最後の講義 映画とは"フィロソフィー″  講師 大林宣彦

「外出自粛」という言葉が行き交う今日この頃、近くの本屋に行くこともためらわれ、僕は自室の積読コレクションを消化することを決め今回の本を手に取った。

また、この本を買ったのは、一、二か月前なのでコレクションの中でも比較的新しい方の部類に属し、加えて最初の方だけ軽く購入当初に読んでおり一番手を出す難易度が低いのが本書であった。

今回の本は映画がテーマであるが、僕は一時期毎週のように映画館に通っていた時期があった。

どうしてあんなに観ていたか今となってはあまり覚えていないが、現実逃避と言えば体のいい言い訳で、何か大きなものに押しつぶされそうでそれに正面から向き合う勇気も自信もなく、他人と自分を騙し逃げ続けた過程の一部であったのだと今になって思う。

今回の前置きはこれくらいにしてさっそく本の感想へと移りたいと思う。


今回の本は正直、私の感想を見るよりとにかく一旦読んでみて欲しい。

そう思わせるほどおもしろく非常に興味深い一冊であった。

NHKで放送されていた「最後の講義」というテレビ番組で放送された映像作家である大林さんの講義を文字に落とし込んだのが本書なのだが、まるで目の前で実際の講義が行われそれを聞いているかのような熱を本書から感じた。

これは編集の上手さももちろんだとは思うが、それ以上に講師の大林さんが「伝えたい」という思いで発せられた言葉が力強く、文字へと媒体が変わってもその熱量は変わることなく表現されていたからなのだと感じた。

内容としては、題名から察する通り映画と哲学(フィロソフィー)についてなのだが、小難しい話ではなく映画を作るときにまずジャンルや手段ありきで考えるのではなく、まず第一にフィロソフィーが必要でそれを表現するための技術を選んでいくのがよいということである。

当然そうに一見思えるこの文章を読んだとき私は大きな衝撃を受けた。

なぜなら私はまさにジャンルに縛られた創作活動ばかりを繰り返していたからだ。

創作活動といっても映画ではなく小説であるが、これまで私はアクションや恋愛などのジャンルからその時々に書きたいものを選んでは完結させることなく飽きたらまた違うジャンルの小説に手を出し、未完結の作品ばかりが残っていた。

これは私が読んでくれる人に伝えたいフィロソフィーについてまったく考えることなく、ただただ面白かった作品を観たり読んだりして発生した一時的な感情に任せて書いたものだったからだということに気付かされた。

そして、たぶんこのことはすべての創作やはたまた会話などの一般的なことにも当てはまる。

全てはまずフィロソフィーを考えるところから

私はこのことを頭に刻み込んでこれから行動していかなくてはならない。

他にも本書では表現そのものや戦争と平和について等などを多くの映画や実際の体験と共に述べられておりとても興味深くそこから学ぶ点が多くあった。

今回の本は特に創作関係で悩んでいる人や映画に興味を持っている人におすすめです。


今回の本

出版社:主婦の友社

著書:最後の講義 映画とはフィロソフィー

講師:大林宣彦


追記:2020年4月10日に長い闘病生活の末亡くなられた大林宣彦さんのご冥

   福をお祈りします。

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