第6話 お父さんとお母さん
広い。広い。
なんと言ってもまず、庭が広い。
お
馬車が通る道の両側には背の高い
私は思わず馬車から顔を出して、
「ちょうど今、キルシュルートの花が
レフィーナがにこやかに話しかけてきた。
「キルシュルートって名前なんですね。ステキ…。」
「はい。夏は青々とした葉をつけ、秋にはその葉が赤く
ほんと、桜にそっくりだなぁと思った。
「間もなく、
レフィーナの言葉で、私は外に出していた頭を馬車の中にひっこめる。
車と違って、この馬車は止まる時に少し
馬車から降りると、そこにはお城のような建物が立っていた。
これはもう、
3階建ての
写真やテレビでしか見たことの無かった、ヨーロッパの
「お…大きいのね、レフィーナのお宅って。」
「
いやいや、比べる
内心、ツッこみたい気持ちでいっぱいだったが、グッとこらえた。
部屋に入ると
さらに奥には20
このベッドだけで、私の住んでいたアパートのワンルームはいっぱいいっぱいだろうな…と思った。
「どうぞ、こちらの部屋をご自由にお使いくださいませ。何か
「ありがとうございます、ウィリアムさん。」
「それと
「何から何まで、本当にすみません。」
私はウィリアムに深々とお
ソファーに横になると、これまでの
もうどれくらい寝ていないだろう。えっと、死んだ日は朝5時に起きて、それから…あれ?神様の部屋に居た時間は寝ていない時間にカウントされるのかな?…などと考えているうちに私は深い眠りについてしまった。
「ゆめ…」
うーん、まだ眠いよう…
「ゆーめ…」
誰かが肩を
「私はお母さまではありませんよ?」
その声を
「ど…こ?あ…」
目の前にはレフィーナがいた。今の会話、夢なのか現実なのか…
「起こしてごめんなさいね、ユメ。」
「あ、ううん。私こそゴメンね。いつの間にか寝ちゃってた…」
「いい寝顔だったから、そのままにしてあげたかったのだけれど、ちょうど今、お父様がお帰りになったの。ご
「あ。うん、もちろん。」
これからしばらくの間ご
少し乱れていた服と髪を整えてから、私はレフィーナに連れられて
「それにしても、ユメはまだまだお子様なのね。お母さんって
レフィーナがクスクスと笑う。
やっぱり声に出して言っていたようだ。恥ずかしさで穴があったら入りたいくらい。
「もぅ、からかわないでよ。…ゆっくり休めたからかな?久しぶりにお母さんを思い出しただけだから。」
レフィーナは幼い割には
今の私の言葉で、ユメは母親とは
「ごめんなさい、ユメ。私、その…
そう言ってレフィーナは落ち込んだ。
「ううん、気にしないで。お母さんとお父さんが死んじゃったのは、もう
でも、さすがに10年経って、自分も社会人になると、その現実をだいぶ受け止められるようになった。
そんな私に
「ユメ、あのね。私たち出会って間もないし、私はユメのお母さんにはなれないけれど、姉と思っていいのよ?だから…その…
ん?
私は
「レフィーナ、ごめん。
「少し前に14歳になりましたわ。」
ちょっと待てーい!
「あ、あはは。ゴメンね、レフィーナ。私16歳なんだ。お姉ちゃんは、私だね!」
声にならない声を上げたレフィーナは、顔を真っ赤にして俯くしかなかった。
(もちろん16歳というのは、神様が設定した今の年齢だよ?)
そんなやりとりをしているうちに、
先ほどの部屋も十分に
金銀財宝できらびやか、というわけではない。
部屋の奥には30代後半くらいの男性と女性が座っており、私とレフィーナの姿を見るとソファから立ち上がった。
男性はレフィーナと同じプラチナブロンドの髪、
女性はスカイブルーの髪、レフィーナと同じエメラルドグリーンの瞳。オーラと言うのだろうか、
一目で、レフィーナの両親と分かる。
「お父様、お母様、お帰りなさい!」
そう言うが早いか、レフィーナが両親に駆け寄る。
「ただいま、レフィーナ!」
父親が
「ただいま、レフィーナ。お客様の前なのですから、もう少しお
母親が
レフィーナは両親にとても愛されているんだろうな、と思った。
そしてレフィーナとの
「初めまして、お
「初めまして。アルスベルドの妻でレフィーナの母親のアリアナ・オルデンブルクです。どうぞゆっくりしていってくださいね。」
「は、初めましてっ!わ、私はゆ、ユメと申します。…」
「ねぇ、お父様。ユメは記憶を
「おお、そうだったね、レフィーナ。ウィリアムから
先生と言うのが恐らく
「夕食まではまだ時間があるからね。先に先生のところで診てもらうといい。レフィーナ、案内してあげなさい。」
「はーい!お父様!」
正直、この世界の
加えて、どうしたものか。
話の流れで私は
万が一バレてしまったらどうしよう…
――コンコン
レフィーナがドアをノックする。
「はい。」
部屋の中から透き通るような美しい女性の声が聴こえた。
――どうぞ、お入りください。
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