フォトンとニュートリノ
Phantom Cat
1
坂の傾斜が、ここから一気にきつくなる。
さあ、ラストスパートだ。
サドルから腰を上げ、私はペダルを踏みしめるタイミングに合わせて左右に車体を揺らす。
大学まで約2キロ続く、だらだらした上り坂。今のところ私をここで追い抜いた自転車は一台もない。高校3年間、往復50キロのアップダウンある道のりを毎日
私は後ろを振り返る。
あれ、今日はまだついてきてる……?
最近気付いたのだが、時々私の後を、眼鏡の男の人が乗った
ところが、今日に限って彼は交差点を直進してきた。そして私に猛追してくる。
とうとう勝負をかけてきたか? 上等だ。だけどここからが私の本領発揮。急坂を全力で駆け上がる。彼との差はみるみる開いていった。そして……
ゴール!
駐輪場に到着した私は久々に息を切らしていた。彼の姿は見えない。
ま、私に挑むなんて十年早いってことね。
……などと私が心の中でうそぶいた、その時。
「……!?」
例の彼が乗った自転車がふらふらしながら現れたのだ。そして私を見つけると、最後の力を振り絞ったように猛然とこちらに迫って来る。
「ひぃっ……?」
思わず小さな悲鳴を上げ、私が逃げ出そうとした、その時だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます