微妙な関係の幼馴染との距離をゼロにするまでのお話

アラタ ユウ

一話

僕の名前は日下部しゅう


黒髪に平均的な顔立ちをした高校二年生だ。

クラスでのカーストは下位の下位。

だけど、そんな僕にも一応特徴がある。


僕には、幼馴染がいる。


ここで、「残念!男です!」とかいってくる奴がいるが、男ではない。安心してください。


……まあ、男でも一部の人には需要があるだろうが。


……話を戻そう。

僕には女の子の幼馴染がいる。

親同士が知り合いで、その関係で赤ん坊の時から一緒だった女の子だ。


西川 美咲。それが僕の幼馴染の名前だ。

白磁の様な肌と黒髪のロングに、端整な顔立ちをした女の子で、

<1学年で付き合いたい女子ランキング>

では1位を獲得し、前回の中間テストでは学年9位を獲得した、才色兼備な女の子だ。


何より、彼女の一番の魅力は優しい事だ。

どれくらい優しいかというと、クラス全員に毎朝挨拶をして、「ちゃんと眠れた?」とか聞く位優しい。優しすぎだろ。


それ故に勘違いする男子は後を絶たず、確か先月末で首切り50を達成したとか。

この学校の1クラスの人数が40人なので、いかに美咲の人気が高いかわかるだろう。


因みに、”幼馴染の僕だけに優しくしない”みたいなツンデレ属性は持っている訳が無い。

本当に、誰にでも分け隔てなく優しくする。それが彼女の素の姿なのだ。

だからこそ気づいてしまう。幼馴染である自分は、その他大勢と同じ認識でしか見られていないことに。


まあ、それは仕方の無い事なのだ。僕は成績こそ良いが、他は全部平均。

彼女に釣り合うには、同等以上のスペックが必要とされる。

僕なんかが釣り合おうと努力しても、彼女の規格外の才能に潰されるのがオチだ。


美咲の隣に立つのは、幼馴染の僕なんかじゃ務まらないし、望んではいけない。


キーンコーンカーンコーン


考え事をしている間に授業が終わったようだ。

次は……昼休憩か。


そこで、1人の男子生徒が僕に声を掛けてきた。


「修、飯食おうぜ!」


「ああ、良いよ。どこで食べようか」


「何時もの場所でいいだろ?」


「そうだな。行こうか。」


僕に声を掛けてきたコイツは、上井 涼介。

高校に入ってから初めてできた友達で、親友というやつだ。


実は、僕には友達と言える存在が殆どいない。何時も負のオーラを放っている変わり者の僕に話しかけてくる人などいないのだ。

美咲も例外ではない。朝の挨拶を僕に済ませると、何時もそそくさと退散していく。


必然的に涼介も変わり者の箔を押されているのだが、クラスの人からは避けられていない。僕と違って社交性がある涼介は、逆にクラスの人達から好かれているのだ。


「良いよなぁ、今日も弁当なんだろ?」


「そうだけど……」


今、僕たちは屋上で昼ご飯を食べている。

本当は安全性の問題で鍵が常に掛かっている屋上なのだが、1年の時、僕が壊れかかった屋上の鍵を壊して開けた。

今は僕たちの安息の場になっている。

昼休憩の時は何時も此処に来ているのだ。


僕が黙々とタコさんウィンナーを食べていると、涼介が意外な話を振ってきた。


「そういえば、西川が昨日60人抜きを果たしたって聞いたぞ。」


いきなり美咲の話を出されて驚いた僕だが、顔には出さずに返事をする。


「へぇ………大変そうだな。」


「本当に興味無いんだな。幼馴染だろ?」


「…今は関わりがないからな。」


「ふーん……"今は"ね……」


「…そうだ。」


僕は少し声色を冷たくし、この話題を続けさせない様にした。


「……そうか。」


涼介は僕の意思を汲み取ってくれたようだ。


--------


昼休憩が終わり、5時間目が始まった。

僕の学校は毎日6時間授業があり、その後終礼をせずにそのまま終わる。


後2時間だと自分に言い聞かせ、聞きたくもない教師の話に耳を傾ける。

取り敢えず、板書は大切な所だけ写し、余白に教師の話した事を書き込んだ。


この方法は、ノート点はあまり期待できないが、定期テストに対しては強力な武器になる。僕が毎回の定期テストで高得点を取れるのも、このノートのお陰だ。


キーンコーンカーンコーン


……やっと今日の学校が終わった。


「修、帰ろうぜー」


「おう。」


「あ………ま、また明日!」


美咲が帰りの挨拶をしてくる。律儀だなぁ。


「また明日。」


何時ものように挨拶を返す。そして、急いで教室から出て涼介と合流した。


「なあ、どっか寄ってこうぜ!俺腹減ってきたんだよ。」


「良いぞ。何処に行く?」


「やっぱり楽ドナルドだろ!」


「了解。行こうぜ」


涼介の提案で、楽ドナルドに行くことになった。

楽ドナルドは、学校からの帰り道にあるハンバーガー屋さんで、生徒達に人気の店だ。

僕達も週に一度程のペースで通っている。


「そういえば、新作のバーガーが出たらしい。」


「まじか!じゃあ俺はそれにしよう」


「僕は…何時もので良いや。」


そんな事を言っている内に、楽ドナルドの前に着いた。

店内は夕方だからかあまり客がおらず、良い感じに空いていた。

僕と涼介は隅っこの席を陣取り、注文を頼みに行く。


「朝日バーガー1つください、後、ドリンクはコーラで」


「畏まりました。ご注文は以上でよろしいでしょうか?」


「はい」


「次の方、どうぞ……あら?」


「……何時もので。」


「アップルパイと《《》》コーヒーですね。了解しました。」


僕が毎回来るたびに同じ注文しかしないので、店員さんには顔を覚えられてしまっている。

便利だから良いのだが。


「お前、この店の店員さんとあんな仲だったとは……」


何を言う。勝手に覚えられてただけだ。


「別に。便利だから良いだろ?」


「俺が言ったのはそこではないのだが……」


分かっている。

もう呆れられているって事だろ?あの店員さん、僕を見て「あら?」とか言ってたし。


「なあ……」


「……なんだ?」


「西川が来てる。」


「ブフッ!」


「なんちゃって。」


「……………」


思いっきり涼介を睨みつける。当の本人はニヤニヤ顔だ。


「お前、良い加減に……」


だがそこで僕の声は途切れた。何故なら…


「え!?上井くんと、しゅ…日下部くん?」


美咲がいた。


「やー!西川さん」


「……!?」


「お?どうした?修」


「……後で覚えてろ」


もう許さん。





◇◇◇◇◇



こんにちは。そしてありがとうございます。

読者の皆さん。



この小説は僕の処女作の小説で、

「小説家になろう」に掲載しているものです。


もう一方の雪菜さんが出てくる方は、この小説を書いた後に思いついたものです。


書いた当時のまま掲載しているので、文章の拙さが目立つと思いますが、どうぞよろしくお願いします。





 

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