スミレ2237-PA、記録する
最初の予定では、それこそ刑事の二人が部屋を確認してアリシアにも匂いを確かめてもらうだけのはずだったのが、大家の女性の心変わりもあって<家宅捜索令状>まで請求するに至り、しっかりと記録を残すために、スミレ2237-PAを派遣してもらうことになったのである。
つまり、スミレ2237-PAは、現場を記録するためのメイトギアということだ。しかし同時に、要人警護仕様と同等の性能も持ち、現場の刑事や警官を守る役目も兼ね備えている。要人警護仕様と大きく違うのは、
『<戦闘モード>を持たず、暴漢が相手でも傷付けることは決してできない』
ということである。徹底的に<盾>を演じるだけなのだ。
とは言え、<都市としての
ごくまれに大口径の火器が使用される事例もあるにはあるが、それさえ、スミレを完全に破壊できることは滅多にないし、そのようなものが持ち出されればすぐさま<戦術自衛軍>に応援要請が出され、まさしく対テロ装備で完全武装した一個小隊が数分で駆けつける体制が整っているため、必要がないのである。
その数分間を、スミレ2237-PAがもちこたえてくれれば済むがゆえに。
記録は、警察内のサーバーと常時リンクしているスミレ2237-PAが確認したと同時にそちらにもほぼタイムラグなく送信されるので、万が一破壊されたとしても必要なものも残る。
女性の姿をしているのは、現場で、被害者のケアをしたりすることもあるのを想定してのものである。被害者が女性であったり子供であったりした時には、やはり女性型のメイトギアの方が安心感を与えるからだ。
と、余談はさておき、刑事達は、形だけとはいえ家宅捜索を行う。それを、スミレ2237-PAが記録していく。
「ちょっとごめんよ」
ベッドの上に陣取っていたナニーニに声を掛けて、刑事がベッドを探る。脱ぎ散らかされた衣服も一つ一つ手にとって、ポケットなどに何か残されていないかを見る。
まあ、次の潜伏先の手掛かりになるようなものでも出てくれば御の字という感じだろう。
その様子を、ベッドから降りたナニーニが恨めしそうな目で見ている。寛いでいるところを邪魔されたのだから、当然と言えば当然だろうが。
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