ジャンク屋、逞しい連中
そうして食事を済ませたクラヒは、ホイスト式小型クレーンを搭載したトラックにアリシアと共に乗り、走り出した。行先は、不時着した軍用ロボットヘリ<フライングタートル>が残された場所。
するともうすでに、何人かが集まって、破損した部分から部品を抜き取っていた。
「これは俺が見付けたんだ!」
「俺が先に見付けたんだよ!」
などと言い合いながら奪い合う。するとクラヒは、
「おい。お前、こいつとリンクできんだろ? ハッチとか全部開けさせろ」
アリシアに命じた。AI同士であればリンクできることもあるくらいは知っていたようだ。
「アクセスできれば……」
戦闘中にも実際にリンクしたアリシアは、そう告げる。インターフェース部分が完全に破壊されてアクセスできなければさすがにリンクもできないからだ。
「いいから試せよ」
改めて命じられて、アリシアは装甲が破損した部分から中を覗き込んだ。正規のインターフェースからでなくても、アクセスできるポイントはいくつかある。それを確認しているのだ。
すると、
「バクンッ!」
と音を立てながら、ハッチが次々と開き始めた。カーゴスペースまでロックが解除される。
「おーっ!」
集まっていたジャンク屋達は我先にとカーゴスペースに群がる。そこには、<アヴェンジャー>用の三十ミリ砲弾がまだ数千発分残されていた。
だがその時、
「ドーンッッ!!」
空気がびりびりと振動する。どこかで爆発があったようだ。おそらく、他の不時着したフライングタートルが爆発したのだろう。機密保持用の自爆システムが作動してしまったのかもしれない。
今、アリシア達がいるフライングタートルも、同じように爆発する危険性はある。だが、ジャンク屋達はまったく怯む様子もなく次々と弾丸や部品を運び出す。
『死んだ奴は運が悪かっただけ』
そんな風にしか考えていないのが分かる。生きるも死ぬも運次第。だからこそ生きてるうちはやれることをやる。
それが彼らの考え方なのだ。
加えてクラヒも、そういうジャンク屋達の一人である。他の連中が弾丸をこぞって持ち出してる最中、クラヒだけはメンテナンスハッチの中からパーツ類をはぎ取っていた。弾丸は弾丸としか使えないが、パーツ類にはあれこれ使い道があるのだ。しかも、ものによってはレアメタルがふんだんに使われていたりもして、そういう意味でも価値があったりするのである。
クラヒは、その辺りの知識に秀でているらしい。しかも、
「お前の修理に使えるのもあるかもしれねえしよ」
と、口にしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます