<宿角結愛>
初期の火星移民の子孫となる宿角家の三女として生まれた彼女は、両親の愛情に包まれて、大変におっとりとした、まるで綿菓子のようにふんわりと広がったプラチナブロンドの髪が印象的な少女だった。
ただし、その特徴的な髪は、実はただの<クセっ毛>で、雨の日などにはさらに膨れ上がって『ボンバヘッ!!』な有様になるのだと言う。
しかし、おっとりした彼女の性格とも相まって、とてもチャーミングに見えるので、誰もネガティブには捉えていないそうだ。
姉二人はすでに成人して家を出ているため、家では両親と彼女の三人暮らしである。しかも姉二人とも年齢が離れていることもあって、生まれた時には、母親が三人いるような状態だったとも。
そう、姉達も、とても穏やかで他者を労わり慈しむことができる人間だったのだ。それもあってか、
が、実を言うと、彼女の友人でありいつも行動を共にしている<桜井コデット><
ニコニコと笑顔で、
「うん。でも、私はこうだから」
と、一歩も引かないのである。
なので、一部の人間からは、
<難攻不落の綿飴要塞>
などと呼ばれていたりも。
しかもその気性は、宿角家の人間が代々受け継いできたものでもあるらしい。加えて、彼女の祖父、曾祖父は、地球の日本から派遣され<都市としての
とは言え、祖父も曽祖父も戦後は自身の経歴を一切口外せず、軍からも身を引いて、好々爺としての余生を送ったそうだが。
これは、『部下の大半を死なせなかった』=『一気呵成に苛烈な攻撃により敵を容赦なく撃滅した』ことでもあって、二人は決してそれを自慢しなかったそうである。
そして平和を取り戻した今、祖父や曽祖父が願ったとおり、孫であり曾孫である
それでいて、<守らなければいけない一線>は頑として譲らない、<もののふ>の魂も受け継いでもいる。
ちなみに髪色は、父方の祖母からの隔世遺伝らしく、彼女以外の家族は黒髪か、限りなく黒に近い赤毛である。その上、髪質も父方の遺伝のようで、彼女の父親は、髪を伸ばすと<天然のアフロ>になるのだそうだ。
母親の髪質は柔らかく滑らかだったので、それによっていくらか緩和されているのかもしれない。
などという余談は脇に置き、朝、
「いってきます」
朗らかな笑顔と共に家を出たのだった。
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