『小さなお話』 その47

やましん(テンパー)

『人間になりたい』


 はとの親子が、ふりふりと、道路を歩いていました。


 そこに、かっこいい、超高級デラックス・カーが、ばりばりと走ってきました。



  (はとかあさん}

 「あぶない!」


 お母さんと小鳩は、やっとこさ、避けたのです。


  (はとかあさん)

 「あぶなかったねぇ。きをつけなくちゃね。」

  

  (はとぼうや)

 「うん。でも、かっこいいなあ。ぼく、あんなのに乗りたいなあ。人間になりたいなあ。」


  (はとかあさん)

 「ばかおっしゃい。にんげんなんて。ほら、あそこに、やましんさんが歩いてる。肩をすぼめて、背中丸めて、道路のはしっこを、おっかなびっくり。」


  (はとぼうや)

 「うん。なんか、かわいそ。」


  (はとかあさん)

 「人間もね、元気で力が強くって、頭がよくてお金があって、地位があって、高いところに住んでいる、かっこいい人がもてるの。それは、動物みな同じ。でも、人間ほど残酷な生き物はいないのよ。


 病気になった人を批判したり、意地悪言ったり、差別したり。無視したり、時には、秘かに殺したりも、するのよ。やましんさんなんか、まだ、ましなほうなのよ。でも、あれでも、裏政府からはマークされていて、カラスや、はとのスパイさんが張り付いてるのよ。でもね、はとは、みな、お互いに助け合い、いつくしみながら、弱いものを守りながら、りっぱに生きなくてはならないの。」


  (はとぼうや)

 「こあ~~~~~~~。ぼく、人間やめる。」


  (はとかあさん)

 「そうそう。それが一番。」


  (はとぼうや)

 「でもね、はとさぶろのおじさんは、やましんさんは、人間にしては、わりと良い人だって、言ってたよ。」


  (はとかあさん)

 「まあ、あのおじさんはね、仕事もしくじって、プアはとになって、やましんさんにかこわれて、毎日お酒に酔いつぶれて、あほなことばっかりやてる、はとの面汚しなんだよ。あんなのと、話しちゃだめよ。近づいてはダメなのよ。絶対に、だめよ。」


  (はとぼうや)

 「はあ~~~~~~~~~~~~?!」



         🕊   🕊    🕊      🕊  




                                 おしまい






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『小さなお話』 その47 やましん(テンパー) @yamashin-2

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