ダイヤモンドプリンセス

最初に、ダイヤモンドプリンセス号について簡単にご説明したいと思います。


生まれは、ここ日本。


長崎で造られた、大きく美しい船です。


主に日本各地の港を巡り、乗船客は日本人だけでなく世界中から集まる、大変人気の高いクルーズ船です。


今回のクルーズも、乗船客の約半数が海外からのゲストでした。


彼らの国籍は様々で、時には数日をかけてはるばる、この遥か遠く東にある国、日本を目指して来るのですから、親日家の方達が非常に多く、船内の雰囲気はとても和やかなものでした。


船内イベントでは、外国人ゲストのための日本語講座や、日本文化を知るためのレクチャーなどが多く開催され、中でも人気のイベントが『着物体験』でした。


これは、外国人ゲストの方のために、日本人の乗船客が着付けボランティアとして参加して、海外の方に着物を着せてあげるのですが、


毎回盛況で、過去には『着物を着るのが夢だった…』と思わず泣き出してしまう外国人ゲストもいたほど。


とにかく、国籍、人種を超えて仲良くなれるのが、この船の特徴でした。


お互いに言葉は通じなくても、色々な国の方々がゲームやビンゴなどに一緒に参加し、クルーズ中は和気藹々と楽しく過ごしていました。


印象的だったのは、ランドリールームでの出来事です。


ここに置いてある洗濯機たちは年季が入っていて、たびたび調子が悪かったのですが、


誰かが「変ねぇ、動かないわ…」と呟くと、そこにいた数人で、たちまち「多国籍同盟軍」が結成されました。


「あら、大丈夫?」と言いながら、英語、中国語、日本語を交えて会話しつつ、ボタンをカチャカチャ押したり、洗濯機のドアを開けたり閉めたり。皆であれこれと大格闘。


結局どうにもならなくて、「お手上げね」となるのですが…


でも、本当はそこにいる全員が知っているのです。


自分たちのすぐ後ろにある電話機で、技術チームのクルーを呼び出せば問題は直ぐに解決する事を。


こういった、様々な国の人たちとの交流が、「お楽しみ」の1つなのです。


船内では相手の人種に関わらず、互いに敬意を払い合い、初対面でも仲良く過ごす光景があちこちで見られました。


大げさかもしれませんが、人々が目標とする『理想の平和世界』が、確かにそこにあったと思います。


そんなダイヤモンドプリンセスが出航したのは、2020年の1月20日。


武漢のニュースが伝えられつつも、日本では春節に合わせて中国人観光客を歓迎し、受け入れていた時期でした。

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