ただ可愛くて、ずっと隣にいてほしい

柊木ウィング

第一章 『付き合えたから』

第1話 『告白』

 僕は今日、初めてラブレターを書いてきた。ラブレターと言っても、「放課後体育館裏に来てください」って呼び出しだけどね。

 相手は学校一の美少女と名高い五月女姫初さおとめきうい


 正直、僕のような平凡な男と付き合ってくれる可能性は限りなくゼロだ。

 けど、聞く限りだと姫初は毎日のように告白されているらしい。タイプな人が告白してくる可能性は高いワケで、僕の出る幕無くして付き合ってしまうかもしれない。


「そんなのヤダ! せっかくなら当たって砕けろだ!」


 姫初の下駄箱を開け、ラブレターの入った封筒を入れる。

 そして僕も学校内に入るため、下駄箱を開けると、紙がひらりと落ちた。


「なにこれ」


 落ちた紙を拾って文に目を通す。


 要約

『放課後、体育館裏で待ってます』


 …………。

 ちょっと待って? なにこれなにこれ!?

 差出人の名前は無く、相手が誰かわからない。


「……悪いけど、放課後早く行って断ろう」


 *


「ちょっと早すぎたかな」


 放課後一目散に体育館裏へ向かった結果、部活を行う者も置き去りにしてたどり着いた。

 きょろきょろと見回しても居ないのでスマホをいじって数分時間をつぶす。


 すると、スッスッと足をする音がして、僕は音のする方へ顔を上げると。


「あ、え、あと……姫初、さん」

「は、初めまして……玲紋れもんさん」


 突如現れた姫初にドギマギしながら、片手に持つ誰かのラブレターを後ろに回す。


「き、来てくれたんだね、ありがとう」

「? 私の方こそ、ありがとうございます」

「?」


 ……なんか、話噛み合ってないなぁ。まあ、話せるだけでいいんだけど。

 どっちを優先すべきなんだろう。ラブレターをくれた子か僕が呼び出した姫初か。

 ……やっぱり先に潰してから、正々堂々告白するのが筋だよね。


「ごめんね、姫初さん。呼び出しといてなんだけど、僕も誰かから呼び出されてて」

「……私、玲紋さんに呼び出されてませんよ? よ、呼び出しはしましたけどね」

「え? 僕、呼び出されてないよ?」


 話がこんがらがってきたので、僕は下駄箱に入っていた紙を姫初にみせる。

 すると、びくりと肩を震わせた姫初は慌てて鞄の中をあさり、一つの封筒を取り出す――


「「それ! 僕(私)の出した紙(ですよ)……え?」」


 互いに固まり、紙と顔を何度も交互に見る。

 三度くらい行って、見つめ合っていた事に気づいて互いに明後日の方を向く。


 ……だけど、話は進展させなければならない。

 僕は意を決して、手を前に差し出すと。


「ま、前々から好きでした! 付き合ってください!」


 付き合えたら、振られたら。

 どっちの妄想も行い、回答がどっちでも僕は落ち込まない。……と、思いたい。

 実際に振られたらキツいだろうし、精神保てるか分からない。それでも――告白せずにはいられなかった。


 そんな僕の手を、柔らかくて華奢な手が包み込んで。


「私も、告白しようと思ってました。……こんな奇跡、あるとは思ってもみませんでした」


 にこりと朗らかに笑った姫初の表情は素敵で、僕は今日から両想いカップル生活を送っていく。

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