創造の星【3:0:0】15分程度
嵩祢茅英(かさねちえ)
創造の星【3:0:0】15分程度
男3人
15分程度
----------
「創造の星」
作者:嵩祢茅英(@chie_kasane)
ネヴィル・プレストン、監視♂:
フェイ・キーラン、謎の男♂:
ライナー・マルコム♂:
----------
ネヴィル「私は今、宇宙船に乗り、今日から配属される研究施設へ向かっている。
職場でもあり、居住スペースも兼ねたその研究施設で生活を共にする研究員、所謂『同僚』やこれからの仕事、生活に多少の不安を抱えつつ、今まさに長旅を終えようとしている。
予定より数時間早く到着した、その『研究施設』へと足を踏み入れたその時、気持ちが高揚した事を覚えている―――」
(間)
ネヴィル「本日付けで着任します、ネヴィル・プレストンです!ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します!」
ライナー「堅いなぁ!もっと気楽に行こうぜ!俺はライナー・マルコム。ライナーって呼んでくれ!」
フェイ「長旅ご苦労だった。私はこのチームのリーダー、フェイ・キーランだ。キミの活躍を心から期待しているよ。
早速だが、キミの自室となる部屋へ案内しよう。着いて来たまえ」
ネヴィル「はいっ」
フェイ「着いて早々悪いが、荷物を置いて準備が整ったら先程の部屋で話がしたい。急かすつもりはないから、ゆっくり来てくれていい」
ネヴィル「分かりました」
ネヴィルM「そう言われてゆっくり出来るほど私の神経は図太くない。荷物を置き、簡単に身なりを整えると、先程の部屋へと向かった」
ライナー「おぉ、随分と早かったな。コーヒーでいいか?砂糖とミルクはいくつずつ?」
ネヴィル「ありがとうございます。では砂糖を2つ、ミルクは要りません」
ライナー「りょーかい」
フェイ「さ、座ってくれ」
ネヴィル「ありがとうございます、失礼します」
ライナー「ほい、コーヒー。熱いから気を付けろよ」
フェイ「仕事の前に、この研究施設、通称【ポッド】について軽く説明しておこう。
ある程度の構造・役割は事前に聞いていると思うが、これから居住するにあたって、再確認の意味も含めてな」
ネヴィル「はい、お願い致します」
フェイ「まずポッドの中は我々の
ポッドは『人類移住化計画』の研究のため、【Earthと環境が酷似している】と認定された惑星の拠点となる。今、我々がいるこの惑星が、現在研究対象である惑星のうち、1番Earthと環境が酷似している場所だ。
だが【酷似している】と言ってもまだまだ差は大きい。ポッドの外に生身で出ようものなら、この惑星の環境に順応出来ず、命を落とす事になる。」
ライナー「その差を縮めて、人が住めるようにするのが俺たちの仕事だ。この研究は何百年単位と続けられている。それすぐにと結果に結びつく仕事じゃないが、上手く方法を見つけられれば報酬はとんでもない額だ!最ッ高の人生が待っている!これは一生遊んで暮らせるかどうかのチャンスだ!」
フェイ「(咳払い)んんっ!…そんな簡単に解決する問題でないのは重々承知だろうが…検討を祈る。
尚、ポッドの中は火気厳禁だ。充分気を付けてくれ。」
ライナー「はぁ〜、ろくにタバコも吸えなくて最初はすごく辛かったんだぜ?電子タバコなんて吸った気になんねーよ…」
ネヴィル「はは…私は喫煙者ではないので…」
ライナー「まじかー…また俺だけアウェイ?」
フェイ「ところで、ネヴィル。Earthの空気中の気体比率は知っているか?」
ネヴィル「はい。約8割が窒素、約2割が酸素でほぼ一定、ですね?」
ライナー「ひゅ〜、さすが!」
フェイ「そうだ。だがこの惑星では…」
ライナー「一酸化炭素が多くの割合を占めている。酸素割合に関してはEarthとほとんど変わりはないが、空気循環が必須であり、吸い過ぎれば中毒死する。
この惑星にはいくつもの火山高があるため、それが主な原因と推測される。そのため外気は摂氏300度はザラだ。ほぼ砂地の環境で酸素が一定量確保されているのが不思議なくらいだよ。
どこかの層に植物…あるいはそれに準ずる作用を持つ『何か』があると踏んではいるが、未だ発見には至っていない。
ただし太陽が当たらない部分では殆どが氷で覆い尽くされている。
その中にも一酸化炭素が大量に含まれているから、喉が乾いたといってその氷を口にするのはやめておけよ?」
ネヴィル「そんな事はしませんよ。ところで、必要物資はEarthから定期的に搬送されると聞いていますが、こんな年代物のワインや蓄音機までも届けられるんですか?」
フェイ「いや、それは探索中に見つけた古いポッドから持ち帰ったものだ。搬送されたものではないよ。」
ライナー「これを見つけたのはラッキーだったよな。なにせ娯楽が少なすぎると作業効率は落ちるばかり。たまには息抜きも必要だろ?」
フェイ「お前は息抜きしすぎなんじゃないのか?」
ライナー「息が詰まる生活の中での息抜きは死活問題と言っても過言ではないでしょう?」
フェイ「ま、そういうことにしておこう…」
ネヴィル「お二人はここでの勤務は長いのですか?」
ライナー「ん…まぁ、割と?」
フェイ「そうだな…3年と少しになるか?」
ネヴィル「そんなに…ポッドでの研究や調査は過酷と聞きます。」
ライナー「ま、俺たちはそんな過酷とは思っちゃいねーし、ただ性に合ってるってだけだ。普通の研究員なら2年も経たず帰還する。そう気負わなくてもいいさ。」
フェイ「私たちも4年を目処に、一度Earthに戻るつもりだ。なんにせよ楽な仕事ではない。精神的にもな。ストレスチェックとケアは小まめにするようにしてくれ。」
ネヴィル「分かりました。お気遣い痛み入ります。」
(間)
ネヴィルM「最初こそ慣れない環境に戸惑いもしたが、研究や調査にも段々と慣れ、着任から10ヶ月が過ぎようとしていた。…その
決して楽観視していた訳ではないが、結果が出ないという事実はどうしようもない焦りに変わる。そして焦りは正常な思考を欠如させる…
その日、ポッド外調査に出た私は、空気圧調整スーツの着用に際し、パーツの結合部分に不備がある事に気付いていなかった。
…頭がクラクラする。そう気付いた時には体は思うように動かなくなっていた。私はそのまま気を失い、その場に倒れた…」
(間)
フェイ「(無感情に)エラーコード:4049。
一酸化炭素中毒による死亡を確認。
このエラーは、228回目です。」
ライナー「(無感情に)次の被験者の要求申請…
確認…
到着まで36時間…
これより環境のリセットを開始する」
ネヴィルN「そう呟いたかと思うと、2人は私の死体を処理し、私が『そこに居た』痕跡を消していく。
ポッド外での着用義務スーツも纏わず、淡々と作業をする2人…
一体彼らは、何者だったのだろうか…」
【Earth、某監視施設】
-------------------------------
ネヴィル→監視員
フェイ→謎の男
-------------------------------
監視員N「―――某監視施設。
ある部屋から、男の独り言と壁を削る筆記音が聞こえてくる。それがこの施設での日常…」
謎の男「(ボソボソと喋っている)
またこのエラーか…ポッド外調査での着用スーツの素材の耐久年数は…未だ新しい素材は開発されていない…この気候では…あぁ、このロジックを完成に導く方法が、必ずある…何千回、何万回と演算を繰り返す事で…必ず答えは…」
監視員「まーた言ってる…よくもまぁ飽きないな…。
頭が良すぎるってのも考えものだ…紙一重で狂っちまう………」
監視員M「人間とは不思議なものだ。あの個室にいる彼と自分が同じ生き物だとは到底思えない。
きっと人間は知恵をつけすぎた。故に自己の壊滅なんて事が起こる。そんな人間を毎日のように監視している自分の神経も、大分麻痺しているのだろう…」
創造の星【3:0:0】15分程度 嵩祢茅英(かさねちえ) @chielilly
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます