第16話 流派不明・チャーミング王子

 今回は読者の皆様に不思議の国の成り立ちについてご説明しましょう。

 はるか昔、グリム大陸では苦難の時代であた黄昏の時代から人々が脱却しようとしておりました。

 この黄昏の時代から現代への過渡期において、力ある国は次々と他の国を征服して巨大化していきました。

 

 そんな中、ベアトリクス家、ファリール家、リース家の女王たちは自分たちの国を一つにまとめようとしていました。どの女王の国も小さく、このままでは大国に征服されてしまうからです。

 そしてどの王家が新しい国の治めるのにふさわしいか、女王たちの決闘で決めることにしたのです。これは大国の侵略を退けるためには人々に力を示すためでありました。

 

 三人の女王たちは武闘姫プリンセスであり、激しい戦いの末、勝利したのはベアトリクス家の女王でした。

 ベアトリクス家は王族の宗家となり、ファリール家とリース家は分家として国を支えることになりました。

 こうして不思議の国が誕生したのです。

 

 それから不思議の国の2代目の女王を決める時が来ました。

 この頃は砂漠の国、華の国、日之出の国の三大国がグリム大陸の覇権を争っており、同時に神代の遺跡を数多く有する不思議の国を侵略しようと狙っていました。

 幸いにも不思議の国では神代の遺跡が数多く発見されており、そこから得られた遺産の力を使って、三大国の侵略を防いでいました。

 

 それでも代替わりした女王が弱い人であったら、あっという間に三大国のいずれかに征服されてしまいます。

 ベアトリクス女王は次の女王も最強の人物がなるべきと考えました。

 そこで最強の武闘姫プリンセスを決める武闘会を開き、優勝者を次の女王にすると国中に広めました。

 これが今日まで伝わる武闘会の始まりでした。

 

 身分に関わらず様々な武闘姫プリンセスが武闘会に参加し、ついに最強の武闘姫プリンセスが決まりました。

 その武闘姫プリンセスは前女王の第一王子と結婚し、ベアトリクス家の一員となり、二代目女王として不思議の国を立派に治めました。

 それから二十年に一度は武闘会が行われ、優勝者は先代女王の王子と結婚し、ベアトリクス家の血筋を次の代に残していきました。

 

 それから月日が流れ、第19回武闘会に優勝したアレクシアという武闘姫プリンセスは、先代女王の王子と結婚し、ベアトリクス家の一員と同時に女王となりました。

 アレクシアは新女王として国を導いていくこともさることながら、ベアトリクス家の跡継ぎを出産することも強く期待されていました。

 

 それから無事に第一子、第二子と子宝に恵まれますが、二人の子供はどちらも男の子ではなく女の子でした。

 それからアレクシアは三人目の子供を宿します。しかし直後にアレクシアの夫が病でなくなってしまいました。

 

 もし生まれてくる三人目の子供が男の子でなかった場合、ベアトリクス家は分家に格下げされ、代わりにファリール家かリース家が宗家となり、そこの王子が次の女王と結婚します。

 まさにベアトリクス家の危機でしたが、幸いにも三人目の子供は待望の男の子でした。チャーミングと名付けられたその王子は国一番の美男子と言われるほどまでに成長します。


 それこそ現在開かれている第20回武闘会ではチャーミング王子と結婚したいがために参加している武闘姫プリンセスが少なからずいるほどです。

 そんなふうに大勢から慕われるチャーミング王子は秘密を抱えていました。

 その秘密はチャーミング王子が生まれた時からあるもので、母であるアレクシア女王も厳しく隠していました。それこそ、今はまだ読者の皆様にすら開かせない秘密なのです。

 

 とにかくその秘密を隠し続けることでチャーミング王子の心が蝕まれ、まだ10歳にも満たないうちから、暗い虚無に支配されてしまいました。

 チャーミング王子は民衆の前に出る時、決まって爽やかな笑みを浮かべます。しかし、その心の内側には何もありませんでした。自分はしょせん政治の都合で良いように使われる人形に過ぎないとした、虚ろの表情なのです。

 

 チャーミング王子の虚無に気づくものはほとんどいませんでした。実の母であるアレクシア女王ですら。彼女たちにとって、チャーミング王子はベアトリクス家の血統を存続させる道具に過ぎないからです。

 ですが唯一、チャーミング王子を個人として見て、その虚無を憂いている人がいました。

 

 その人の名はサンドリヨン。我らが主人公、シンデレラの母親でした。

 彼女は第19回武闘会の準優勝者である実績を買われ、チャーミング王子の教育係を努めていました。

 

「チャーミング王子、あなたにはかけがえのない才能が宿っています。その才能が開花すれば、あなたは政治の人形という立場に甘んじる必要はないでしょう」

 

 教育係という立場故に、サンドリヨンはチャーミング王子の隠された才能に気づきました。

 そしてベアトリクス女王や他の側近たちに気づかれぬよう、チャーミング王子の才能を鍛え上げたのです。

 

「僕を鍛えてくれたのは感謝する。その気になれば、誰にも束縛されない本当の自由を得られるだろう。でも、それが何だって言うんだい?」


 しかしそれでもチャーミング王子の虚無は癒やされませんでした。

 

「この才能は僕一人が持っているだけじゃ何の意味もないじゃないか。僕には相手が必要だ。僕と同じ才能を持つふさわしい相手が。それはあなたも分かっているはずだ」


 チャーミング王子にとってこの才能は自由を得ると同時に、自らを世界から孤立させるものでもありました。

 結局は孤独であることには変わりない。自由と安息。それを得るためには、チャーミング王子と同じ才能を持つパートナーが必要でした。

 

「いいえ、相手ならいます。私の娘であるシンデレラがそうです。親の贔屓目かもしれませんが、チャーミング王子の相手は間違いなく務まるでしょう」

「なるほど。僕の才能を育てたのは、娘のためでもあったわけだ。一人ぼっちにさせるのはかわいそうだからね」

「申し訳ありません。王子のためと言いつつ、結局は私もあなたを利用してしまった」

「構わないよ」


 その時、王子は笑みを浮かべました。これまで大衆に向けていた虚無の笑顔ではなく、血の通った感情の宿るものです。

 

「サンドリヨンは僕の才能を見つけてくれただけでなく、素敵なお姫様まで用意してくれた。利用されたとこれっぽっちも思っていないよ」


 この直後にサンドリヨンは病に倒れ、そして帰らぬ人となりました。

 それからチャーミング王子はお忍びでサンドリヨンのお墓参りに来ます。

 

「やるせないね。あなたほどの実力者も病には勝てなかったんだ」


 チャーミング王子は墓の下で眠るサンドリヨンに花を手向けた後、他人に顔を見られないようフードを深くかぶって墓場から立ち去ろうとしました。

 その時、入れ替わりでやってきたのはシンデレラでした。

 このときのチャーミング王子はサンドリヨンから話を聞いていただけで、シンデレラの顔は知りませんでした。

 

 しかしすれ違った瞬間に全て理解しました。彼女こそがシンデレラであり、そして自分にとって真のお姫様プリンセスであると。

 理由はありません。理屈もないでしょう。でも分かったのです。もしかするとシンデレラとチャーミング王子に宿る”才能”がそうさせたのかもしれません。

 

「あの」


 シンデレラがチャーミング王子を呼び止めます。

 チャーミング王子がそうであったように、シンデレラも同じものを感じたようです。

 立ち止まったチャーミング王子は思案します。このままシンデレラに振り返り、自分の秘密も才能も何もかもさらけ出してしまいたい欲求に駆られました。

 

 チャーミング王子はそのまま振り向かず、足早に立ち去っていきました。そして激しく燃え上がりかけた自分の心を鎮めようと努めます。

 今はまだその時ではありません。

 

 あの才能を持つ以上、シンデレラは間違いなく武闘会に参加するという確信が王子にありました。

 そして、武闘会を通じてシンデレラが失望と絶望を味わうことも。

 彼女の心が傷つくさまを想像してチャーミング王子はかすかに笑みを浮かべます。

 その瞬間こそが、チャーミング王子にとってシンデレラに会う最高の瞬間でした。

 

 その時、シンデレラは自分なしでは生きていけないと理解するとチャーミング王子は確信していました。その根拠は唯一つ。チャーミング王子もまたシンデレラなしでは生きていけないからです。

 

 ああ、何ということでしょうか。王子は自分の心が救われる術を見つけていましたが、すでに手遅れだったのです。長く虚無に囚われていたために、もはや王子の心は不可逆の歪みを抱えていたのです。

 

 チャーミング王子は、自分とシンデレラが結ばれたその時、この国はめちゃくちゃになるだろうと思っていました。でも、王子にとってそれは全くの無関心でした。

 もし、王子の秘密が秘密とされなければ、こんなことにはならなかったでしょう。

 

 そう遠くない将来、チャーミング王子の秘密を隠そうとしたアレクシア女王とその側近たちは後悔するでしょう。こんなことになるくらいならば、ベアトリクス家が分家に格落ちするほうが良かったと。

 


 武闘会の期間も残り1週間となり、勝ち残った武闘姫プリンセスは一つでも多くのドレス・ストーンを手に入れるべく奔走していました。

 しかし、今だドレス・ストーンを一つも手に入れてないどころか、一度も戦ってすらいない武闘姫プリンセスがいました。

 シャーリー・マルタンは、マルタン家が人目を避けたいときに利用する、秘密の別荘で優雅に過ごしていました。そこからは微塵も焦りを感じられません。

 

「そろそろ退屈になってきたわ。することと言えば、あなたとのおしゃべりだけだもの」


 シャーリーは鳥かごにいる自分のハピネスに話しかけます。

 

「まあまあ、そう言わずに。じっとしているだけで女王様になれるんだから我慢しないと」

「分かっているわ」


 シャーリーはため息を漏らします。

 遡ること2ヶ月前。現女王であるアレクシア女王は密かにシャーリーに接触しました。

 

「私が提示する二つの条件を飲めば、武闘会においてあなたを優勝させます」

「その条件とは?」

「一つは女王になった後、政治について全て私の指示通りに行動すること」


 その条件はシャーリーにとっても予想していたものでした。

 今の女王が、代替わりした後も実権を維持するために、傀儡の武闘姫プリンセスを優勝させようとする。それが武闘会のたびに毎回行われているのは、ある程度くらいの高い貴族なら誰もが知っていることです。

 

「それは望むところです。私を女王にしてくれるならば何だってしてみせましょう」


 シャーリーにとって欲しいのは実権ではなく名誉でした。国をこういう風に良くしたいといった望みは一切なく、ただひたすらにこの国における最高の名声が欲しかったのです。

 貴族という位を持ちながらも、マルタン家程度では歴史に名前は残りません。適度に同格な他家の貴族に嫁ぎ、跡継ぎを生んでそれでおしまい。

 

 冗談じゃないとシャーリーは思いました。

 彼女はどこにでもいる貴族の娘で終わりたくありませんでした。他人の言うことを聞くだけの傀儡であろうとも、自分の名前が歴史に残るのであればそれで構わないというのがシャーリーという女性でした。

 

「それで、2つ目の条件は?」

「それはある秘密を守ること。少しでも叛意を見せたのなら、あなたはもちろんのこと、マルタン家の一族郎党を皆殺しにするわ」


 女王から発せられた殺気にシャーリーは気圧されました。すでに全盛期の力はないとはいえ、彼女はこの国で唯一宮廷武術10段の持ち主であり、前回の武闘会で優勝した人なのです。

 

「も、もちろんです。私は女王陛下に忠誠を誓います。決して叛意など持ちません」

「……」


 その言葉は嘘でないか確かめるように、女王はシャーリーをじろりとにらみます。

 シャーリーは女王が自分の首をチョップではねる様を想像してしまいました。

 

「よろしい。あなたとは良い関係を築けそうですね」


 女王がニコリと笑い、シャーリーはようやく緊張から開放されました。

 

「それで、守るべき秘密というのは?」

「それはチャーミングについての秘密よ。これは何度も言うけれど、漏らしたら命はないと思いなさい」


 そうして女王はチャーミング王子の秘密を語ります。

 

「まさか、チャーミング様にそんな秘密が」


 シャーリーも他の女子同様に王子との結婚を夢見たことがあります。それだけに王子の秘密はショッキングな内容でした。

 

「しかし、ならば跡継ぎはどうなさるおつもりですか?」

「それには問題ないわ。神代の遺産の力を使えば、あなたはチャーミングの子を産めるわ」

「それは……」


 シャーリーは僅かな抵抗感を見せました。チャーミングの秘密を知ってしまった以上、王子の子を宿すのを素直に受け入れられません。

 

「不服かしら?」

「い、いえ、とんでもありません。女王陛下のためにこの身を捧げる覚悟です!」


 後戻りできない一線を越えたシャーリーの心に僅かな後悔が生まれます。

 単なる貴族の娘の一人として数えられるだけの人生で良いのかと思うと、シャーリーはこのまま突き進むしかないと腹をくくりました。

 それから武闘会が開かれると同時に、シャーリーはマルタン家の秘密別荘に身を隠したのです。

 

 ドレス・ストーンを集めるのは、女王の息がかかった武闘姫プリンセスたちの役目です。

 シャーリーの流派は宮廷武術であり、その段位は7段です。参加者の中では上位と言えるだけの実力を持ち合わせていますが、何事も万が一というのがあります。

 途中で敗退したら計画が水の泡です。そのためにもシャーリーは身を隠す必要がありました。

 

「シャーリーお嬢様」


 現れたのはシャーリーが自分の世話をさせるために連れてきたメイドでした。有能で貝よりも口が固い、信頼できる使用人です。

 

「どうしたの?」

「チャーミング王子がお見えになりました」

「すぐ行くわ」


 いったい何事かと思いながらも、シャーリーはすぐに王子が待つ応接室へ向かいました。

 

「やあシャーリー、元気にしているかい?」

「王子もご機嫌麗しく……それで本日はどのようなご用件で?」

「うん。ちょっとね、君には武闘会から退場してもらおうと思って」


 最初、チャーミング王子が何を言っているのか分かりませんでした。でも、少し遅れて言葉の意味を理解します。

 

「女王陛下は私を切るおつもりですか!?」

「いや、あの人はそんなつもりないよ。今更別の人に乗り換えても、秘密を知る人を増やすだけだからね」

「ではなぜ!?」

「僕の個人的な都合さ。そろそろ君が目障りになってきた」


 王子から敵意が放たれます。それを受けたシャーリーは反射的にドレス・ストーンを掴みました。

 

「ドレス・アップ!」


 武闘姫プリンセスに変身したシャーリーは構えます。

 

「いったい何のために私を蹴落とそうとするのですか」

「僕の本当のお姫様プリンセスのためさ。その人は、君と違って正々堂々と戦って勝ち残っている。僕はそういう人と結ばれたいんだ。そして何より……」


 チャーミング王子は狂気を含んだ笑みを浮かべながら言いました。

 

「僕は君が大嫌いなんだよ」


 衝撃。

 それがシャーリーを襲いました。彼女の体は砲弾のようにふっとばされ、壁を何枚も突き破って外へ飛び出していったのです。

 数秒か、あるいは数分か。少しだけ気を失っていたシャーリーが目覚めると、彼女を見下ろすチャーミング王子の姿がありました。

 

「そんな……私がたった一撃で……」

「いやいや、一撃だなんてとんでもない。君はまがい物だけどそれでも武闘姫プリンセスだ。武闘礼装ドレスを身に付けずに一撃で倒せるわけないじゃないか」


 チャーミング王子はニコニコと笑みを浮かべます。

 

「5回だよ。君を叩きのめすのに、僕は5回も拳を打ち込んだ」

「嘘……」


 シャーリーが信じられないのも無理はありません。彼女は間違いなく一度しか打撃を感じていなかったからです。

 同時に、チャーミング王子の言葉もまた事実でした。

 そう! あまりの打撃の速さにシャーリーは5連撃を1撃としか感じられなかったのです!

 

「それじゃ、君のドレス・ストーンは没収するよ」


 武闘会参加者は自分の名義で使用するドレス・ストーンを登録します。もしこれを失った場合、代わりのドレス・ストーンをいくら用意しても失格となります。


「ま、まって」


 チャーミング王子はシャーリーの首にチョップを当てて気絶させた後、無慈悲に彼女からドレス・ストーンを奪いました。

 

「ああ、そんな! なんてことを」


 現れたのは青ざめた顔をした宮廷魔法使いです。

 

「殿下! 今年は周辺三国から強力な武闘姫プリンセスが参加しているのですよ! シャーリー様を優勝させる女王陛下の計画は、それら侵略者たちから国を守るという意味もあったはずです」

「そう」


 チャーミング王子はまるで他人事でした。

 

「その人達も対した力はないよ。神代に比べたら、現代の武闘姫プリンセスはみんなまがい物だ。武闘会に参加者の中で本物と言えるのはシンデレラだけさ」

「ですが……」


 チャーミング王子は宮廷魔法使いに向かって、心底面倒そうな顔を向けました。

 

「だったら他の武闘姫プリンセスをけしかけて倒せばいい。そのほうがよっぽど確実だ。かぐや姫はそもそも侵略者を倒すために武闘会に参加している。アリスも国のために戦ってくれるだろう。そうでなくとも、僕がシンデレラにやったようにハピネスを使って侵略者に強豪をぶつければいい」

「……わかりました。ですが、シャーリー様を倒した件については、女王陛下が黙っておられませんよ」


 チャーミング王子はそれがどうしたと言わんばかりに肩をすくめます。

 

「母上は何も出来ないよ。僕の存在そのものがあの人にとっての弱みだ。加えて、20年も政治にかかりっきりになったせいで、全盛期の覇気はとうに失われている。ああいや、そもそもあの人に覇気なんてものはそもそも無いか」

「それは一体どういう?」

「知らないのかい? 母上はお情けで女王にさせてもらったんだよ。第19回武闘会の最後の戦いにおいてサンドリヨンはわざと母上に負けたんだ」


 その事実に宮廷魔法使いは驚愕します。

 

「八百長があったというのですか?!」

「というよりもサンドリヨンはそもそも女王になるつもりはなかった。武闘会に参加したのは、自分にふさわしいライバルを探すためだったから、最後の戦いでわざと負けて、自分がそれまで集めていたドレス・ストーンを渡すつもりだった。その相手がたまたま母上だったのさ」


 その時、ふと王子の表情が代わりました。そこにはシンデレラに対する異様な執着や、自分の人生に対する無気力さはありません。

 

「かわいそうな人だよ、サンドリヨンは。第19回武闘会でライバルは見つからず、結局死ぬまで心は満たされなかった。その苦しみを僕は痛いほどよく分かる。だからせめて、託された願いを叶えてあげないと」


 チャーミング王子は実の母であるアレクシア女王以上に、教育係のサンドリヨンを想っていました。

 それは虚無によって狂気に歪んだ心の中に唯一残っている、チャーミング王子の良心だったのです。

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