第23話「ツンデレカノジョは、アドバイスを求む②」
それから数分、遠慮なく感じられるような巧みな言葉遣いを受け流しながら、私は凪宮君との『友達』としてのやり取りを終える。
一通り聞き終えた後、彼は『なるほど…』と小さく呟く。
『……概ね訊いた限りだと、特に間違ってるところはないと思うよ。手当ても申し分ないと思うし。……そうだな。強いて言うなら、汗拭きタオルとか、着替えも用意した方がいいかもしれない。熱で身体が温まってくると、自然と汗搔き始めるから』
「く、詳しいんだね」
『そうかな、人並みだと思うけど。妹……優衣が熱出したときとかも、同じ対応してたこともあったから、実践も交えてたりはするけど』
あぁ、そっか。凪宮君って1つ下に妹さんがいるって言ってたっけ。
学校での様子を見てる限りだと、下の子の面倒を見てる凪宮君っていうのが、イマイチ想像出来ないけど。……でも、こうして話してくれてることを整理しても、きっと良いお兄ちゃんしてるんだろうな。
……何だか少し、微笑ましいかも。
「なるほど。他には何かあったりする?」
『他……って言われてもな。後なんて、きちんと水分を取らせることぐらいだ。でも話を聞いてればそんなこと言うまでもないだろうし、後は臨機応変に対応してくれ』
「……急に投げやりになるね」
『佐倉さんだからだよ』
「……どういうこと?」
『透のこと、ちゃんとわかって動いてるみたいだし、これ以上何か言ったところで無駄だろうし。それに、僕が介入したなんて知られたら、復活したそいつに大目玉喰らいそうだからな。早めに退散する他ない』
「本当、つくづく仲が良いのか悪いのかわからないなぁ、2人して……」
中学生になって間もない頃――突然透が『いい奴見つけたかもしんない!』と、前置きも何も無しに、突然そう叫んだことがあった。詳しいことはそれから聞いたけど、どちらにせよ、出会いからしてみればほぼ透の一方通行、凪宮君が警戒することだって無理はなかった。実際私だって、初めて会ったときは透の勢いに思わず身を引いたからね……。
でも、そう考えるとますます不思議に感じる。
こんな性格が真反対な2人が、どうしてこんなにも言い合えるのか。
渚ちゃんにさえ配慮している様子を見せる凪宮君が、どうして透にだけは隠し事なしに、虚勢を張ることもなく言い合えるのか――。
……それが男子高校生の普通なのか。それとも、何か理由があるのか……。
「……ねぇ、凪宮君。少し、聞きたいことがあるんだけど、時間ある?」
『長め通話は出来れば遠慮したいんだけど……』
「そんなに時間は取らせない。ただちょっと、疑問があるというか」
『……何?』
「凪宮君ってさ、普段渚ちゃんと話してるときとか、勉強してるときとか。何に対しても、こう……配慮があるというか、優しさがあるの」
『……はぁ』
「でも――それが、透には無いの。他の人にはあるはずの壁というか、そういう障害になりそうなものが全部取っ払ってるっていうか。こう、自然なんだよね。性格は全然違うし、意見だって中々噛み合わなくてしょっちゅう言い合い起こるし。……でも、それが2人にとっての普通なんだと思ってた。けど、時折思うんだよね。何でそうなったんだろうな、って」
『………………』
通話の向こう側からは何の反応もない。……もしかして、聞いちゃいけないようなことだったかな。
謝るべきかと模索する最中、通話の向こう側から小さく音が聞こえた気がした。
『……そんなに、面白い話でもないんだけど。佐倉さんは、中学時代に僕と渚がほとんど疎遠気味になってたって話は知ってる?』
「えっ? い、一応」
『……中学1年生の頃、そんな関係性だった当時の僕は、気分晴らしっていうのと本に関わる時間を増やして、なるべく一緒にならない時間を作るために、図書委員に入った。そして、そのときに一緒になったのが――透だった』
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