第17話 ~ふらふらココロ/めらめらココロ~

弘貴の告白の様子を見ていた人物がいた。ヒロキだ。玄関に気配を感じたヒロキはキッチンの窓を少し開けてみたところ、弘貴が告白しているところだった。人の告白を見るのはよくないことだ。わかっている。だが、弘貴の恋愛を応援している以上、見守らずにはいられない。しかし、見守りながらも複雑になっていく感情。これが一体何なのか、ヒロキにはわからなかった。

「…ヒロキ、何しているの?キッチンの窓開けっ放しにして。」

「はっ…!いや、覗いていたわけじゃないんだよ?人の気配がしたから窓を開けてみたら、ちょうど弘貴クンが優海を抱きしめていたところだったから、これはもしかしたらと思って…。」

ふと視線を優海に向けると、優海の視線はジト~と疑り深いものであった。

「…ごめんなさい。覗きました…。」

人期は目を潤ませてシュンとした表情で謝った。優海は、そんなヒロキの表情も『カワイイ♡』と思ってしまう。

「コホン!さ、最初から素直に謝ればいいのよ。まあ、見ていた通りだけど、弘貴に告白された。」

「どうして、すぐに返事しなかったの?」

「突然のことだったから、気持ちの整理が出来なくて…。」

「まあ、それもそうだよね。僕から言えることは、自分の心に正直になるんだよ。ただ、それだけ。」

「ありがとう。ヒロキ。」


優海はベッドの中で弘貴のことを考えていた。告白の返事を決めるためだ。

「(自分の心に正直になれか…。弘貴と一緒にいると確かに楽しいし、気をつかわなくていいから楽だし、心の底から落ち着くし、安心する。今日のあの時も自分は一人ぼっちなんじゃないかって急に不安になったんだよね。その時、弘貴が見つけてくれて…。えっと…。)」

考えているうちに優海は深い眠りに落ちていった。


次の日、優海はスマートフォンのアラームが鳴る前に目が覚めた。いつもなら、けたたましい音が部屋中に響き渡る中で目が覚めるので、この現象はとても珍しいことである。

「う~ん、早いけど、朝ご飯食べようかな。」

朝ご飯をもぐもぐしていると、ヒロキが起きてきた。正確にはスリープモードから起動したといった方が正しい。

「優海、おはよー。優海が僕より早く起きているなんて、珍しい。」

「ヒロキ、おはよう。なんか目が覚めちゃって。」

「結論は出た?」

「んっ?弘貴のこと?ううん。まだ。早く返事出さないと失礼だよね。」

「あまり焦ると、誤った結論が出てしまうかもしれないから、焦りすぎも禁物かもね。今日はどうするの?」

「う~ん。今日はファミレスに行こうかな。」

「了解。行っておいで。」

ヒロキに見送られ、ファミレスに着いた優海は、早速スケッチブックを開いた。

「(絶対にコンペに通ってみせる。キャラデザの仕事をしたいから!)」

コンペまであと三週間。自分が納得できるキャラクターを生み出すために、今まで見てきたものや、得た知識を全てつぎ込み、完成を目指していた。


デザインが一段落しふと顔上げてみると、朝より人が沢山いた。ビジネスマンや家族連れが多く見受けられたため、時間を確認したところ、時計の針は午後一時を指そうとしていた。

「もうお昼か。そういえばお腹空いちゃったなぁ~。」

注文を済ませ料理を待っていると、ふと弘貴のことが頭に浮かんだ。優海は弘貴のことを思い返してみる。

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