美しい世界の果て

 汚れて濁った景色に嫌気がさして

 静かに目蓋を閉じて耳を塞いだ


 煩わしい雑音で視界は歪み

 息をするのも苦痛でしかなく

 どうしてみんな平気な顔をして歩いていられるのか

 僕にはまったくわからない


 愛には無関心を

 夢には絶望を

 どうしてそんなに暗い方へ行くのって

 光の中にいるあなたには

 きっと一生わからないことだよ


 一体何が僕をこうしたのか

 原因なんてないだろう

 降り積もった小さな偶然が

 僕という個をつくっただけ


 どうしたら他人の為に泣けるんだろう

 どうしたら痛みに共感出来るんだろう

 考えたところで結局

 僕の痛みは僕でしかなく

 共感したいとも思わないし

 してほしいとも思えない

 冷たい人だねって背を向けた

 あなたのその言葉は冷たくないのかな


 僕の傷は化膿する

 ほんの小さな傷

 それが何年も何十年経っても消えずに残っていて

 時折痛んではじくじくと広がっていく

 いつの傷だって鮮明に思い返せるほどに


 冷たい人だねって

 そんな日常会話のささやかな一言くらいの言葉

 もうとっくにあなたは忘れて

 当たり前のように笑っているんだろう


 愛することも夢を見ることも

 きっと僕には一生かかっても無理だろう

 歪な僕を歪なままでいいよって

 そうして側にいてくれる人なんて


 どうしてみんな平気な顔をして

 傷を忘れていけるんだろう


 寂しさなんて欠片もなかった

 美しい世界の果て

 僕の音しか聴こえてこない

 誰一人いない景色


 ここに至るまでほんの僅かでも

 孤独に苛まれることはなかった

 こんなにも何もない場所なのに

 何よりも安堵した

 それが僕の答えだったんだ

 傷しかない歪な心がようやく

 風に溶けるように

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