千堂アリシア、苦戦する
千堂アリシアは、<試作品三号>を相手に苦戦していた。普通の人間相手ならたとえサーペントの隊員が相手でもここまで苦戦はしなかっただろう。相手が一人なら。
しかしサーペントのような特殊部隊の場合は、通常、<容易ならざる相手>には決して一対一で対処するようなことはない。最低でも二人一組で事に当たるし、ましてやロボットが相手ならそれに応じた対処をする。<非常停止信号>を用いることさえ厭わない。
千堂アリシアがいかに特異にして強力なメイトギアであろうとも、<非常停止信号>を用いられてはどうすることもできない。
もっとも、アリシアの主人である
何より、<試作品三号>は、
『千堂アリシアと戦いたい』
と考えてこのようなことをしているため、たとえクグリと同じくそれを用意していたとしても使わないだろうと思われる。
また、アリシアは、他のメイトギアならしない戦い方ができる。<直観に従う戦い方>とでも言うべきものが。本来のメイトギアは、その時点での最も効率的な戦い方を選ぶはずなのだ。余計なことはしないし、自身が捉えた状況に余計な解釈を加えて対応を変えたりもしない。しかし、だからこそクグリや<試作品三号>には、動きが読めてしまう。もっとも、読めたところで普通の人間にはその通りの動きができないので、問題はないはずなのだが。
さりとて、戦闘モードを起動していないアリシアには、クローンを自称する<試作品三号>を意図的に傷付けるような戦い方もできない。現在の法律ではクローンは人間とは認められていないとは言え、そもそもクローンなのか人間なのかを判断するのは人間であり、ロボットにはその判断ができない。
なので、今の千堂アリシアにできるのは、応援が駆け付けるまでの間、持ちこたえるだけである。
それは、<試作品三号>の方も承知している。自身が人間離れした身体能力とスタミナを有していることは承知していても、だからと言って常時無線給電されているロボットほどは動き続けることもできない。たとえ給電されていなくても、現時点でのアリシアのバッテリー残量であれば、フル稼働でも数日は動き続けることもできる。しかし、どこまで行っても生物ではある<試作品三号>にはそれはできないのだ。
ゆえに、応援が駆け付けるまでにアリシアを倒せなければ自分の負けであると。
もっとも、この時の<試作品三号>の嬉しそうな表情からすれば、おそらく勝敗など関係ないのだろう。自身の全力でもってアリシアと戦えること自体が楽しくて仕方ないのだと思われる。
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