第29話VS BOSS①

俺とルアが扉を開けた先にいたのは……



「GYAOOOOOOOO!!!」


ドラゴンだった。


2対の丈夫そうな翼、長いしっぽ、2本の足と腕まであるな。


RPGとかで出そうな龍というよりドラゴンって感じがした。これは間違いなくBOSSだろう。


それだけなら倒せるかもと思ったけど、こいつは俺の天敵だな。


俺の空間操作は、俺を中心に半径10メートル以内にしか発動出来ない。それに対してドラゴンの大きさは50メートルはあるかもな。


それに加えてドラゴンは空を飛んでる。俺の上を高くな。俺が空間操作をあいつに作用させるなら俺もかなり飛ばないと行けないが、問題は跳ぶことより、そんなことしたら無防備になるということだ。その隙を見逃してくれたらいいけど…。


どうしたもんかな…。


「GRUOOOOOOOO!!!」


「ルア!!」


何と魔法まで使ってきた。ファイアーボールだな。


「うん!」


ルアのユニークではね返すが、それを水魔法でドラゴンがかき消す。


知能までありそうだな。最悪だわ。だが、鑑定できたぞ。レベルもステータスも俺とルアより全然上で、訳分からんスキルまで持ってた。


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ドラゴンブラスト・・・竜族固有のスキル。魔力を使ってエネルギーを放つ。


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説明雑くね!?全く分からんわ!?


俺の絶望なんて関係なく、ドラゴンは魔法を放ってくる。火、水、土、風、雷の属性攻撃が来る。同時にいくつの魔法を使ってんだ!?


「ルア!別れるぞ!」


「うん!」



この量の魔法は反属性のルナでも返せない!なら、分散させるしかないだろ!


俺は右にルナは左に別れる。俺だって空間操作で魔法をずらす事はできる。威力が強過ぎると、ベクトルを曲げれなくなったり魔力が足りなくなったりするが。この程度なら何とかなる。


俺は全然時空魔法を扱えていない。魔力を魔法にする時だって5割ぐらいしか使えていない。


毎日魔力操作の修行はしてるんだけどな。だからあまり強くベクトルを作用させることは出来ないんだ。


俺よりルアの方が厄介だと感じたんだろうな。俺よりルアに向かってる魔法の数の方が多い。ルアは上手く対応している。はね返した魔法とルアに向かってる魔法をぶつけて相殺している。


クソっ。このままじゃジリ貧だな。いずれ負ける。


なんとか策を練らないと!


「あうっ!!」


「ルア!!」


とうとうルアがドラゴンの魔法に対処しきれなくなってダメージを貰ってしまった。これをルアを倒すチャンスとみてドラゴンの方も俺への攻撃をやめて、ルアの方を見ている。


「このっ!くそドラゴンが!!」


俺は空を飛び、ゲートを使ってドラゴンの上にワープする。


空間操作ゾーン!!!」


ドラゴンの背中に乗り、重力のベクトルをかなり強くして、落とそうとするが全く落ちない!!


「クソっ!!どうなってやがる!」


そこでようやく気づいた。こいつは


「風魔法で支えながら飛んでんのか!」



翼だけで飛んでいるのではない。だから重力のベクトルを強くしても落ちにくいんだ!だったら!


ザシュッ!!!


俺はドラゴンに剣を突き刺した!ベクトルを操作して刺す力は上げてある。


「GRUGYAOOOOOOOO!!??」


「うおっ!?」


痛みでのたうち回って俺が振り落とされた。だが、ルアへの攻撃は止んだぞ!


しかし、ドラゴンの目が俺の方を向く。かなり怒ってるぽいな。


そして、ドラゴンの手が動こうとしている。


ヤバい!!空中では身動きが!!


「ゲー……」


トって言おうとしたんだが、それを開くより早くにドラゴンに掴まれて投げられる。


「グッ!!」


「タイチ!」


吹き飛ばされるままに壁に激突する。肺から空気が抜ける。受け身が上手く取れなかった。


痛いが、橋から落ちた時ほどじゃないな。骨は何本かイってるけどな。


「来るな!!逃げろ!」


ルアが俺を心配して、こっちに来ようとしているがそれはダメだ。それでは最初と同じだし、訳の分からんドラゴンのスキルの的になる。その正体が分からない以上2人揃った的になるのは危険だろう。


ダメージを負ったこともあって俺は最高速度で走ることは難しいな。ならば!


時間加速クロノアクセル


俺の時間を早くして、身体能力を上げる!とっておきの時間魔法だ。


マジでどうするっ!?考えろ!あいつの魔法を避けながらあいつを倒す方法を!するとルアが


「こんっの!喰らえ!"雷霆"!」


ルアが雷をドラゴンに落とす!それを予期してなかったドラゴンはでかい図体が仇となり、避けることが出来なかった。


「GYAAAAAAA!!!」


かなりのダメージがあったようだな。すごく苦しんでる。それに…


ドスンッ!


という音がしてドラゴンが地面に落ちてくる。これならいける!!陸ならおれの範囲だ!!


そう思った俺とルアは同時にドラゴンの元に走り出した!このチャンスを逃す訳には行かない!!


しかし…


「GRUOOOOOOOO!!!!!」


耳が痛い!うるさすぎる!!


ドラゴンの大きな咆哮によって俺とルアの足が止まる。


その隙を逃さず、ドラゴンがしっぽで俺とルアを攻撃して吹き飛ばす!


「グッ!」「うグッ!」


その間にドラゴンはまた空を飛んでいる。同じ攻撃が2度くらうことは無いだろうな。あのドラゴン結構知能高いし。


また魔法の雨か。って思っていると違った。ドラゴンが大きく翼を上下にして俺たちに強風をお見舞いする。


だが、こんなことして何になるんだ?壁に打ち付けられる程の威力はないぞ?



すると、急に強風が止んだ。何する気だ?と思っがすぐにわかった。ドラゴンの両手には壁の瓦礫があった。


そういうことか!!


「ルア!!逃げろ!」


だが、気づくのが少し遅かった。


「キャア!!」


ドラゴンが瓦礫をルアに向かって投げたのだ。ルアは物理攻撃ははね返せない。そのことをさっきの強風で判断したんだろうな。魔法だったらはね返すと思って。


このドラゴンマジで知能が高い!どうしたら勝てるんだよ!?


ルアはかなりのダメージを貰ってしまった。それも頭と足に。回復魔法を使っているようだが…。


クソドラゴンが!そう思って上を見るとさらにヤバい現状が広がっていた。


おいおいおいおい!まじか!?あいつ!?あれがドラゴンブラストか!?


ドラゴンはエネルギーをためて、それを口から放とうとしている。そして、その目の見据える先にいるのは…


「ルアーーー!!!」


ルアはまだ回復の途中だ。それに反属性ではスキルははね返せない。そしてルアは上にいるドラゴンの様子には気づいていない!


ボウっ!!


という音がしてエネルギーの塊がルアに向かう!


「させるか!ゲート!!」


すぐにルアの前に転移して


「ゾーン!!」


空間操作でドラゴンブラストを曲げようとする。しかし!ドラゴンブラストの威力が強過ぎる!!今の俺では曲げきれない!もう一度ゲートを使って俺とルアで逃げたいが、そんなことしたら死ぬとわかってしまうから、一切の力を緩めることも許されない。


ならば!俺が盾となり、ルアへの攻撃を曲げる事に専念する。少しだけ俺に来るエネルギーも曲げている。


「グッ!うぅ!」


予想以上の威力と時間!!長すぎる!ヤバい!耐えきれるか!?


「タイチ!!?」


ルアの俺を心配する声が聞こえるが、正直何か言える余裕はない。


「グアァァァア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア」


気合いで何とか耐えきる。けれども


「タイチ!?」


体が血だられけで動かない。ルアの声が遠くに聞こえる。体が倒れそうになる。


あぁ、このドラゴンには勝つ事が出来ない。そう思った瞬間に頭の中で走馬灯が流れる。


今までの記憶が映画のように流れる。俺はそれを見ている。


じいちゃんが出てくる。懐かしいな。



『いいか、太一。時にはな、諦めることも大切じゃ。諦めないことが全てではない。じゃがな、諦めるタイミングを間違えるな。そこを間違えてしまっては一生の後悔が残る。それを間違えて逝ってしまった同僚をわしは沢山見てきた…。だから、タイチにはそうなって欲しくはない!だから、この事を忘れるなよ?ワッハッハっ!』


じいちゃんの言葉は重みが違うな。心に響く。


次に流れたのはルアだった。


一緒に魔物倒して、時には逃げて、一緒に食事して。俺が助けて、俺が助けられた堕天使で、笑顔が素敵な明るい俺のパートナー。


俺は誓った。ルアを守ると。俺が手に入れた力は、どんな理不尽からでも俺のものを・・ルアを守るために、そしてこのドン底で成り上がるために使うと。


今、あの理不尽な存在のドラゴンからルアを守れてるか?


否だ。


ここで諦めてもいいかもしれない。だけど、ここで諦めるのはタイミングが間違ってると思う。なら俺は諦めない。


不屈とかかっこいいのではない。諦めるタイミングが今出ないと思うなら俺がやることは1つ。立ち向かうこと。後悔しないために─。


走馬灯って、アメリカの心理学者が一説として、人は死に直面した危機的状況に陥ると、助かりたい一心でなんとか助かる方法を脳から引き出そうとするため記憶が一斉に蘇るらしい。


俺の場合は特に生き残るいい案が浮かんだわけではなかったが、勇気を貰えたな。


「タイチっ!」


俺は倒れるのでは無く、ルアに支えられて立つ。さて走馬灯ゆめは終わりだ。


どうするかな?そう思った時に1つの言葉が頭をよぎった。


『魔法ってね、もっと自由なんだよ!どんな形にしてもいい。どんな効果にしていい!ユニーク属性ってその傾向が強くね?自分だけの属性だからすっごい自由!時空属性だってタイチが考えてないだけで、もっとたくさんの使い道があると思うよ?』


いつかルアが俺に言った言葉だ。…1つ作戦を思いついた。


「…ルア、合図したら特大の火属性をあのドラゴンに打ってくれ」


「わかった!」


何も聞かずに頷いてくれる。本当にいいパートナーだ。


これが最後の勝負だ。


「血が滾るな…。さて行くぞ!限界突破!!」









後書き

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