ありとあらゆるパターンの罵詈雑言と嘲りと蔑みの言葉が
『この世界の人間じゃない僕がこうして生きることを許されてるのに、この子が生きることを許されないなんて、おかしいよな』
娘が宿した赤ん坊に対する主人公の考え方は、結局、これ。
そして彼には、身の回りで相談できる人間がいたんだ。
<無戸籍児童問題に取り組んでたNPO団体>に所属してた人とか、児童養護施設の職員だった人とか、大学時代に知り合った人とか。
よく、ネットとかで見ず知らずの相手に相談とかしてる人いるけど、ああいうのって、<ネタ>じゃなくてもし本当のことだったら、それ、自分の周りに相談できる人がいないってのを告白してるのと同じだと思うんだよね。
だってそうじゃん? そこに集まってくる人間が信用できる相手だって、どうやって確かめんの? 真面目に話を聞いてくれる相手だってどうやって確かめんの? 実際、相談者を、よってたかってメチャクチャに袋叩きにすることだってあるじゃん。笑いものすることだってあるじゃん。なんでそんなとこで相談しようと思うの? 身近で、相談できる、信頼できる人がいたら、まずそっちを頼るのが筋じゃない?
だから主人公も、ネットで相談なんかせずに、ちゃんと身近な人に相談するんだよ。
それは、主人公がこの世界で培ってきた人間関係なんだ。それがあったから、主人公は自分の未熟さを省みることもできたし、『どうしようどうしよう』とオロオロするばかりじゃなく、
『具体的にできることを考えよう』
と思えたんだよ。
だいたい、
『高校生の娘が妊娠した。どうすればいいと思う?』
なんて話を匿名の掲示板辺りで訊いてごらんよ。ありとあらゆるパターンの罵詈雑言と嘲りと蔑みの言葉が収集できるだろうね。
で、赤ん坊については、
『どうせ育てられないんだから
って、もうそれができる期間が過ぎてるって言っても、その上で『
もうこれだけでもどれだけ無責任かが分かるってもんじゃん。
でも、主人公の周りの人達は、現実的に考えるんだよ。
人工妊娠中絶が可能な期間が過ぎているのが分かればそんなものはとっとと慮外とする。
いかに安全に出産までこぎつけて、生まれた子をどうするのか。主人公達が育てるのか、育てられないとして施設に預けるのか、施設に預けるとなれば必要な手続きは何か、ってさ。
漫画やアニメで出てくるような実現不可能な無茶苦茶な解決方法なんておくびにも出さない。
徹底して現実で実現可能な対処法を提示してくれるんだ。
そういう人間関係を、主人公は培ってきたんだよ。
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