第22話「幼馴染は、彼氏へのプレゼントを選ぶらしい①」
あれは昨日の放課後のこと。
結局自分から晴斗に話しかけることが出来ず、最終日のバイトを終わらせて、佐倉さんと買い物をしていたときのことだった。
「……ねぇ、佐倉さん」
「ん? 何ですか?」
「その……、佐倉さんは晴斗がおかしくなった原因、わかってるのよね?」
「そうだねぇ。渚ちゃんからの話を聞いた上での推察にはなっちゃうけど、あー、凪宮君も男の子だったんだな~って、再確認させられたかな?」
「(……結局どういうこと?)」
最寄り駅からおよそ15分ほど電車を乗り継ぎ、辿り着いたのはいつかの大型ショッピングモール。
その中を散策中、私は佐倉さんの言っている言葉の意味がわからないでいた。
佐倉さんは知り合いの中で唯一、私が近所から少し離れた駅内の喫茶店でアルバイトをしていたことを何故か知っている。
別に自分から話したわけではない。本人曰く「コソコソしてるから何事かな~と思って、着いてきちゃった!」みたいな、軽いノリで着いてきたらしい……。やだ、佐倉さんと言い藤崎君と言い、この幼馴染達恐ろしいんだけど……っ!?
「……ごめん、やっぱわからない」
「あっははは! まぁその内わかるよ! 凪宮君も男の子なんだってさ!」
……でも、こんな性格な彼女だから私は気兼ねなく相談出来ている。
こうやって友達がいるというのは、私にとっては初めての経験だけれど……とても助かっている。こうして私と一緒に悩んでくれて、相談に乗ってくれて。
身体測定の数日前――『ちゃんと友達を作ったらどうだ?』なんて、晴斗が言ってくれたから作ってみようという意思が私の中に現れた。
――その結果、佐倉さんという友達が出来た。
そしてどういう縁か、藤崎君とも晴斗の友達以上の関係になることになるし……世間って狭いんだなぁ。
「ねぇ、佐倉さん。前もそれ言ってたけど、一体どういう意味なの? 晴斗は産まれて此の方、ずっと男子なのだけど……」
「そりゃあわかるよ。でも、そういう意味じゃないんだよなぁ。どうしよう、本格的な鈍感と天然のコンビになってしまったかもしれない……」
「……もしかして今、私バカにされてる?」
目的地へと向かいながら話をしているが、何だか今佐倉さんに小馬鹿にされた気分……。
「そんなに気にしないの! まぁそれも立派な個性だよ!」
「……やっぱ
まるで藤崎君と話している晴斗みたいな気分になった。……大変だね、晴斗。
そんなこんなと話を展開させていると、目的地である時計屋に着いた。
今までにない何か――そう考えたときに脳内を過ったのが、晴斗が中学の頃に着けていた腕時計だった。
ここに興味があると佐倉さんに言ったとき、意外だなぁ的な顔をされたが、私からしても少し不思議な感じなのだ。普段来ない場所だからだろうか。
現代人にとっては、腕時計よりもスマホや携帯で時間を確認する人の方が多いのではないだろうか? 実際現代の子どもがそうであるように、私も滅多なことでは腕時計は使わない。
例えば、試験中とかだろうか。
壁に掛かった時計を見るのもありだろうけど、周りが下を向いて問題を解いている最中に自分だけが上を向いているのは、少し抵抗があったりする。妙な疑いをかけられるのもあれだし。そのため、試験中でも手元に置いたり出来る腕時計は便利なのだ。
「にしても、腕時計だなんて随分と発想が乙女チックな方に傾いたんだねぇ~? 高いものを買いたいって希望はあったみたいだけど、正直意外だったかな。凪宮君になら、高めの単行本とかを贈った方が喜びそうなもんだけど。これにしようと思ったきっかけとかあるの?」
「うーーん。根拠ってわけじゃないけど。中学の頃は晴斗、左腕に腕時計着けてたんだけど、水場に落として壊れたとか何とかで今はスマホで確認してるんだよね。……だから、誕生日プレゼントはこれがいいかなって。本はいつでもプレゼント出来るしね!」
「…………。はぁああ…………」
……えっ!? 何で今ため息吐かれたの!?
「いや……今更かなぁー、とも思うんだけど、そんなに凪宮君のことをずーっと見てきたっていうのに、どうして凪宮君の肝心な部分を見落としてるんだろうなぁ……、という謎すぎる疑問点が産まれて」
「ね、ねぇ、それって一体どういう意味なの?」
「あぁ、うん。きっと渚ちゃんは天然か鈍感のどっちかなのよね。まぁそれもそれで可愛いなぁーとは思うんだけど、根本的に問題がありまくりなだけなんだよね。そうであると願いたい……」
佐倉さんの言ってる意味を理解しきれていないのもあるけど、でもこれだけはわかる。
――やけに失礼なことを言われた気がする。
これはあくまでも直観にすぎない。
だけど、可能性の一部としては9部にも成りうる。……やっぱ弄ばれてる。
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