エーデルワイス
星野響
夢は大海にたゆたうか
第1話 不時着
雨粒の弾丸がゴーグルを殴打し、激しい稲妻がすぐそばの空気を焼き焦がし、射抜かれた針葉樹の巨木が真っ二つに裂け燃え上がった。
突然の突風により、機体が木の葉のように揺れる。
僕は唇を噛んだ。
このまま飛行を続けるのは無理そうだ。
どこか不時着する場所を見つけないと。
幸いにも山地にわずかに広がった平らな窪地にこぢんまりとした集落を認めた僕は、愛用のプロペラ機をそこの近くの草原へと着陸させることにした。
ゆっくりと集落の周りを旋回する。
雨粒で濡れに濡れたゴーグル越しに着陸地点を慎重に割り出し、プロペラの回転速度を徐々に落として機首を下げていく。
悪天候のせいでくすんだ緑色に見える地面が刻々と迫りくる。
着陸の瞬間は、何度経験しても緊張感なしではいられない。
僕は来たる衝撃に備えて操縦レバーを握りしめ、着陸態勢へと移行すべくレバーを自分の体の方へ倒しこんだ。
そして――バフン、と形容したくなる控えめな着地を体全体で感じ、胸をなでおろす。
草原への不時着は初めての経験だったが、完全に雪解けの季節が終わり、盛んに葉を伸ばし始めていた若草がいいクッションとなってくれたようだ。
二組の翼が上下に重なったプロペラ機を降りると柔らかい草の感触がブーツ越しに伝わってきた。
僕は土砂降りの中、脳天に落下してくる大粒の雨に顔をしかめつつ集落へと歩き出した。
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