エピローグ

JAPAN-2ジャパンセカンドに戻った千堂とアリシアは、役員会で報告と利益を上げられなかったことについて追求はされたものの、結果的に失敗に終わったのは軍の怠慢が一番の原因であったことについては理解してもらえたために、責任を取らされることはなかった。


「ごめんなさい……」


役員会を終えて自宅に戻る途中、アリシアはまた謝る。


そんな彼女の頭を、千堂はそっと撫でた。


「アリシアは頑張ったよ。私はそれを誇りに思う」


そう言って笑顔も向けながら。


「千堂様ぁ……」


アリシアはただ彼にすがりつくしかできなかったのだった。




なお、魔鱗マリン2341-DSE(実験機)については、およそ修理が可能な状態ではなかったため、データだけサルベージされた後、解体され再資源化されることとなった。


アリシアはその魔鱗マリン2341-DSE(実験機)にも、


「ごめんなさい……」


と謝った。


「私がもっと上手くやれていれば……」


とも。


しかし、彼女はそう言うものの、おそらくアリシアでなければそもそも機体すら回収できなかったかもしれない。アリシアは十分に良くやったのだ。


そして、<遺体>を間近で見たアリシアと魔鱗マリン2341-DSE(実験機)の映像データは都市JAPAN-2ジャパンセカンドを管轄する警察にも提出され、そこでも解析され、頭骨の特徴と実際にクグリと対峙した際の映像から解析されたクグリの頭部の特徴の九十二パーセントが一致し、クグリ自身の遺体であった可能性が極めて高いと見做された。


ただ、映像データだけでは証拠能力は必ずしも高くなく、やはり遺体そのものを回収できなかったためにDNA鑑定ができなかったことが断定を阻んだのである。


こうして、<火星史上最凶最悪のテロリスト、クグリ>の死亡は、確定されることはなかったのだった。




この半年後、


「おかえりなさい!」


メイトギア課のオフィスで、笑顔のアリシアとたくさんの同僚に迎えられたのは、丁寧で根気強いカウンセリングとリハビリを経て回復し復職したエリナ・バーンズだった。


「ありがとう…! ありがとう……!」


彼女は涙を流しながら何度も何度も礼を述べた。


これでようやく、第一ラボも万全の状態に戻っただろう。


それを、千堂アリシアも、とてもとても喜んでいたのだった。






















ただ、そうやって本来の姿を取り戻す者がいる一方で、完全に姿を消してしまう者もいたのだが。


それは、裁判の開始を待つ間、一時的に保釈されていた、


<ジョン・牧紫栗まきしぐり


である。


警察の懸命の捜索にも拘らず、彼の行方は杳として知れなかったのだという。


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