僕の日本人妻観察日記(和訳)
倉橋刀心
第1話 観察日記の概要 Om observationsdagboken
僕の名前は、ヨウコ。Joukoと書く。スウェーデン人の君なら知っているだろうが、日本では女性の名前だ。世界一有名な日本人ヨーコ・オノの様に。しかしフィンランドでは一般的な男性名である。僕はフィンランド生まれのスウェーデン人だ。苗字は、申し訳ないが控えさせてほしい。
僕の妻はアキと言う日本人女性だ。僕たちは今ストックホルムで暮らしている。
大抵の人は僕の妻が日本人だってわかると、好奇心いっぱいの顔で聞いてくる。どこで知り合ったの?カルチャーギャップって感じる?日本人って毎日お寿司食べるの?
日本は、ヨーロッパの片隅に住んでる人間から見れば謎に満ちた国だと感じるよね。僕も例に漏れずそうだった。スウェーデン人は普段プライベートに踏み込む様な野暮なことはしないけど、日本のこととなるとその冷静さを失くしてしまうんだ。それほど、アジアの不思議な国に興味津々なんだよね。
僕は10年前アキと出会い、あっという間に恋に落ちた。その時アキはまだ20歳。それはそれは生意気で、面倒臭くて可愛かった。世界最強と言われるスウェーデン人女性に正直疲れていた僕は、アキとの恋愛に夢中になってしまったんだ。
アキは、他の日本人ともかなり違っていた。以前はよく仕事で日本に行ったけれど、そうそう彼女みたいな人はいなかった。どう変わってるのかは、僕が一生かけて分析すべき最重要課題だ。結果はここで少しずつ紹介していけたらと思う。
とにかくアキは僕の熱烈アタックに落ち、5年前スウェーデンに来てくれた。日本に住んでいるご両親や兄弟、友達を全て日本に残して。
そこは本当に感謝している。僕だったら一人で知らない国、ましてや言葉も通じない国に住むなんて芸当、絶対にできないだろう。
アキは、キヨミズテンプルからジャンプしたんだよと笑う。意味はよく分からないけど、アキは僕と一緒に新しい人生を歩むことを選んでくれた。これはきっと、僕にとって人生で一番嬉しかったことじゃないかと思ってる。
こちらに来てからのアキは、政府の移民プログラムに則ってスウェーデン語の勉強を毎日泣きながらこなし、今では悪態をつけるまでになった。
アキがあんなに可愛い顔をして〝バカ頭野郎〟とか〝地獄に落ちろ〟とか拙い発音で怒っているのを見ると、顔中ベロベロに舐め尽くしたい衝動に駆られる。確実に殺されるから絶対しないし、想像してることさえも絶対に言わないけどね。僕はリスク管理はちゃんとしてる方なんだ。
とにかく、この世界一可愛くて変わった日本人妻から僕は片時も目が離せない。だけど時々、僕の意思に反して彼女が日本に単身帰国しなければならない時がある。家族の行事や友達との交流、大事な手続きのためだ。そんな時は、僕は連れて行ってもらえない。でも彼女を待っている間、この観察日記を夜な夜な読み返して、寂しい思いを少しでも紛らわせようというわけだ。僕ってやっぱり天才だね。
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