観客のノリ、アイドルのライブのそれ
そうして、
「んふふふふ♡」
会場内で撮影した写真や映像を携帯端末で見返しながら、英資は実にご満悦だった。
それに対して、ゆかりは、傍目にも<疲労困憊>という様子が見て取れる。
無理もない。
<メイトギアショー>は、ある種の<アイドルのライブ>のような形で、メインステージでは各社自慢のメイトギアのパフォーマンスを披露することが主な展示方法となっているので、観客の<ノリ>そのものが、
<アイドルのライブを見に来ているファン>
のそれなのだ。
もちろん、メインステージ以外にもそれぞれに展示用のブースが設けられ、そこでもまた、<ミニライブ>のような形で展示が行われていたりもする。
英資は、お目当てのメイトギアを間近で見るために、メインステージと各ブースを行ったり来たりとひっきりなしに移動して、しかもゆかりのことなどそれこそ頭から消え去っているかのように、容赦なく先に行ってしまう。
英資自身は現役の軍人でもあることから、厳しい訓練をこなせる体力が備わっていて、本人はまったく平然としているものの、普通の高校生に過ぎないゆかりでは、ついていくのさえままならない。ゆかり自身、学校では陸上部とダンス部を掛け持ちして体力には自信がある方だったが、やはり、極限状態でもなお体が動くほどに徹底的に鍛えられている英資には敵わなかった。
「狂ってる……」
さすがについていけずに会場内に設置されたベンチで休みながら、端末に表示される英資の現在位置を確認しつつそう漏らしてしまう。
加えて、会場内の雰囲気そのものが先にも言ったように<アイドルのライブ会場>とほぼ変わらないそれなので、客層も当然、『そっち寄り』であり、観客らが放つ何とも言えない空気感に酔ってしまったというのもあった。
「やっぱ、海の方へ行けばよかった……」
そうゆかりが後悔してしまったのも無理はないだろう。と、その時、
「うおおおおおおおおーっっ!!」
と、会場そのものが揺れるかのような大歓声が起こり、ゆかりは、びくっと体を竦ませた。
「な、なに……!?」
呆気にとられるが、何のことはない。大人気メイトギアの、<フィーナQシリーズ>の最新モデル、
<フィーナQ3-ST4>
という機体が満を持して登場したことに、観客達が絶叫しただけであった。
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