼み、本題を切り出した。ずっと聞きたかった。でも、質問タイムということで聞けなかったら諦めるつもりだった。




「なんで、あの時私を助けてくれたの?」




でも、意外とすんなり教えてくれた。




「あの時、影で泣いている北風を見て、めんどくさい現場に出会ったっと思った。俺の運の無さを呪った。陽にもあったんたら何となくわかっていると思うが、俺は北風が苦手だ。だから、バレないうちにコソッと逃げようとした。でもお前が泣きながら、〔助けて〕って呼んでる声が聞こえた。今思い出してもなんでは分からないが「助けなきゃ」って思った。だから、俺は北風に声をかけた。それが理由だな。」




これを聞いた素直な気持ちは悲しみと喜び。やっぱり彼は私のことが苦手なんだという分かってはいたが、彼に直接言われて悲しんだ。そして、彼が助けてくれた理由を聞けた喜びだ。




ついでに聞きたいことがあったので勢いで聞いてしまった。でも、




「聞きたくなかったから。それに聞いてほしそうな顔をしてないから。あの時も今も…。興味がないって言えば嘘になるけど、それで辛そうな顔をして語られるぐらいなら聞かない方がいいだろ。」




泣いてた理由を聞かなかった理由を聞いてしまって泣きそうになった。そんなことができる人が何人いるだろう…。普通はそう思っても聞いてしまうものだと思うんだけれどな。




そして、再確認する。




あぁ、やっぱり彼は優しい…




と。




そこからは雑談になった。でも、不思議と彼と喋っていて飽きることは無かった。むしろずっと楽しかった。自然と笑っていた。






「ナンパが怖い〜」ということで駅まで送ってもらった。




助けてくれたお礼として、修学旅行5日目に買っていた八つ橋を渡すと彼はすごく喜んでいた。その顔を見て選択は間違っていなかったと確信した。




「ここまででいいよ。送ってくれてありがとう。今日は本当に楽しかった。」




「俺も…楽しかったよ」




彼が嘘でも楽しかった、と言ってくれたのは嬉しかった。無理やり会話して貰っているという罪悪感がうすれた気がした。




「…そっか。それなら良かった。」




「…」




「ねぇ!いつかさぁ、私を助けた理由が分かったら教えてよ!」




これならまた彼に話しかけることも出来るし、話しかけてくれるはずだ!と思いついた名案だった。


「…わかった。その時が来たら教えるよ」




「約束ね?」




「あぁ」




彼が帰っていくのを見て私は改札を通った。








[後書き]

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順位が伸びていることがとても嬉しいです。




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