第2話

「修学旅行を行う」

担任の先生がそう言った日の昼休みのことだ。

「よぉ神楽、お前今朝の話聞いたよな!?修学旅行だってよ!?テンション上がるよなー!自由行動とかするのかな!?超楽しみなんだけど!」


そう言って俺に話しかけて来るのは割とイケメンでクラスにも溶け込めている川野陽。俺のこの学校唯一の関わりのあるやつと言っていい。こいつがなぜ俺に絡んでくるのかは知らないが。


「聞いてたよ。楽しみだな。行き先は京都だったよな?」

「あぁ!俺、何気に一回も行ったことねぇからすげぇ楽しみなんだよ!やっぱ清水寺とか行ってみてぇよな!?今秋で見頃っぽいし。」


うちの学校、佐倉高校はこの辺りではかなりの進学校だ。俺もここに入るのには苦労した。今でも欠かさず毎日勉強して上位の成績を保っている。陽は違う。かなり下のクラスだ。


この4泊5日修学旅行は毎年恒例のように行き先は京都と決まり行われてきた。今年も同じだ。


正直に言うと俺はあまり乗り気じゃない。何故かって?簡単に言うと俺はぼっちだからだ。友達も陽を除いたらクラスではいない。なので当然同じ班になってくれる人もいないだろう。


班決めの時間が今から憂鬱に感じる。


「そーだな。俺も幼い頃に一回行ったきりだ。でも、その前にテストがあるぞ?」

「それを言うな!?考えないようにしてるんだから!」

「ごめん。でも陽は要領がいいから、ちゃんと勉強したら成績伸びると思うぞ?」

「陽は要領が…ってダジャレか?」

「褒めてやったつもりだったのに…」

「ありがとよ。まぁ、テストのご褒美に修学旅行があると思ったら今回は頑張れそうだ。」

「そーかい。がんばれよ。」


それからはどうでもいい話をしていた。


「あ、そういえばお前今日暇か?」

「暇っていえば暇だけど、どうした?」

「なら一緒に帰ろうぜ。今日部活も休みでよ。用があるんでついてきて欲しいんだ。」

「別にいいけど、いいのか?俺で。もっと良い奴いるだろう?」

「誰でもいいだろー。別に。」

「わかった。」


今更だが陽はサッカー部に入ってる。一軍らしい。サッカーしてるとこ見たことないけれど。俺?迷うことなく帰宅部ですよ。


午後の眠い授業も何とか乗り越え、放課後になった。

なんで午後の英語はあんなに眠いのだろうか?子守唄を聞かせてもらってるようにしか思えない。


「神楽ー、帰ろーぜー」

「わかった、すぐ行く。」

そう言って準備し教室を出る。


くだらない話をして階段を下っていると女子生徒たちの会話が聞こえた。


「見て〜このポーチ可愛くない?」

「めっちゃ可愛い!どこでそれ買ったの〜?」

「教えな〜い!教えたら真似して修学旅行に持って行くでしょ?」

「別にいいじゃない?教えてくれたって減るわけじゃないんだから」

「それもそうだけどさ〜。まあ修学旅行が終わったら教えてあげる♪」

「あ〜、だったら私も新しい化粧品教えてあーげない!」

「わかったよー、このポーチ教えてあげるからその情報ちょーだい♪」


そんな北風真美含め4人の女子高生の会話を聞いて、俺は決してバレないように体を隠したのである。


「お前、本当に北風さん達苦手だよな〜。あんなに可愛い子達なのに何がそんなに気に触るのかさっぱりだぜ。」

「言ってろ。いつか後悔する日がくる。」


俺は未だに体育でのことを引きずっていた。

「その日が来るのは俺ではなく神楽だろーなー。大人になって後悔するぜ?もっと遊んでればよかったーてな。」

「ありえない。」

「ははっ。そんな日が来た時が楽しみだ。そんなことより北風さん達もやっぱり修学旅行楽しみにしてんだろーなー。」

「今の会話を聞く限りそうなんだろーな。はぁ、一気に気が重くなった。」

「そこまで嫌わなくてもいいじゃねーか。」


彼女達は理系である。偏見だが、ああいう系の女子は文系が多いと思う。(偏見)

そう思って俺は理系にしたのにまさか彼女が理系だと知った時は焦った。同じクラスになる確率が上がったからな。来年もまたあの気持ちを味わうことになると思うと体調を崩しそうになる。


「そんじゃ、北風さんも帰ったことだし俺達も帰りますか。」

「そーするか。」



「ところで陽、結局お前の用事はなんなんだ?」


「あー、修学旅行に必要なものを買おうと思ってな。ついてきてくれるか?」

「時間もなんだしサッサと行こうぜ。」

「ありがとよ。」

「おれも必要なものがあるんだから付き合ってくれよ?」

「おう!」





「んじゃあ、またなー」

修学旅行に必要なもの(と言っても買ったのは下着と歯ブラシと陽に勧めらて買った靴ぐらいだが)を買った俺たちは帰路についていた。

「おう、また明日」


そうして修学旅行が始まる。

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