詩と掌編小説

入間しゅか

第1話詩


さざなみは地球の歌声

悲しいと海に行きたくなる

涙を流して歌声に包まれたい




しょうめい、歌


誰もがステージに立ち

照明にてらされる


誰でもない何者かに

なりたがり


存在の証明を

叫び歌う


観客席の私は

君たちの友ではない


だから、叫ばなくていい

君だけの歌を聴かせて




たわごとを

つらつら記す

筆つきに

文字の行き先

知る由もなし


文字を書く手か

書かれた文字か


どちらが意味を託したか



愛が影を落とす


体かさねた夜に

忍び寄る虚しさに

冷たくない雪を探す


埋まらない悲しみ捨てる時



正月俳句たち


普段より早く目が覚めて食うおせち


今年こそ 毎年願って テレビ見る


新年の 挨拶すます 通知たち


紅白を 観ずに終わって はじまった


笑っては いけない人と 観てる人


初日の出 太陽だって 浮かれるさ




眩しくて目を細めた時のまぶたの裏の熱に今日一日を潤す



故異


私がした意地悪は故意ではなくなった


あなたの匂いに含まれる成分が恋をするのに十分異質だったから


私が「来い」と願ったのはあなただったのか


濃いきりのかかる中

答えのない問いを彷徨う





思い出の燃焼に費やした分だけ、灰と化した記憶に花束を捧げる




夜が更けるように冬が来た


セミのぬけがらを見つけた時

私は思った。


あ、夏の忘れ物だ。


セミなんてとっくにいなくなった。

虫の音が聞こえないことすら

意識していなかった私は

すっかり寒空に誤魔化されていたんだな。




夕日


夢中にかけた

青春は宇宙だ


垢抜けても

目一杯駆け抜けた

日々は永遠だ


今となっては

普通に慣れた

ささくれだった

成れの果て


欠けたネイルに

気分が滅入る


もう戻らない過去に

言い訳を探す


沈んでいく夕日は

残酷に夜を振りかざす



走る


走る

走る走る

走る


走る

走る走る

走る


走る


走る


ああ、気持ちいい



無題


‪寒空の隙間に光を見つけて‬

‪アセビが咲いていた‬

‪花のひとつひとつが‬

‪愛らしい笑顔にみえる‬


‪私も笑顔でいれたなら‬


‪曇り空には‬

‪飛行機が喚く‬

‪空が狭いと叫んでる‬


‪私も声が出せたなら‬


‪生きながらにして腐るつぼみ‬

‪産声をあげそこね‬

‪綻びだけがよりそった‬


‪私も上手くいきれたら‬



言い訳


正当化したかったのは

僕の劣等感

蔑ろにしたのは

僕の本音

優しいだなんていわないでくれ

僕はただ一人が怖かったんだ


肌寒い午後


これだって立派な愛だと

言い聞かせた

聞き分けのない僕の言い訳



私がいなくなった部屋で


私がいなくなった部屋で

水槽の金魚たちは

事も無げに漂っていた


私がいなくなった部屋で

床に脱ぎ散らかした洋服が

好き勝手にポーズした



私がいなくなった部屋で

読みふるした漫画が

堆い斜塔を築いていた


私がいなくなった部屋で

開け放たれた窓から

風が優しく踊ってた


私がいなくなった部屋で

私の抜け殻は泣いているのか


私がいなくなった部屋で

行き場をなくした影が

眠たげに背を伸ばした



食事


血と汗と

涙飲みほし

神頼み


叶えたまえを

口癖に


しこたま食った

辛酸の味

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