第260話 右文左武
京都新城の敷地内には、
・浅井家
・上杉家
・島津家
等、大河に嫁入りした各家の屋敷がある。
それらは江戸時代で言う所の藩邸の様な役割を担っており、上洛した地方の戦国武将が泊まったり、長期出張で滞在した場合に使用される事が多い。
当然、これらは人質の役割も暗に意味しているのだが、名君の呼び声高い大河の居城内という事なので、意外にも人気がある。
浅井家の屋敷に入ると、旧家臣団が、玄関で平服していた。
「大将様の御成り~」
相撲の呼び出しの様な声と共に和太鼓が打ち鳴らされ、歓迎の広州踊りを披露。
お市達も釣られて踊る。
キャッキャッと、嬉しそうだ。
唯一、外様な大河は、手拍子で合わすしかない。
「今日、御訪問されると聞いて急いで御準備した次第です。ごゆるりと御寛ぎ下さい」
家臣団は、浅井氏滅亡の際に共に崩壊した為、主要人物は残っていない。
史実で語られている有名人は、以下の通り(*1)。
……
・
浅井三将の1人。
浅井亮政、久政、長政の3代に仕えた重臣。
浅井家が織田信長と敵対して以降、羽柴秀吉とも戦い、その実力を賞賛された。
小谷城が落城した際に、討死。
・
浅井三将の1人。
綱親同様、浅井氏3代に仕えた重臣。
浅井家代々当主からの信任熱く、小谷城の中には『赤尾曲輪』なる、清綱の住まいもあった。
浅井家滅亡時に討死又は、処刑された。
・
浅井三将の1人。
久政の代から浅井家に仕え、主要な合戦でも活躍していた様だが、生没年等も含め、詳しい事績や人物像も分かっていない。
・磯野員昌(? ~1578?)
浅井家を代表する猛将。
姉川の戦いでは、信長の本陣を目指し突撃。
13段構えだった織田軍の陣中の11段までを崩す大活躍を見せた。
柴田勝家、羽柴秀吉、池田恒興等、織田家を代表する武将を次々と蹴散らしていったこの伝説は『員昌の姉川十一段崩し』と呼ばれている。
浅井家滅亡後は織田家に仕えるも、信長の怒りを買い追放された。
・
長政の
長政からの信頼も、非常に厚かったと言われている。
姉川の戦いで、竹中半兵衛の弟(竹中重矩)と激突し、討死。
・
浅井長政の家臣として姉川の戦い等でも活躍したが、小谷城落城時に信長に寝返った武将。
織田家の家臣として活躍するが、本能寺の変で信長が討たれると明智光秀に味方した。
その後、羽柴秀吉に光秀が破れ、一族諸共追討された。
・
元々は比叡山の僧侶であったが、後に長政の家臣となった人物。
浅井家と織田家の溝が深まると、羽柴秀吉の調略に応じ寝返り。
その後も秀吉家臣として活躍し、九州征伐では猛将・島津家久を破る等の活躍を見せた。
・渡辺了 《わたなべさとる》(1562~1640)
阿閉貞征に仕えた武将。
武勇に優れ”槍の勘兵衛”と称された。
後に信長の四男で秀吉の養子となった秀勝に仕え、賤ケ岳の戦い等でも活躍。
関ケ原の戦いでは西軍に味方し、居城の大和郡山城を守備。
……
この異世界では、雨森清貞、磯野員昌、阿閉貞征、宮部継潤、渡辺了の5人が存命だが、家臣団の
彼以外は、裏切り者や他家に仕官した為、今更、浅井家に帰る事は出来ない。
「大将様のお陰で浅井家は、御覧の通り、復活出来ました」
21歳で浅井家の事実上の長なのは、荷が重い事だろう。
現代感覚だと大学3年生の年齢で近江国を管理しなければならないのだ。
「有難う。楽しませてもらうよ」
作り笑顔で、大河は、4人と共に私室に入る。
浅井家を復活を許し、旧領を回復させた大河を彼等は、教祖の様に崇めている。
老婆は手を合わせ、子供達も緊張した面持ちだ。
大河としては、あくまでも妻達の願いを叶えただけであって、彼等の事など一切考えていなかったが、これは、棚からぼた餅であろう。
民主主義には、民の支持が必要不可欠。
一揆等起こされたら、経済的でも治安面でも短所しかない。
言わずもがな、アプト等侍女の他、小太郎達も一緒に来ている。
然し、正妻とは当然の様に階級が違う為、隣室で待機だ。
一応、浅井家は、親類縁者となった訳だが、彼女達は武装を解かない。
大河が近衛大将として、又、山城真田家当主として当然の事だろう。
「真田様、長男ですよ」
「あい~」
猿夜叉丸は、大河に会釈。
生後4か月だというのに、天才だ(親馬鹿)。
養子に出した筈なのに。
会わない、と決めていたのに。
いざ、対面すると、大河もニヤニヤが止まらない。
「お父さんだよ?」
「あい」
「御免な。養子に出して」
0歳児を大人同様接しつつ、抱っこする。
「将来、浅井家を頼むな?」
「……」
大河の言葉を一言一句聞き逃さまいと、傾聴している。
「真田様、まだ赤子ですよ?」
「でも、当主だ。重荷だが、当主である以上、期待しないとな」
「……」
「猿夜叉丸、弟と妹、どっちが欲しい?」
「あい~」
「妹?」
「……」
こくりと、頷く。
「じゃあ、頑張ろうかね」
笑顔で、お初とお江を片腕で抱き寄せる。
「真田様、私は?」
「まずは、育児優先だ」
茶々の額に接吻し、愛を証明すると、
「もう……♡」
[参考文献・出典]
*1:日本の白歴史
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