アメたぬきリレー(ムチャぶりもほどほどにしてね)
「大変です、市長!」
「どうした。落ち着きなさい。とりあえず座りなさい」
「知事が、知事が、神奈川県の独立を宣言しました。県境は封鎖されています!」
市長はその声に顔を上げた。慌てた官僚を一瞥するとゆっくりと電子タバコのスイッチを入れて、しばらく待ち、それをくわえると薄い煙を吐き出した。
「市長、なんでそんなに平然としているんですか! 横浜市は神奈川国の首都になるんですよ? 国民の安全を確保しないと! 周辺の国から自衛隊が鎮圧に来るかもしれません!」
「ばかもの!」
市長は机を叩いて立ち上がった。
「寝ぼけたことを言っちゃいかん。君は日本人じゃないのかね。神奈川県知事の大馬鹿ヤローは佐賀県知事にそそのかされてるに決まってるじゃないか。考えてみろ。佐賀県だけで国の態をなせると思うか?」
市長室のデスクの前で官僚は立ちすくんでしまった。てっきり神奈川国の首都として体裁を整えなければ、との思いが先に立って市長室に駆け込んだが、市長はそれを一喝している。
「君も冷静になりなさい。こんなアホな話があるか。我が横浜市は日本にとどまるぞ。神奈川県知事のクソバカが何を言おうとも、だ。だいたい考えてもみろ。神奈川県民900万人のうち400万人は横浜市民だ。つまり、神奈川県民のおよそ半分は横浜市民ってことだ。ついでに言っておくと、横浜市民だけで佐賀県民の5倍いるんだぞ」
官僚はあ、っと立ちすくんだ。市長の言わんとしたことが分かってくる。
「すぐ市境を再封鎖しろ。それと周辺市に打診だ。我が横浜市は日本に残留するが、君たちはどうするか、とね。東京都と接している部分は開放するんだ。自衛隊には私から連絡を入れておく。東京都知事にもな」
市長は電子タバコを吸い終わると吸殻をゴミ箱に投げ捨てた。
「遊びは、終わりだ」
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