PCR検査はどうなる?


薬の次に出て来たのが、窓の無い客室に滞在している乗船客達の健康問題でした。


例え健康な人間でも、窓無しの部屋の閉鎖空間に、二週間も閉じ込められれば、心や身体の調子を崩します。


かといって、現在は検疫期間中。無闇に人と接する事は避けないといけません。


難しい選択を迫られたと思いますが、厚労省の許可の元、指定の部屋ごとに時間を決めて、室外の指定のエリアで運動する事が出来るようになりました。


最初のグループの時は、まだ発表されていた陽性患者の数も少なく、船内も楽観ムードだったため、乗船客同士で談笑したり写真を撮りあったりしていたようですが、


日に日に発表される陽性患者の数が膨大に増えてゆき、朝から晩まで救急車で患者が搬送される光景が毎日、テレビに流れるようになると、私の部屋の順番が回って来た時には、かなりピリピリとしたムードになっていました。


乗船客同士の会話もなく、誰もが険しい表情で互いに距離を取ってウォーキングに励んでいました。


この時、私を含めて多くの乗船客たちの不安は下船時にPCR検査を受けられるかどうか、でした。


クルーズ中の長い期間、多くの陽性患者の方たちと一緒に船内で過ごしていたのですから、自身も既に陽性かもしれないという不安は誰もが持っていました。


最初、日本政府の方針としては、14日間の検疫期間中、発熱等の症状がなければ無検査で全員下船させて帰宅させる予定でした。


これだけの人数を速やかに検査するだけのリソースが無い事は理解していましたが、この無検査下船の方針は疑問でした。


そもそも、「未知のウィルス」なのに、「14日間症状が無ければ陰性」の根拠は一体どこにあるのかと非常に不安でした。


この無検査での下船に反対し、「全員検査」を主張してくれたのが、厚労省側でした。


厚労省と政府の協議の答えが出るまでに非常に長く時間がかかりましたが、最終的に「全員検査」で下船が出来る事になり胸をなで下ろしました。


この全員検査の結果、無症状の陽性患者を下船前に多く見つけ出す事ができ、結果的に非常に良かったと今でも思っています。


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