第三話 心~壊れかけた魂~

 ここは、無限に存在する世界と世界の廻間。

 暗闇の中で、この廻間の権利者である銀狼が、オオカミの姿でルキを守るように寄り添っていた。



「もう限界か?ルキ…」



 銀狼の声に反応を示すことは無く、ルキの黒い瞳は何もとらえていない。



「……………」



 そんなルキを見て銀狼は、ガルルと吠えて哀しそうな瞳をルキに向けている。



「まだ、大丈夫…」



 すると突然に、ルキの黒い瞳に再び意志が灯る。



「クッ…その瞳だ…」



 銀狼はルキのその瞳を認めると、不敵にギラっと牙を見せて笑った。

 ルキは立ち上がり、いつものように廻間に亀裂を入れては、銀狼を振り返らずに“世界”へと侵入して行った。



(私はまだ、世界をかえる方法を知らない・・・・・)



ルキもまた不敵に、得意げに笑っていた。






◆◆◆


「まだ楽しめそうだ、青龍…」


 ルキが亀裂を入れた廻間を見つめながら、そう銀狼は古い友人に語りかけていた。

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