カクメイの花
XeON
プロローグ
第1話 プロローグ
30年程前だろうか?
魔法使いが絶滅し,王都が滅び研究学園都市が世界の支配者となったのは....
かつて王都は,100人に1人という確率で生まれてくる超能力者の研究を行うために研究特別区を設け,超能力者に対するあらゆる非人道的実験を行い,これにより多くの金と人が動いた.
王都が研究に力を入れるには理由がある.
それは魔法使いと同等の軍事力を持つ必要があるからだ.
当時 ,魔法使いは,3人いれば王都を陥落させるほどの力を持つと言われていた.
王都にしてみれば自分たちより力を持つものとの共存など考えられなかったのだろう.
しかし,魔法使いは戦争を好まず温厚であり王都との共存を望んでいた.
研究特別区創設から10年が立つ頃,王都は絶大な軍事力を持つようになっており,超能力者の増産,開発,育成及び陸海空の戦闘機の開発など大国としての地位を築いていった.
それと同時に医療,教育,民衆の生活は,豊かになり平和な日々が続いた.
この頃から王都の歯車が狂いだす....
王都は,絶大な軍事力を保持していたが,実際には,研究特別区が全権利を握っていたのだ.
軍事力,技術,金,人あらゆるものが研究特別区に集中していた.
王都がこの危機に気づいたとき全てが手遅れだった.
そう..王都と研究特別区の上下関係が逆転してしまったのだ.
早急に研究特別区の全権利を王都側に委ねるよう命令し,事態の収束を図ったが研究特別区の答えは,もちろんNOだ.
このときを境に両者の関係が悪化していったのは言うまでもない.
数年後,王都と研究特別区の両者が戦争する火種がついに撒かれた.
王都は,研究特別区が行ってきた長年の非人道的な超能力者に対する実験を公にしたのだ.
王都も非人道的実験に対しては容認していたがここにきて裏切った形になる.
それ以降,研究特別区に対する世間の目は厳しくなり,自然と金や人の出入りが少なくなった.
また,あろうことか研究特別区と同等の力を持つために王都が魔法使いと同盟を結んだという根も葉もない噂がどこからか流れていたのだ.
この事実が真実か否かは不明だが,何も行動しなければ王都に乗っ取られると危惧した研究特別区は,陸海空の軍及び数名の超能力者を王都に向かわせた.
三日後,国王の処刑が広間で行われていた.
研究特別区は圧倒的な力の差で王都を二日で陥落させたのだ.
結局 魔法使いとの同盟は,デマだったと発覚した.
しかし,勢いに乗った研究特別区は今後自分たちの脅威になるであろう魔法使いを絶滅させたのだ.
現時点での文明では研究特別区ほどの軍事力を持とうとも魔法使いには敵わなかっただろう.
なぜ勝てたのか?
答えは簡単だ.
魔法使いは,優しく,他人に危害を加えることを嫌う心の優しい種族だからだ.
親友,家族,子供が目の前で殺められようとも戦闘の意志を持たず,自分達が滅びれば世界は平和になると考え,自害した者もいたほどに優しい 否 哀れな種族なのだ.
国王が処刑されて一週間後には王都は崩壊し,研究都市が創設された.
魔法使いの件は,魔法使いらが人間に対して敵対的行動を取ったため,やむを得ず抹殺したと世間に広がり真実は闇に葬られた.
民衆の信頼を得るために表向きは超能力者に対する非人道的な実験は取りやめ,超能力者に対する人権も確立された.
また,研究都市は,大きすぎる力を持っていたため,A地区,B地区,C地区,D地区の4つの都市に権力が分散化された.
分散化されたとはいえ,これら4つの都市は,1つの都市で国と言っても過言ではない規模の力を保持し,広大な面積を持つ.
都市間でも常に技術戦争が起きているくらいだ.
これら4つの都市は繋がってはおらず各都市最低でも50㎞は離れている.
そのため,都市間の移動には飛行機や馬車が用いられている.
超能力者が他人に危害を加えず正しく教育していこうという名目で超能力者を育成する
ピーススクールは,巨大な白い外壁で覆われており,高さ200mほどの建物が壁の中に何棟か建っていた.これは,当時のC地区を一望できるほどの高さだ.
表向きこそ善良な学校であるが,実際には研究特別区時代と同様の実験を繰り返しており,超能力者と判明した子供及び生まれてきた赤ちゃんが超能力者とあれば強制的にピーススクール送りになる.
ピーススクールに送られた子供らは原則外出等は許されず,外部との接触も許されない.
家族とはもちろん会えず,ピーススクールで一生を終える.
この制度に反対する家族らは不思議と姿を消していったため,大きな社会問題とはならなかった.
ピーススクールに隔離された超能力者の数はおよそ11000人にも及んだ.
ピーススクールは11000人に対して能力値の高さを決め,これを序列によってランク付けを行った.
主に以下の要因を有する者に高い序列が与えられた.
●高い演算力が必要な能力及び科学的解明が不可能な能力を有する者
●
その他にも体の健康状態や運動能力,学習能力なども加味される.
キャパシティが4%あれば高能力者と言われ,序列100位前後に位置することが多い.
一般的にキャパシティが高い者ほど複雑な能力を扱え,キャパシティが低い者と比較して,長時間能力を扱える.
しかし,複雑な能力ほど体力の消耗が早くなり,脳にかなりの負担がかかるため脳に何らかの障害を抱える者も少なくない.
ピーススクールの研究員は,高い序列を持つ超能力者を丁寧に扱った.
なぜか? それは,希少価値が高いからだ.
対して序列の低い者は実験用モルモットのように扱われた.
ピーススクールは,超能力者同士の1対1の超能力による戦闘を認め,勝利した者に序列を上げることができる制度を用意した.
序列の低い者は,実験のモルモットにはなりたくないという一心で頻繁に戦闘が行われ,序列下位では,頻繁に入れ替わりが起きていた.
ピーススクール内で能力による格差が起きていたのだ.
さらに数年が経つ頃には,研究都市はあらゆる発展を遂げていた.
何棟にもそびえ立つ巨大ビル,無人電車,街中を巡回するロボット,ドローンなど....
軍事においても陸軍,海軍,空軍,そしてそれらを統べる中央軍が構成され,空中に浮かぶ空母,無人戦闘ロボットなど大きく進化を遂げた.
裏では,一部の研究都市サイドの富裕層らが超能力者の脳に関する研究や人間の体を変異させる
これらの研究では,他地区と比較してC地区が大きくリードしていた.
ピーススクールは,C地区の発展に大きく貢献し,多くの命も失われた.
目まぐるしく発展を続ける研究都市であったが過去最悪の大事件がピーススクールで起きた.
原因は,実験の失敗だ.
詳しいことは,上層部により隠蔽されているため不明であるが,ある1人の超能力者の少女に
このときの死者は,研究員と超能力者を合わせて約2000人に及んだ.
また,このとき生き残った超能力者10000人のうち約3000人は混乱に乗じてピーススクールから脱走した.
この事件後,数々の超能力者に対する問題が公にされ,ピーススクールは解体を迫られた.
事件の発端であるシュリムストの少女に関して知る者は少なく,超能力者によるクーデターであると片付けられた.
超能力者を自由でオープンな環境で育成し,希望者にのみ学園に通える制度を作り,超能力者にとって居心地の良い世の中になったのは最近のことだ.
一見,世の中は平和を取り戻したかのようにも思えるだろう.
しかし,人間という生き物は欲深く,恨み,憎しみ,復讐を好む.
そう簡単には平和な世の中など来るはずもない.
探究心の消えない研究員らは今も実験を行う.
各地では脱走した超能力者による反乱も度々起き復讐の連鎖は止まらない.
超能力者達は一時も研究都市を忘れたことはない.
大切な家族,親友,愛人を失い,度重なる非人道的な実験を忘れてはならない.
彼らの目的はただ1つ 研究都市の崩壊だ.それ以上は何も望まない.
世界に散らばった研究都市に革命を起こすであろう種達.
種が芽吹き花が開花するとき,この研究都市の最期であることをまだ誰も知らない.
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