再会した幼馴染との日常(再会した幼馴染が可愛すぎる件)

羽島りゅう

再会

 俺――木村きむら和希かずきには今川いまがわ香織かおりという名の同じ年の幼馴染がいる。

 父親同士の仲が良く家も近く、どちらも一人っ子だったため、小さい頃はよく一緒に遊んだ。


 だが、俺が小学校三年生の時に今川家の父の転勤のため引っ越してしまった。

 幼馴染がいなくなって少し寂しさを感じたが、仕方がないことだと小学生ながら割り切った。

 それから七年後、俺は晴れて第一志望の高校に合格した。

 そして香織とは引っ越した以降は疎遠になった、はずなのに……


「で? なにしてんの、お前?」


「えへへ、七年ぶりだね。もちろんかずくんを待ってたんだよ」


 問いかけた相手はへにゃッとした笑みを浮かべながら答えた。


「『待ってたんだよ』じゃねぇわ! なに人の家のリビングでくつろぎながらテレビ見てんのか聞いてんだよ――香織!」


 そう、そこには香織がいた。七年ぶりに見てもわかる。特徴的なへにゃッとした笑み、それに俺のことを和「和くん」なんて呼ぶやつは香織しかいない。

 だが雰囲気はかなり変わった。ロングヘアにしていた髪をバッサリ切って、毛先を外側にハネさせたミディアムにしていて、もともと黒地だった色が、染めているのか茶色になっていた。女の人は髪型で印象がかなり変わると知っていたが、はじめて理解できた。


「どうやって家の中に入ったんだよ?」


「ふぇ? 普通にピンポン押したら和ママが入れてくれたよ」


 香織は母さんのことを『和ママ』、父さんのことを『和パパ』と呼ぶ。ちなみに俺は香織のお父さんお母さんを『香織パパ』、『香織ママ』と呼んでいた。


「それより和くん。何で前みたいにって呼んでくれないの?」


「うぐっ! そ、それは……」


「それは?」


 思っていることを言うか言わないか悩んでいると、香織が俺の顔を覗き込んできた。

 突然香織との距離が近くなり、香織のふわっとした匂いが鼻孔をくすぐる。


「……久しぶりに会っていきなり前みたいに呼ぶのが恥ずかしいだけだよ」


 言いながら顔が赤くなっていくのを自覚する。

 いやだってさ、小さい頃は女子としては見ていたけど可愛いとは思わなかったけど、今の香織めちゃくちゃ可愛いんだ。いくら幼馴染とは言え、顔が赤くなるのは仕方がないと思う。


「なーんだ、そうだったんだ。てっきり私のこと嫌いになったのかと思った」


「そんなわけ無いだろ」


「え、じゃあ私の事好き?」


 香織がニコニコしながら聞いてきた。

 意図せず人を困らせることも変わってないんだな、こいつ。


「(友達として)……好きだよ」


「えへへ、私も和くんのこと好きだよ」


「っ……」


 香織が言う「好き」が、幼馴染として好きとわかっていても、やっぱり動揺してしまう自分がいる。


「そんなことより母さんは?」


 いつもならリビングにいるが今日はいない。さっき香織は母さんに入れてもらったと言っていたが、


「和ママなら和くんが帰ってくるちょっと前に買い物に行くって言って出て行ったよ」


 いくら幼馴染とはいえ随分とうちの母さんは不用心だな……。

 ちなみに、母さんは午前中に買い物は済ませる派の人だ。買い忘れたものを買いに行った可能性もあるが恐らくそれは無いだろう。と、考えるとこの状況は明らかに母さんが意図的に仕組んだもののはずだ。香織と二人で何をすればいいんだ。ゲーム? 雑談? よくわからん。


「なぁ、香織」


「なに?」


「お前引っ越したんじゃないのか?」


 数年ぶりの幼馴染との再会で驚いてはいるが、これが一番気になった。


「パパがまた転勤してこっちの方が近くなったから、また戻ってきたんだよ」


「そうだったのか、香織パパも大変だな。家はどこら辺なんだ?」


「和くんの家の隣」


「はい?」


 今なんて言った? 聞き間違えじゃなければ俺の家の隣と言ったような。


「だーかーらー、和くんの家の右の家!」


 そう言いながら香織はカーテンをシャッと開けて俺の家の右隣の家を指差した。


「そして、高校も和くんと同じ! 来週から三年間毎日一緒に学校行けるね!」


 これからの高校生活に期待をしているのか、はたまた本当に俺と一緒に学校に行けるのが嬉しいのか、香織は窓の向こう側から差し込んでくる太陽の光に負けないぐらい輝いた笑顔を浮かべた。

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