新しい道具の進化は侮れないという話


 仕事のスケジュールが突然変わりまして、空白時間ができてしまいました。会社のパソコンでエッセイ打つのも久しぶりです。ここのところ忙しかったですからねえ。みなさんいかがお過ごしでしょうか。今日はクソ暖かいですが、また夜から寒くなるそうです。三寒四温な毎日ですねー。中高年には厳しい気候です。


 というのも、実は先日高校の同級生の一人が病気で亡くなりまして。結構世間では有名になったやつでして、新聞にも続々と記事が出ました。その訃報を知らせてくれた別の友人が「まあ、俺たちもそういう年齢だからな。最近古い友人と積極的に会うようにしている。そうしないと知らん間に死んでしまうから」と言ってまして。たしかになあ、と思ったところです。


 この亡くなった友人の話をしだすと高校時代のアホなエピソードが頻出するのですが、それは故人の名誉もあるのでここではやめておきます。


 とりあえず早すぎた旧友とのお別れに合掌。命あってのものだねですよね。日々の健康に感謝しないといけません。


 話は変わりまして。


 職場の上役とゴルフに行った時のことなんですが。


「最近飛ばなくなってきたんですよねー。俺ももう年ですね」

「なに言ってんだ、ゆうすけくん。キミのは道具が古すぎるんだよ。それでだいぶ損しているぞ。買い換えてみな?」

「まじですか? そんなに違うもんなんですか?」

「来月の次のゴルフまでに買い換えるといいよ。令和のクラブ性能に驚くぞ」


 こんな会話をしていました。俺はゴルフすると言ってもあまり真剣な方ではなくバリバリのエンジョイ派なんですが、上役に言われて道具を一式見直してみました。


 ーーーそういえばこの道具一式、どれも結婚前から使ってるやつだなあ。


 いやあ、結構愕然としましたね。もう二十年物のクラブを使ってたことに気が付いたわけです。いや二十年どころじゃありませんね。まだ二十代だったころに、その当時の上司のお古をもらったものをいまだに使ってるわけですから。その当時の上司がどれぐらい使っていたのか今となっては不明ですが、下手したら三十年物ですよ。


 ゴルフクラブなんて正直日々のQOLに一切関係ありませんから、買い換える優先順位はやたら低くて長年放置していたんです。買い換えるモチベーションが湧きませんからねえ。そこそこ使えていましたし。でも、さすがに三十年経っても使ってるのは異常と言わざるを得ません。


 その日からゴルフショップとか通販サイトとかを見て勉強しました。ゴルフ道具はアフターマーケット、つまり中古市場がものすごく整備されてます。新品買うのはもったいないですよね。今の世の中で中古市場が整備されてるのは車、楽器、マンションの次ぐらいがゴルフ道具なんじゃないかと思っていますが。


 今の相場はドライバーが新品一本9万円、2年落ちで4万円、5年落ちで1万5千円ぐらいのようです。新品のドライバー高いですよねー。こんなのとても(巨乳に内緒では)買えません。結局4年落ちの1万3500円のを買いました。


 アイアンは以前は新品10本組13万円ぐらいだったのですが、今は6本組が主流。こちらは2年落ち3万円で買いました。ちょっとゴルフやらない人には説明が難しいのですが、今のアイアンは飛距離が伸びたので、昔よりも少ない本数でまかなえるようになったんです。あと短い距離を打つ用のアイアンは別売りになってます。新しく買ったアイアンはごく短い距離を打つ用のクラブが入っていませんでしたので、それだけ古いのから持ち越しです。もともと飛距離が出なくなったのが買い替えの理由ですので、ごく短い距離を打つ用のは新しくする必要もありません。


 さてそうして二十数年ぶりに一新したクラブセットで意気揚々と練習場に球を打ちに行ったところ……、ズタボロでした。古いセットで球を打てるように最適化していたんですよね、俺の身体が。いやもうこれが当たらない当たらない。飛距離が伸びるどころか落ちていますよ。


 これはクラブと俺の相性が悪かったのか、どうせ買い換えたんだから別のセットにさらに買い換えてみようか、と割とマジに悩みましたよ。


「なんだこのクソポンコツは! 全然だめじゃん。キャロウェイは信用できない。時代はスリクソンだな」


 キャロウェイというのは俺の古いクラブのメーカーです。当時めちゃめちゃ流行っていたんですが、最近はスリクソンという新興ブランドの方に勢いが移ってきています。実績のあるブランドでキャロウェイのクラブを買っていました。そうは言っても次のゴルフまで日にちがあまりありません。悩んでいるうちにゴルフの日になってしまいました。


 仕方なく次のゴルフに、こないだの日曜日だったわけですけど、そのセットを持ってゴルフに行きました。正直このセットでコースを回るのは最初で最後だと思いました。


 当日は無風、快晴、日陰はさすがに寒いけど日差しは暖かい、富士山が良く見えるという絶好のコンディション。最初のホールで一番に打つくじを引いてしまいました。なんだか気乗りがしません。そりゃそうです。練習場でのヒット率なんてゼロ%ですもん。せめて50%はまともな当たりが出ないと、コースでは使えないというのが定説ですし。


 仕方なく二三回素振りをして打席に立ち、富士山の裾に向かってクラブを振りました。半分やけくそです。


 そしたらカシーンという音ともに青空に向かって勢いよく飛び出す白球。


「おおー、ナイスショット!!」


 同伴者から歓声が上がりました。練習場では一回も出なかったクリーンヒット。だいたいのゴルフ場には打つ時の目標となる吹き流しがコースの途中にあって、そこまで飛べばまあ成功なのですが、その吹き流しのはるか上を越えていき、緑の芝生に白いボールが落ちるのが見えました。基本吹き流しは打つ方向を示すもので、そこまで飛ぶことなんてほとんどありません。しかしいきなりそれを越えて行ったのに同伴メンバーはみんな驚いています。


 それよりも打った俺が一番信じられませんでした。だって、練習場で一発も当たらなかったクラブですよ? 練習でできないことは本番でもできないんじゃなかったんですか。


 そのあともコンスタントに新しいドライバーは快音を響かせてくれて、「これが令和のクラブ性能か!」と驚いたということでした。


 結局のところ、二十年分の道具の進化は確かにあった、ということです。次のゴルフが楽しみになってきました。


 ちなみにこの日はアプローチとパットがメロメロだったので、スコア的にはだめだめでした。しかし快音連発のドライバーの方が強く印象に残っているので、とてもいい気分で帰路につきましたよ。

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めっちゃ読み手を選ぶエッセイ ゆうすけ @Hasahina214

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