第326話「入り混じる戦」

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◇ななしの調査隊員

いまきた

キヨウ祭どうなってる?


◇ななしの調査隊員

西町の進撃っぷりがすごいな

南町が正面衝突してるがほとんど進行抑えられてない


◇ななしの調査隊員

西は騎士団がいるからな

アストラ一人を南のトップ組が束になってなんとか抑えてる感じ


◇ななしの調査隊員

副団長の支援能力もかなりエグいし、銀翼の団の一人一人が普通のプレイヤーの十人分くらいありそうだし


◇ななしの調査隊員

今は南が制御区域前で西抑えてる

墓が近いからゾンビ戦法でなんとか喰らい付いてるかんじかな


◇ななしの調査隊員

北町、BBCのメンバーがいるっぽいな

めちゃくちゃ強え猫だ


◇ななしの調査隊員

第一回だからかどこもトッププレイヤー抱えてんなぁ


◇ななしの調査隊員

東町は呪術師とか結構所属してなかったっけ?


◇ななしの調査隊員

指揮取ってるのがろーしょんだろ?

ハニトーとカルパスもそっちについてる筈


◇ななしの調査隊員

霊術師揃い踏みかぁ

厄介そうだ


◇ななしの調査隊員

あとラピスラズリもいるらしいからな

強いよ。


◇ななしの調査隊員

西に騎士団、東に術師


◇ななしの調査隊員

単純な人数で言うと南が一番多いんだけどな


◇ななしの調査隊員

そうなんだ?


◇ななしの調査隊員

開始直前まで一番少なくて、駆け込み勢がほとんど南に入った


◇ななしの調査隊員

結局殆どソロ専だから統率は取りにくそうだな


◇ななしの調査隊員

だからあえてゾンビ戦法取ってるんだろ

人海戦術っていうのはそれはそれで結構効果的だし


◇ななしの調査隊員

客席から見てる感じだと西町一人につき南三人くらいで当たってるな

雑兵ならそれで安定して各個撃破できてる


◇ななしの調査隊員

なお騎士団


◇ななしの調査隊員

騎士団は流石に相手が可哀想になる


◇ななしの調査隊員

第五戦闘班くらいでも普通にめっちゃ強いだろ、騎士団って


◇ななしの調査隊員

一対三で難なく勝ってるなぁ


◇ななしの調査隊員

騎士団は割とマジで全員トッププレイヤーだよ


◇ななしの調査隊員

南町の特攻隊員やってたけど、今日の団長さんいつにも増してテンションハイじゃない!?


◇ななしの調査隊員

アマツマラのトーナメントでも目輝かせてたし、対人戦隙なんじゃない?


◇ななしの調査隊員

隙はなかったよ


◇ななしの調査隊員

あの人はもうなんか、戦闘全般が好きなんだろ


◇ななしの調査隊員

剣持ってるだけでいいだろ


◇ななしの調査隊員

そんな大人しい性格なわけがないだろ!


◇ななしの調査隊員

悲報、南町中央制御区域突破されそう


◇ななしの調査隊員

西の勢い激しすぎる


◇ななしの調査隊員

機術師の弾幕が薄い!

押し切られる!!


◇ななしの調査隊員

なにやってんの!


◇ななしの調査隊員

おっと?


◇ななしの調査隊員

あれ、なんか


◇ななしの調査隊員

なんだあれ?


◇ななしの調査隊員

仕事中で放送とか見れないんだけどなんかあった?


◇ななしの調査隊員

仕事しろ

じゃなくて、なんか極大の光線が西陣営のプレイヤー薙ぎ払った


◇ななしの調査隊員

ええ・・・


◇ななしの調査隊員

なんだあれ

あんなアーツあったっけ?


◇ななしの調査隊員

野次馬で解説されてないか?


◇ななしの調査隊員

朗報!

南町に七人の賢者が参戦ですって


◇ななしの調査隊員

マジかよ


◇ななしの調査隊員

勝ったな、風呂入ってくる


◇ななしの調査隊員

頂上決戦じゃねーか


◇ななしの調査隊員

アストラさん極大光線で消されてない?大丈夫?


◇ななしの調査隊員

団長は普通に避けてたよ

あの人予知能力でもあるんじゃねーの?


◇ななしの調査隊員

あながち否定できないのも困りモンだなぁ


◇ななしの調査隊員

七賢者が本格的に参戦したな

西の軍勢と山車が押し返されてってる


◇ななしの調査隊員

七人で戦局ひっくり返すの流石すぎるわ


◇ななしの調査隊員

メルちゃんノリノリで焼き尽くしててわらう


◇ななしの調査隊員

通りが直線だから、メルちゃん最大火力最大射程が遺憾なく発揮される訳か

クソ強いな


◇ななしの調査隊員

おれ南でよかったーーーー!!!!


◇ななしの調査隊員

機術師の弾幕も盛り返したな

てかミオちゃん一人でめちゃくちゃ弾幕張ってる


◇ななしの調査隊員

なんだあれ、弾幕ゲーかよ


◇ななしの調査隊員

うーん、西と南はすげえ面白くなってきたな


◇ななしの調査隊員

そういえば北はどうなってんの?


◇ななしの調査隊員

北はどのカメラに映ってんだろ・・・


◇ななしの調査隊員

カメラ位置把握してんのかな

極力映らんように山車動かしてるっぽい


◇ななしの調査隊員

結構こそこそした戦法だな


◇ななしの調査隊員

リーダーは八刃会のハガネだろ?

八刃会らしくない


◇ななしの調査隊員

八刃会で突っ走ってんのは大トロうに軍艦とかだよ


◇ななしの調査隊員

ハガネは結構冷静だぞ

そのせいでリーダー押しつけられた説もあるが


◇ななしの調査隊員

北ってなんか有名な人参加してんの?


◇ななしの調査隊員

とりあえず八刃会


◇ななしの調査隊員

闇巫女のぽんちゃんも居たはず


◇ななしの調査隊員

ぽん!


◇ななしの調査隊員

ぽぽぽん!


◇ななしの調査隊員

ぽぽんがぽん!


◇ななしの調査隊員

満月!!!


◇ななしの調査隊員

けどぽんって呪符術師だろ、突破能力なさそうだけど


◇ななしの調査隊員

あとは、あー


◇ななしの調査隊員

おっさんがいるな


◇ななしの調査隊員

おっさんかぁ


◇ななしの調査隊員

白鹿庵?

ってことは赤ウサちゃんとかサムライちゃんとかもいるのか


◇ななしの調査隊員

北は少数精鋭って感じがするな


◇ななしの調査隊員

おっさん今なにやってんの?

また変なことしてない?


◇ななしの調査隊員

おっさん映ってるチャンネル捜せ!!


◇ななしの調査隊員

おっさん戦闘職じゃないらしいし後方支援に回ってんじゃないの?


◇ななしの調査隊員

お前それほんとに言ってる?


◇ななしの調査隊員

おっさんまとめサイト見てこい


◇ななしの調査隊員

あったよおっさんの姿が!


◇ななしの調査隊員

でかした!


◇ななしの調査隊員

何やってる?

てか何カメだよ


◇ななしの調査隊員

北16

なんかカルパスとラピスラズリの二人と対峙してる


◇ななしの調査隊員

なんて?


◇ななしの調査隊員

おっさん、盾姐さん、ぽん、あと呪術師っぽい子の四人対カルパスとラピスラズリっぽいな


◇ななしの調査隊員

4対2か

余裕だな


◇ななしの調査隊員

せやろか


◇ななしの調査隊員

あー、もう禁忌領域展開されてるっぽいな

勝ち目無さそう


◇ななしの調査隊員

まじか

あれ突破できる奴いるの?


◇ななしの調査隊員

流石にラピスラズリも結構準備してるだろうしなぁ


_/_/_/_/_/


 色つきのガラスのように硬質で透き通った壁が、戦場を分断している。

 こちら側には俺、エイミー、ぽん、ホタル。

 向こう側にはアンプルを握りつぶしLPを回復させたカルパスと、微笑を浮かべこの壁を構築している金髪の修道女ラピスラズリ。

 北町と東町の陣営が相対し、周囲のオーディエンスが沸き上がる。


「これが禁忌領域か」


 俺は足下に落ちていた白い骨片を投げる。

 それは薄い壁に阻まれ、硬質な音を立てて落ちた。


「そう。〈呪術〉スキルと〈罠〉スキルを融合させた、新しい概念。この中に入ったら最後、貴方たちに勝ち目は無いわ」


 深くスリットの入った修道服から白い足を覗かせて、ラピスラズリはうっとりとした表情で言い放つ。

 彼女の“禁忌領域”は同じ〈呪術〉スキルの範疇であるせいか、ホタルがカルパスに繋いだ呪縁も断ち切ってしまったようだ。

 骨鎧の戦士は既にLPを完全に回復させ、新たな大剣を肩に乗せている。


「レッジ、ここは一旦下がりましょう。あの中に入れば有利なのは向こうです」


 ラピスラズリをきつく睨んだままぽんが小さく囁く。

 そんな彼女の声を耳聡く拾い、妖艶なシスターは酷薄に笑う。


「あら、偉大なる闇巫女様も随分怖じ気づいてるみたいね。やっぱりそのちっちゃな背丈と同じで、肝も小さいのかしら?」

「あ゛?」

「ぽん!?」


 見え透いた挑発に、しかしぽんは濁った声で反応する。

 ラピスラズリはクスクスと口元を隠して肩を揺らし、挑戦的な視線を向けた。


「ま、影からコソコソとお札を投げることしかできないような小物には用はないわ。私、レッジさんの方が興味あるのよ」

「え、俺?」


 深い青の瞳がこちらに向けられ困惑する。

 ラピスラズリは手に持っていた銀の杖をこちらに差し向けて白い歯を見せた。


「ええ。霧森の邪竜との戦いの時に見た要塞、とても素敵だったわ。何人たりとも侵入させず、なんであろうと開放させない、完璧な城にして完全な牢獄。あれは、私が目指す究極の“領域”にとても近い――」


 うっとりと細められた瞳がこちらを見る。

 美しいはずの彼女と目があって、何故か俺は背筋にゾクゾクと悪寒が走った。


「わ、悪いが。“朧雲”は個人じゃ建てられないからな。あの時は騎士団の全面的なバックアップがあったからできたんだ」

「存じておりますとも。けれど、レッジさん、貴方が居なければ騎士団がいくら物資を集め頭を突き合わせようとアレは完成しませんでした。貴方があの戦いの中心だったのよ」


 随分と俺のことを買ってくれているようだ。

 そう褒めてくれるのは嬉しいのだが、どうにも彼女の言葉の端々からにじみ出す色に脳内の警鐘がけたたましく鳴り響く。


「レッジ、一旦退きましょう。ここに留まってても仕方ないわ」

「……そうだな」


 エイミーの冷静な言葉を受け、心を決める。

 ラピスラズリたちも領域の外には出てこないようだし、ここはまずハガネたちと合流する方がいいだろう。

 そう考えて、後ろへ足を下げた瞬間のことだった。


「――『領域拡張』」


 冷たい笑いと共に声が放たれる。

 まずい、と本能が判断を下すよりも僅かに早く、黒紫の領域が更に広がる。


「やってくれましたね、この執着女」


 奥歯を噛み締めぽんが言う。


「ようこそ、我が禁忌領域へ」


 骨片の山の上に立ち、金髪の修道女が俺たちを睥睨する。

 一瞬にして彼女の“禁忌領域”は俺たちをすっぽりと包み込むまで広がった。

 途端に両肩にのし掛かるのは鉛のような重圧。


「さあ、レッジさん。是非、私を楽しませて下さいな」

「俺も本気出すぜ。気合い入れろ」


 ラピスラズリが鋭い歯を剥き出しにして、青い眼の瞳孔を開く。

 隣に立つカルパスは超重量の大剣を片手に持ち、もう片方の手に二本目の大剣を握る。


「大剣の二刀流!? 聞いたことないわよ……」

「そりゃあそうだ。今初めて見せたからな」


 驚愕するエイミーにカルパスは狂犬のように笑う。


「レッジさん、いくら四人でもこの状況は不利すぎます。どうにか脱出する方法を考えないと」

「脱出か、無理だろ」

「レッジさん!?」


 緊迫し口早に言うぽん。

 俺は彼女の言葉を遮り、一歩前に出る。


「ここで殺されると、中央制御区域で復活か。ちっと距離があるな。――済まないが、力尽くで出させて貰うぞ」

「ふひっ。ええ、いいですとも、できるものなら!」


 槍の穂先をラピスラズリに突き付ける。

 黒衣の修道女も銀の杖をこちらに向ける。


「――ふっ!」

「あははっ!」


 重い沈黙を切り裂いて、俺たちは同時に駆け出した。


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