第732話 翼覆嫗煦
特定の宗教とは距離を置いている大河だが、
懇意にしている神社には
また、教会やシナゴーグ、モスクにも度々顔を見せては、教典を学びに行ったりしている。
万和6(1581)年7月3日。
今日は、朝から京都新城の隣に
「美しいな」
「でしょう?」
腕に絡むヨハンナは、自慢げだ。
2人が見上げているのは、欧州から届けられた宗教画。
悪魔との対峙や最後の
「凄い大作だな?」
「欧州中の王室お抱えの画家が集まって創って下さりました」
「……素晴らしい」
絵心も無く信者でも無い大河だが、力作なのは分かる。
宗教画と同封された名簿には、
このことからも相当な力の入れ具合なことが分かるだろう。
「これはいつお披露目するんだ?」
「次の礼拝日です」
ヨハンナの傍に控えていたマリアが答えた。
メモ帳を携え、眼鏡をかけた
「信者は相当、喜ぶだろうな」
大河はヨハンナ、マリアを抱き締める。
「ありがとうな。信者でもないのに見せてくれて?」
「全然♡」
「いえいえ♡」
2人の頬に接吻した後、大河は長椅子に座った。
一礼後、聖書を開いた。
「では、説法を始めさせて頂きます―――」
宗教画鑑賞だけでは流石に失礼なので説法を聞いて、祈り、相応の寄付をしてから帰るのが大河なりの
当然、他の宗教でも同様である。
「「「……」」」
3人は、珠の説法を黙って聞き入る。
こうして大河の教会訪問は、静かに進むのであった。
教会を
「待ってたよ♡」
ラナが迎えて抱き着く。
「ありがとう。招待してくれて」
「全然。家族だしね♡」
今回、久々に大使館に入ったのは、ラナの手料理を食べる為だ。
京都新城に居ると、大家族な分、料理は侍女の時もあれば、妻が直々に作る場合もある。
それでも、王女自らが調理するのは、あまり無い。
「はい。ロコモコ丼♡」
「おお、旨そうだ」
白ご飯の上に目玉焼きとハンバーグの乗ったそれに、大河は喜ぶ。
京都新城では、栄養士が居る為、カロリーを重視してロコモコ丼のような高カロリーな食べ物は中々出にくい。
「『旨そう』じゃなくて『旨い』のよ」
「ああ、
ラナは大河の膝に乗ると、食事介助を始める。
「はい、あ~ん♡」
まるで子供扱いだ。
しかし、大河は甘んじて受け入れる。
山城真田家でのパワーバランスは、圧倒的に妻側にあるのだ。
逆らっても良いことは何一つ無い。
「ん?」
「どった?」
「……
浮気性のある男だと、こういう場合、嘘や言い訳をするのだが、妻には誠実な大河は正直に言う。
「さっきまで教会に居たんだよ。説法を聞きにね」
「私が頑張って準備している間に?」
「
「もー……」
相手が自分よりも立場が上なヨハンナなので、流石にラナも強くは言えない。
「その代わり、ここでは長時間過ごすから」
「それはそれで聖下に申し訳ないよ。聖下は?」
「教会に居るよ。珠とマリアと一緒にね。帰る時、また合流するけど」
「じゃあ、聖下の為に交流は短めにしないとね」
「いいよ。そこまで配慮しなくても―――」
「私は聖下が好きだから。聖下が幸せならそれで―――」
「いいや。ラナも幸せにならないといけない」
ラナの言葉を遮って大河は、彼女を抱き締める。
「サナダ?」
「愛してる」
大河は見詰めると、ラナに濃厚な接吻を行うのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます