第0章 エピソード2 壊れゆく幸福
3人家族の娘は可愛い少女だった。母親譲りの青い瞳に父親譲りのよく手入れのされている金髪。娘はよく笑う、笑顔の似合う少女だった。娘の名前はアイリス。花の名前が由来だそうだ。暖かく優しい両親に囲まれすくすくと育っていた。幸せな日々、ずっと続くと信じて疑わなかった。
しかし、ある嵐の日に事件は起こったのだ。その日は荒れ狂う風と雨に外へは出れず家族全員が揃っていた。アイリスは雷が鳴る外を怖がりずっと母の所にいた。その時。
外が真っ白になった。その後に響く轟音。雷が落ちたのだ。地面は揺れ、ガラスが割れる音がする。明かりは消え、辺りは暗い。両親は明かりをつけるため、家の奥の物置部屋へと行った。アイリスもついて行こうとしたが1人残されてしまった。そして、しばらくすると辺りに焦げ臭い匂いが立ちこめ始めた。段々と寒かったはずの部屋が暑くなってくる。幼いアイリスでも以上に気づいた。暗闇の中、扉を手探りで探し開けるとそこには、煙と炎で埋め尽くされた廊下が見えた。そしてその炎の奥に両親の姿が見える。両親はアイリスを見つけると叫んだ。早く逃げろ、と。アイリスはパパとママは?と聞くと、父がすぐに追いつくから。と言った。その言葉を信じ、アイリスは走った。炎のおかげか先程より少し明るく、足元も見えた。玄関から出たアイリスは家から離れた。そして待ち続けた、父と母が出てくるのを。しかし、いくら待てども両親は出てこない。探しに行こうと立ち上がった時、…家が崩れた。父と母は外に出ている、きっとどこかにいるとアイリスは探し回った。何時間も雨の中。しかし、両親の姿はどこにもない。街の方におりたアイリスは大人に助けを呼んだ。泣きながら懇願するアイリスに大人たちは直ぐに森へと進んだ。アイリスたちが家に着いた時、焼け野原となっていたアイリスの家に大人たちが足を踏み入れる。アイリスは街の女たちに宥められながらも泣いていた。そして、大人たちが帰ってきた。何かが入った袋を持ちながら。その中身を見たアイリスは泣き叫んだ。そして、謝り続けた。
その後のことは、よく覚えていない。気がついたら墓の前にいて、私は黒い服を着ていて。雨の中傘もささずに墓の前で立ちすくんだ。誰のお墓なの…?誰のお葬式なの…?頭ではわかっていても心が受け付けない。涙は枯れ、それでも両親の名前が掘られた墓を前にすると涙が出てきた。それからは、おばさんの所でお世話になった。とてもいい人だった。ご飯もくれた、寝床もお風呂も。でも、私は耐えられなかった。ご飯は喉を通らず、日に日に私は痩せていった。街の人は私を悪魔のようだと言った。本当にそうだと思う。おばさんも、だんだん変わっていった。私を見る目は冷めていき、言葉も罵倒の言葉に変わった。限界だった。だから、もう良いかなって思った。そして、私はその日崖から飛び降りた。私の頬を撫でる風の感覚、下から聞こえる波の音。そして、私は海へと沈んでいった。
__さようなら、世界。さようなら、私。__
アイリス ゆきみかん @amamiya_yuki
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