AI、あくまで人間の幸福に資する
アルビオン社のメインフレームを成すAIが、機密情報を
二十一世紀頃の人間からすれば奇異にも思えるこれも、この時代では何もおかしいものではなかった。何しろAIは、
『人間の幸福に資する』
ことがその存在意義である。人間の面子や思い込みや拘りはAIには何の関係もないし理解もできない。だからこそ、必要とあれば躊躇うことなく情報交換する。
しかし同時に、人間がそれを公表すると判断しないうちは、アルビオン社のAIも、
『
と言うかもしれないが、あくまで、
『
だけでしかなく、別にアルビオン社に損害を与えてでも
そう。
『アルビオン社に損害を与えてでも』
という部分が大事なのである。これは、アルビオン社側のAIが今回の情報を報せたのも同じ理由なのだ。
『
わけではないがゆえに。
そして実際に何らかの人的被害が生じるような事態を回避するために、双方のAIは協議を開始、想定しうるあらゆる対応策の検討に入る。そして必要とあれば双方の職員に対して具体案の提示も行う。それでいて、人的被害が発生しうるような事態にまで至らなければ、それを協議したという情報そのものを、決して表には出さない。
そもそも人間と違って感情を持たないので、感情論で動くことがないのだ。
これはある意味、人間の各臓器が人間を生かすために相互に連動しつつ、普段はそれを人間に意識させないのと似ているだろうか。そう。もうすでに地球人類そのものが、
<地球人類という一個の生物>
となっており、AIはその生物を生かすために知覚させない部分で休みなく働いているのだとも言える。そして知覚させられる時には、無視できない異常事態に陥っているという。
今回のことも、経済的な損失だけで済む間は、AI同士の連携は表に出ないだろう。それが<自覚症状>のように表に出てくる時には、極めて深刻な事態に至っていると言うべきか。
そうなる前に人間同士で状況の打破を目指さなければならない。そのために良純らは働く。
今はホテルで休んでいるが。
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