コデットとナニーニ、連携する

ゴーディンが現れ戦斧を振り回したことで、無関係な者達が慌てて逃げてくれたことを、アリシアはむしろ感謝した。


『これなら!』


再びラウルに向かって奔る。


ゴーディンについては、ナニーニとコデットに任せて。


と言うのも、


「ナニーニとコデットも、ステータスに異常が…! 最終決戦時のそれを上回っています!!」


オペレーター役の女性職員が再び告げたのだ。


正直、それでも今のゴーディン相手では、一対一では十分ではないかもしれないものの、二人で協力するのなら、拮抗はするだろうという判断だった。


事実、コデットがスティールで戦斧を奪ったことで、ナニーニが戦いやすくなった。


そしてコデットはその場を走り去っていく。


逃げたのではなかった。ギリギリ見える距離まで遠ざかって、


「スティール!」


と唱える。すると、ゴーディンが拾い上げようとした戦斧が再び消えた。


コデットが、戦斧を遠ざけるためにわざと距離を取ったのだというのがそれで分かった。腕力では持ち上げることもできないそれを、スティールを使うことで運んだわけだ。


これも、ステータスが上がったことでできることだが。スティールは、コデットのステータスによって奪えるものが違ってくる。このイベント前までの彼女では、戦斧までは奪えなかっただろう。


なのに咄嗟に実行し、しかもそれを応用してみせるのだから、本当に利口な子供である。


そして同時に、ナニーニの方も、戦斧を失ったとは言っても素の身体能力でほとんどの面で自分を上回るゴーディン相手に怯むことなく挑みかかってくれていた。


とは言え、その彼女の剣を、なんと素手で捌くゴーディンも、本当にとんでもない。


さすがにそのまま受け止めるのではなく、あくまで、手を添えて逸らすという形ではあるが。つまり、彼女の剣筋が見えているということでもある。


そうしてナニーニの剣を躱しながら拳や蹴りを繰り出す。もろに当れば一撃で戦闘不能になりかねない恐ろしい一撃だった。


けれど、ナニーニの方も、それらの攻撃を紙一重で躱しつつ反撃。唯一上回っている<素早さ>を活かして何とか互角の戦いを繰り広げていた。


「ちょこまかと鬱陶しいクソアマぁっ!!」


苛立ちを罵声として放ちながら、ゴーディンも、近くにあった屋台の屋根を支えていた柱を掴み、それを強引に引き寄せた。


屋台が崩れ去り柱が引き抜かれ、ゴーディンがそれでナニーニの剣と打ち合う。


「くっ!?」


ただの丸太に過ぎないそれでも、今のゴーディンの力が加われば、まるで鋼鉄の棒のように強靭で、ナニーニの手が痺れる。


だが、


「スティール!」


詠唱と共にゴーディンが手にした柱が消え失せる。


真っ向からぶつかることのできないコデットは、そうしてナニーニの援護をすることにしたようだった。


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