可能性だけで話をするなら
主人公は、元々は、他人に面と向かって罵れるようなのじゃなかった。ネットで匿名でって形じゃなきゃできなかった。
いわゆる<ネット弁慶>ってやつだよね。今はまた別の言い方があるのかもだけど、それは別にどうでもいい。
『今時の言葉を使わないってだけで他人をバカにするようなのに合わせなきゃいけない理由なんてない』
からさ。
だけど、この世界の人達は、主人公が罵っても怒鳴り返したりしないんだ。だから調子に乗っちゃったんだろうね。
ネットで匿名で罵るのだってさ、相手に反撃させないためってのもあるだろうしさ。
リアルで強く出られるとなにもできなくなるんだよ。匿名の陰に隠れられてる間は強気に出られてもね。
なのに、ここじゃリアルでも高圧的になられることがないから。
こうなると、
『やっぱ強い態度で臨まなきゃダメなんじゃん!!』
って言うかもだけど、それ以前の問題だよ。だって、
『相手が強気で歯向かってこないから』
なんて、完全に、
<他人の所為>
にしてるじゃん。
相手が強気で出てくるとかこないとかそんなの関係なく、そういう態度はよくないって教わるんじゃないの? それを教わってるのに、『相手が強気で歯向かってこないから』って調子に乗るとかそれこそおかしいじゃん。
明らかにおかしいことをしてる方が改められるべきであって、どうしてちゃんとしてる方が『強い態度で臨まなきゃダメなんじゃん!!』とか駄目出しされなきゃならないの?
『主人公みたいなやつが現れた時に備えるためだ!』
って? でもこの世界じゃ、もう、文献の中にしか残ってないくらい、そんなのはいなかったんだよ?
『それでも<可能性>は考えなきゃダメだろ!』
って? じゃああなたは、<決闘の作法>を正式に習ったことがあるの? 可能性だけで話をするなら、<決闘をすることになる可能性>だって否定できないじゃん。
だけど、今はもう、決闘そのものが違法だってことで、
『決闘をする可能性を考慮する必要もなくなってる』
から、習わないんでしょ? それで、
『決闘の心構えを持ってないとかおかしい!!』
なんて言われたって困るじゃん。間違ってるのは<決闘をやろうとする側>であって、<決闘なんかしようとも思ってない側>じゃないでしょ?
これだけ言っても、
『考慮はするべきだ!!』
とか言う人はいなくならないだろうけど、でも多数派になることはないし、
『決闘の作法を学ばなきゃ!!』
なんて考える人もそんなには出てこない。
そういうことなんだよ。
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