第13話 他人の異常は自分の定番。Det är onormalt för andra, men normalt för mig.
食べ物の話は、文化の違いがよくわかるトピックだよね。僕たちの間でもよく話題になるよ。
僕はフィンランド人だけど、サルミアッキ(訳者注:リコリスより塩味が強くアンモニア臭ありのフィンランド産グミ菓子)よりもリコリス(訳者注:甘草の根のエキスで作られた欧米で人気の黒いグミ菓子)の方が好きなんだ。
でも、アキはリコリスが大嫌い。独特の薬っぽい匂いが嫌なんだって。シュールストレミングは好きなのに!日本人にはあまり人気のない味らしく、ゲームに負けた時に無理やり食べさせられる程だって。酷いね!リコリスの人権を完全に無視しているよ。あんなにおいしいのに。
しかも、僕がリコリスを食べた時は、アキは最低2時間はキスしてくれない。僕がどんなにロマンティックなムードを作っても、絶対に絶対にしてくれない。ああ、なんてかわいそうな僕。
反対に、僕は甘い豆のスイーツが苦手だ。まあ、普段から甘いものは得意じゃないんだけど、甘い豆っていうのが特別苦手なんだ。でも多分、これは僕だけじゃないと思う。キドニービーンズに似たあずきという豆を砂糖で煮たペーストを粘りのある米のグミで包んだ〝モチ〟(訳者注:海外では大福のこともモチと呼ぶ)っていう日本のスイーツを食べたことがあるかな?
ちょっと想像しにくい食感と味で、僕はすごく苦手なんだ。すごく柔らかくて、塩味って通常頭が認識してる豆のペーストが予想外に甘いから、脳がおかしくなってバグを起こす感じかな。
でもアキは、最期の晩餐にはモチを食べたいっていつも言うんだ。最期の晩餐なんて、そんなものは一生考えなくて良いよハニー。
オッカルドッカル。(訳者注:夫妻間でOKの意)せめて晩餐はデザートだけじゃなくてメインの食事もしようよ。さすがに僕は最期の晩餐にリコリスは選ばないし。多分アキのモチに対する愛は、僕への愛と同じくらい深いんだ。…じゃあ、僕ってモチと一緒ってこと?ええ?
まあとにかく。そんなわけで。奇跡的に僕たちは好きなスイーツは意見が分かれる。これもやっぱり生まれ育った環境や文化の影響だよね。
例えば、スウェーデンでクリスマスのメニューって言ったら、ニシンの酢漬け、ロースハム、ローストターキー、僕の得意料理のヤンソン氏の誘惑あたりが定番だけど、日本では違うんだ。日本でもクリスマスはお祝いをするけど、ちょっとその仕方が変わってる。皆聞いて驚かないでよ。
日本では、クリスマスにケンタッキーフライドチキンを買って食べるのが伝統なんだって!しかもちゃんと予約して、お店に並んで買うそうだ。いやいや、嘘じゃないから。その証拠に、インターネットのニュースもちゃんと見たんだから。すごいでしょ!
そして、アキも何で僕が驚いてるのかわからないみたい。ターキーの代わりにチキン。しかもケンタッキーだなんて…。確かにスウェーデンにはないお店だけれど、それにしてもさ。(訳者注:ヨウコ氏は知らないようですが、瑞全国で9店舗あります)日本にはもっとおいしいものがいっぱいあるのに、何で一年で一番大事なクリスマスにケンタッキーのチキンを食べるのかな。クリスチャンが少ないから、クリスマスをそんなに大事にしてないのかな?普通の日に食べてもいいと思うんだけど。
でも日本人から見たら、スウェーデン人の毎年同じメニューのクリスマスだって、びっくりしちゃうかもしれないね。クリスマスメニューばかりは日本もスウェーデンもお互いを笑えないかもしれない。
しかもみんなで集まって食べる料理なんて、クリスマスだけじゃなくて復活祭や夏至祭も全て同じメニューなんだもの。一年中パーティのメニューが一緒だったら、ちょっと飽きるのもわかる気がするよ。
だけどスウェーデン人はあえて、毎年同じ伝統を繰り返すのが面白いと思ってる人種なんだ。ちょっと変わってるかな。安易な変化よりも、頑張って伝統を守る面白さの方が勝っている、と言うのかな。
全く同じシーンを毎年繰り返すドナルドダックのTVアニメ(訳者注:瑞ではなぜかミッキーよりドナルドが人気)を家族で観るって鉄板の習慣も、他の国の人にも理解してもらえないかもしれない。でも、日本でも年末にいつも同じ内容のリベンジ歴史ドラマを毎年放送してるって聞いた。(訳者注:忠臣蔵?)スウェーデンと日本の共通点をまた見つけたよ。嬉しいね!意外にもアキも時々観ていたのだとか。お決まりのパターンは見てて安心するんだって。
というわけで、今年のクリスマスもアキは日本の歴史ドラマの代わりに、マンネリのドナルドアニメを観ることになりそうだ。時々僕がドナルドのセリフを完コピして、アキを呆れさせるって伝統行事もそろそろ定番になりそうかな。
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