紋章の辿る道は

ぱるぱす

第1話ゲームだって聞いたのに・・・

ジリリリリ・・・ジリリリリ・・・


目覚まし時計の音で目を覚ました俺こと安藤 未来(あんどう みらい)は

カーテンと窓を開き、日光を浴びる。

夏の涼しい風が吹きつける中、まだ少し黒みがかった空を窓越しに見上げて、昨日と変わらず朝が来たことを認識する。


「朝の景色は気持ちいいけど・・・ねむ・・・」


寝たい気持ちを抑え、洗面所へと向かう。

顔を洗い、鏡を見て自分の顔をどんよりとしたものから笑顔に変える。


「さぁ、今日も一日がんばりますか!」


朝食を終え、着替えを済ませて、バックを背負い部屋から出る。

しっかりと鍵をかけて、アパートの二階から降りる。

そして、いつも待ち合わせでアパートの前にいる、

吉村 健二(よしむら けんじ)と天草 照(あまくさ てる)と合流した。

健二の身長は178cmを超えている。照は眼鏡を掛けていて見たまんまの真面目だ。


「「「おはよう!」」」


息ぴったりの挨拶を交わし、笑い合う。


「いつも通り、息が合ってるってことは全員元気だな」


健二は挨拶で元気なのかを伺ってくる。


「元気だよ。ほら、行こうぜ。夏休み前の最後の学校だ。」


俺たちは今日も話しながら学校へと歩みを進める。


「そういえば、未来ってどうして一人暮らししてるの?」


照が何気なく話しかけてきた。そういえば言ってなかったな。


「もう一年くらい付き合ってたのに、今更そんな話されるとは」


「だって、一人暮らししてるなんて知ったのは高校一年過ぎた後だし」


アルバイトとかで家に呼ぶ暇あんまりなかったからな・・・


「そうだったな。まぁ、俺ってさ、中二の時に両親死んじゃったんだ。それから中三まで親戚にお世話になったんだ。でも、このままお世話になるのもどうかなって思って、勉強しながら、バイトで貯めたお金で一人暮らしをすることにしたんだ。でもまだ親戚の人に学費出してもらっちゃってるから今してるバイト頑張って、それも自分で払えるようにならなきゃってね」


「そっか、ご両親亡くなられてたんだ。気分悪くしたならごめん」


照はバツの悪そうな顔をして言った。


「いいよ。別に秘密にしてたかった訳じゃないし」


そうこう話しているうちに、学校へ着いていた。

偶然にも三人とも二年生へと上がっても同じクラスだった。


教室へ入った三人だったが、ホームルームまでまだ時間があり、

教師が来るまでスマホをいじりながら喋っていた。


「なあ、二人はさ、金ほしくない?」


健二が突然そんなことを言ってきた。


「まぁ、あるに越したことはないね」


照が反応する。


「未来は?」


「そりゃ欲しいよ。学費だろ、それに夏休み入ったら三人で旅行に行くんだろ?」


そう応答すると、健二は自分のスマホの画面を見せつけて来た。


「これに参加しねえか?」


スマホの画面には、

『太平洋の無人島に100人で降り立ち、命がけのサバイバルゲームをしよう!

生き残りが10人になった時点でゲームは終了!生き残った人には豪華賞金と景品をあげちゃいます!そして、今回が最後のゲームとなりますので悔いのないように!』

と書いてあった。


「ゲーム?これを俺らでやろうって?」


これで間違いないのか、健二に確認を取る。


「そうだぜ」


「こういう企画って、だいたいすごい強い人がいるから僕らじゃ太刀打ちできないと思うけど・・・」


照がもっともなことを言う。


「大丈夫だって!俺、これの前のゲームに出て、初心者だったんだけど生き残れたんだよ!今回、俺ら三人で参加するんなら余裕だって!」


何故か必死に提案してくる健二。そんなにやりたいのか?

そんなにやりたいんだったら・・・


「ただのゲームだろ?俺はいいけど・・・参加費とかあったら遠慮しとく」


「僕もお金がかからないならいいかな」


「ほんとか!?じゃあ、リンク張っとくからそこからアクセスして『参加する』を押してくれ!」


健二は安心したような顔をして、そのリンクをメッセージアプリに張る。

健二のやつ、そんなに三人でできないことが不安だったのか?

でも、そうだな。三人で遊ぶことなんて最近なかったしな。


そんなことを思いながら、サイトから『参加する』を押すと、『ご参加ありがとございます』の文字とこのゲームに関する説明文が表示された。


「参加したよ」


「僕も」


「よし!じゃあ、明日から始まるから今日の夜、このサイトに書いてある角有公園に集合な!」


今日の夜からだったのかよ。てか、なんでゲームするのに外に行くんだ?


「健二、どうして外に集まるの?」


照が俺の疑問をその通りに言った。


「そ、それは大会みたいなものだからな。バスとかで移動なんだよ。照は親に旅行に行ってくるって感じで家を出てくことを伝えておいてくれ」


なんかちょっと困った感じで健二が伝えてくる。

照は少し考えて、「分かったよ」と健二の意見を承諾した。


「おーい、全員席につけ」


担任の尾形先生がやってきた。それぞれの席につくとホームルームが始まった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「じゃあ、俺部活だから」


「僕も先生に呼ばれてるから、未来ごめんだけど先に帰って」


「ほーい」


午前中に学校も終わり帰路につきながら、昼ご飯何にしようかと考えていた。

昼ご飯をスマホで調べようとして起動すると、朝のゲームのサイトのままだった。


そういえば、説明文読んでなかったな。どれどれ。


『100人で行うサバイバルゲーム:10人が生き残れるよ!

サバイバルゲームの開催地へと行くために、以下の場所のどこかに集合してください。角有公園、角有廃病院、・・・、・・・・・・・・・・・・

この場所にバスでお迎えに上がります。無人島に着いた瞬間から、ゲームスタートになります。

なお、無人島内には様々な物資がある他、定期的に物資が空から、パラシュートで落ちてきます。そして、ゲームスタート前には数日分の食糧と水、サバイバルセットと戦闘に多様性をもたらす能力(エンブレム)を植え付けます。

能力は人によって違います。能力や戦術を駆使して、勝ち残ってください。


説明は以上になります。それでは、ご武運を』


健二の言ってた通り、バスが来るんだな。それに、数日分の食糧と水って、そんなに長くやるのか?サバイバルセットは参加賞みたいなものかな。

ちょっと不安になってきたな。

でも、三人でやれるから・・・っと昼飯探すんだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



夜になり、時間通りに待ち合わせていると、説明のところに書いてあったように、バスが公園の前に停まった。バスに乗り込むと夜だったせいか眠くなってきた。


「ごめん。俺ちょっと寝るわ」


「分かったぜ」


「おやすみ~」


寝ることを二人に伝えて、目を閉じた。







「・・ぃ、・らい、未来!」


「ん?何かあった?照」


俺の体を揺すって起こしてくる照に聞いた。何故か、あおむけに寝ていて、しかももう夜は過ぎていた。


「何かあったも何も周りを見てよ!」


「ん?周り?」


見渡すと、左手には海、右手には森が生い茂っていた。


「どこだ!?ここ!?」


俺の脳は今の状況を処理しきれなかった。

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