第18話閑話Side住野桜②

「おはよう!司馬くん!最近は、訓練にも参加してないから出会うことがなかったから心配してたけど、うん!顔色もいいし、元気そう!安心したよ!」




集合場所に行く司馬くんと話すことができた。最近は彼と顔を合わすこともほとんどないので、体調を崩していないか?食事は食べているのか?など心配していたが、今の彼の顔を見て安心した。


彼の装備は、皮の鎧と鉄の剣だ。他の剣士も似たような格好だけど、彼が1番似合っているように見える。恋をすると、周りの景色は違って見えるらしい。




「おはよう、住野さん。心配してくれてありがとね。僕は大丈夫だよ。部屋にいたとはいえ健康的に過ごしていたしね。それより、今からダンジョンだけど緊張とかしてないの?」




うん、受け答えもしっかりしているから調子も大丈夫だろう!それに久しぶりに聞いた彼の声がとても気持ちいい!




「うう〜ん、あんまりしてないかな?上層だけらしいし安全みたいだからね。司馬くんは?」




「ちょっとしてるかな。魔物も見たことないし…」




「ふふっ。だ〜いじょうぶだよ〜!何かあったら私を呼んで!」




「あぁ、住野さん賢者だったもんね。」




「ちょっと馬鹿にしたでしょ?まぁいいけどね!何かあったらすぐに呼んでね。助けに行くから。」




「ありがとう。俺は「無」職で弱い。けど、出来るだけ自分で頑張ろうと思う。それに助けを呼びすぎたら住野さんも大変だし。」




「そんなこと気にしなくていいよ〜。気軽に呼んで!絶対に無茶しないでね。死んじゃダメだよ?」




「わかった。約束する。」




何回か彼と約束をしたことがあるのだが、1回も破ったことは無い。ならば、今回も守ってくれるはずだ!




それに司馬くんに何かあったとしても絶対に私が助けるから、きっと大丈夫!




「全員揃ったな!それではこれよりラギルダンジョン探索に向かう!目的は御使い様のレベルアップ!潜る者は、御使い様全員と、騎士団長ラクルス率いる騎士団30名、魔法師団長キリカ率いる魔法師団30名だ!それでは、潜る!ここからは一切に油断しないように!」




「「「「「「はい!!」」」」」




そうして私たちラギルダンジョンに向かう─




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


ラギルダンジョン5層




ここまでとても辛かった。肉体的にじゃない。精神的に。一番最初にスライムを倒した時でも吐いてしまった。




うぅ、情けない。彼を守ると誓ったのに。でも、ここでリタイアする訳には行かない。




私は強い。彼を守るんだ。




そう自分に言い聞かせてゴブリンとの戦闘も乗り切った。途中で何回も嘔吐してしまったが…。




その度に司馬くんは優しく私に声をかけてくれる。




「大丈夫?」「水いる?」




色んな言葉をかけてくれた。とても嬉しかった。頑張れる気がした。




だけど彼がすんなりと魔物を倒しているのを見てちょっと驚いた。いつでも助けに出来るように構えていたのに当然のように倒していたからだ。




しかも顔色が悪くなったりもしていない。我慢している様子もない。そんな彼を見て唖然としてしまった。




彼の精神が強かったからでは無い。私が役に立たなかったからだ。彼を守れるぐらい強くなると決めたのに。




そうして5層まで来た。ならば彼が不意打ちに襲われないようにと思い、警戒していた。だからいち早く気づくことが出来た。彼の足元が光っていることに。トラップが発動したのだろう。




「司馬くん!」


彼の名を呼び、急いで彼の元に走った。だけど間に合わなかった。彼の手を掴んだと思ったら彼はいなくなっていた。




「キリカさん!!」


キリカ団長を呼び、どうなったのか説明してもらった。




「い…今のは私にも分からない。初めて見たトラップだ。だから、勇者様たちに何が起こったのかは分からないが、恐らくどこかに転移するようなトラップだと思う。」




そんな…。それでは私の手の届く範囲ではない。絶対に彼を守ると誓ったのに。これでは彼を守れない。どうしよう…。




「勇者様がたは、このラギルダンジョンのどこかに転移したのだと思う。ならば、御使い様方よ!」




キリカ団長が大きな声で話し始めた。




「これより、私は勇者様がたの捜索に向かう!よって私単独でラギルダンジョン深層を目指す!!御使い様方はこのまま騎士団、魔法師団と共に帰還して欲しい!!転移した者の中にはラクルス騎士団長もいる!きっと彼が勇者様方をお守りしていると思う!だから安心して欲しい!!私たち団長が勇者様たちを無事に救出しよう!」




「待ってください!私も連れて行ってくれませんか!?」


このまま彼の帰りを待つだけなのは嫌だ!私も助けに行きたい!




「ダメだ。許可することは出来ない!これ以上下に降りればいくら賢者である住野様といえども苦戦するかもしれない。そうなると私も住野様を守れるか分からない。」




「で、でも…」




「必ず彼らを連れて戻る。それに私一人の方が速い。」




そう言われたら引き下がるしか出来ない。




大丈夫だ!彼とは約束した!彼は約束を破らない!心は不安だったけど、頭の中で無理矢理、理由をこじつけ心を落ち着かせて帰還した。






























後書き

引き続き住野さん視点でした。




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