対テロ作戦、その建前
タラントゥリバヤはともかく、
だからこそ、
一方で、今回のクラッキング事件の容疑者が<ジョン・
『どうしてこんなことをするのですか……?』
と思ってしまう。
何しろ今回のことは間違いなく<テロ>として対処されるのがアリシアには分かってしまうのだ。そして<テロリスト認定>を受けてしまうと、
『テロリストといえど人権があり、故意に殺害してはいけない』
という建前はありつつも実際には、
『確保の際に死んでも仕方ない』
的な感覚は間違いなくあり、『事故を装って殺害したのではないか?』と疑われる事例も決して少なくなかった。ましてや、アリシアは知らないが、クグリに対してはそれこそ『隠密裏に殺害する』という形の非合法な作戦すら実行されており、クグリと共にアジトに潜んでいたテロリストは殺害されたりもしているくらいである。
もっともそれは結局、一度も成功せず、逆に派遣された対テロ部隊に多大な損害をもたらしただけだったりもしたが。加えてこれは『相手がクグリだったから実行された』という側面もあり、普通はここまではやらない。
ジョン・牧紫栗に対しても、そこまでの対処は行われないであろうが、同時に、『確保の際に死んでも仕方ない』的な扱いを受けることは十分に予測できた。そしてもし確保の際に死亡しなくても、電脳化手術を受けた犯罪者に対して行われる処置は重大な結果をもたらす可能性もあり、合わせて決して幸せになどなれないであろうことは容易に想像できてしまう。どうしてわざわざそんな結末を招くようなことをするのか、ロボットであるアリシアまったく理解できない。
理解できないのだ。
そう。これが、
<心を持つ人間>
と、
<心(のようなもの)を持つロボット>
との決定的な違いである。人間は時に、自分が不幸になると分かり切っていることをやらずにいられないこともあるのだ。
<心>を持つがゆえに。
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