轟。

朝陽うさぎ

第1話 Help

「助けてください…お願い、見逃して…」


 道端に抱き合う母娘おやこ。母親が俺に助けを求める。

 娘はもういい歳のようだが、今にも泣き出しそうだな。


 そんな恐怖を、俺は与えている。


 快感だなぁ。滑稽だよな。


 そして、俺は告げるんだよ。


「いやだね」


 と。


 もう2人は息をしていなくて、頬や髪が血に塗れている。

 心臓をちゃんと捉えたから、そう苦しんでは無いだろうな。

 俺って、



 血で服を汚さないように、気を付けて新鮮な肉を口へ運ぶ。

 俺にとっては、一種の快楽を与える行為だな。


 それに、あの表情かおをまじまじ見つめると、次第に可笑しくなってくる。


 だって、そうやって頼んでたら世の中どうかしちゃってるよ?


 だから、俺は正してやってるんだよ。この捻くれた世界を。



 今思えば、あの時死んで良かったな。

 毎日、朝から放課後まで同級生に虐められ、毎日、クソみたいな親父やお袋に勉強を強いられ、上手く出来なかったら叩いて蹴っての繰り返し。

 終いには鉄パイプに巻き込まれて死亡。

 事故として処理されてんだろうな…。



 担任は虐めや虐待を探知していない。というか、見ぬ振り。

 いつだってそうだ。

 報復を受けるのが嫌だからと自分の身を固め、他の守り、つまり俺を見放すんだ。


 下らねえ。


 死んでから、何か知らんがこの世界に転生してた。

 俺のセカンドライフは始まり、あの隕石も俺の人生を変えてくれた。

 俺は、天使と悪魔の血を引く、妖天ハルスになった。

 見た目は人間らしく、特異体質で、固有の翼が生え、それを自由に変形とか出来て、人によって違うらしいが、目の色が変わるみたいだ。


 そんで、妖天ハルスに限った事じゃなくて、あの隕石から生まれ変わった異種族は、見境無く人を食うんだと。

 実際に今、咀嚼音を撒き散らしてる。

 意外に美味かった。

 もっと臭い肉もあったけど、なんて言うかなァ…こう、ジューシーな豚の味?

 でもまあ、健康面には問題無いし、コレ食わないと死んじまうもんな。



骨まで全て食べ尽くした俺は、また新たな獲物を求めに行った。

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轟。 朝陽うさぎ @NAKAHARATYUYA

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