千堂アリシア、マルチタスクをこなす

こうして白百合2139-PB(ピュア・ブライド)(仮)にリンクしていた千堂アリシアだが、実は<アリシア2234-HHCアンブローゼ仕様>との遠距離リンク試験も継続して行っている。それこそロボットならではマルチタスクだ。だから、第三ラボのオフィスの一角にアリシア専用のブースが設けられていて、そこから白百合2139-PB(ピュア・ブライド)(仮)やアリシア2234-HHCアンブローゼ仕様にリンクしているというわけだ。


ただし今は、白百合2139-PB(ピュア・ブライド)(仮)に比重を置いている。アリシア2234-HHCアンブローゼ仕様については、根岸ねぎし右琉澄うるずをはじめとしたサバイバルゲームチーム<ラビットマン>らとの交流にも慣れて、しかもアリシアが他にも仕事を抱えていることは理解してくれていて、時折ぼんやりしたり上の空な様子になることについても気にしないでいていてくれる。


右琉澄らとしても、アリシアが傍にいてくれるのが楽しいので、彼女に負担を掛けたいと思っているわけではない。


そんなアリシアは今日、日常的な行動から改めて<自然な振る舞い>についてのアプローチを行うため、白百合2139-PB(ピュア・ブライド)(仮)の状態で外出することになった。


ただし、エリナ・バーンズをはじめとしたスタッフらもすぐ傍で待機し、何らかの異常があった場合にはすぐに対処できるようにしてだが。


そしてまずは、オフィスの近くのパン屋で買い物をすることに。


無論、ウエディングドレスは脱いで、シンプルな白いワンピースに着替えてではある。


こうしてオフィスの外に出るが、普通の人間がいる中で歩くと、その違和感が一層際立つ。何しろ歩き方が完全に<モデルウォーク>なのだ。しかもスタイルがモデル体型なので、普通の歩道のはずがまるで<ランウェイ>のようにも見えてしまう。


「WDとしたらそれこそ申し分ないんだけどね」


少し離れて歩きながらその姿を見ていたエリナが思わずそう呟く。確かに、ただの既製品の白いワンピースがまるでブランド服のようにさえ思えるほど存在感があるものの、白百合2139-PB(ピュア・ブライド)(仮)に求められているのはこうじゃないのだ。


しかし、関節部そのものを新設計するとコストオーバーとなってしまうのは分かっていた。ゆえに、可能な限り白百合2133-WD(ホワイト・ドール)のコンポーネントをそのまま利用しつつ<幸せに包まれている花嫁>を自然な形で表現しなければならないのである。


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